これからテント泊登山を始める人にはアライテントのカタログを登山用品店でもらってくることをおすすめします。付録の小冊子「TENT BOOK」が秀逸で、「テント、ツェルトの使い方とメンテナンス」について体系的に図解されています。
WEB上で同じ内容が公開されています。
- 「ユーザーサポート」
あらためて読み返していると、面白い一節に気づきました。
紙のカタログ上では「普通の道具でもベースウェイト6kg台は可能です」という標題になっています。
ベースウェイトとは水、食料などの消耗品以外のザックを含めた、背負わなければならない総重量のことです。
「ベースウェイト」という用語は近年、ウルトラライト志向の実践者たちが「重量について考察する際の基準」として使い始めました。(と認識しています)
アライテントはウルトラライトとは一線を画し、軽量化を意識しつつ耐久性を犠牲にしない製品を作っています。テントしかり。ザックしかり。質実剛健志向と言ったらよいでしょうか。
そのアライテントが他メーカーの製品まで引き合いに出して、ベースウェイト6kg台の具体的な装備と重量をリスト化したのですから注目せずにはいられません。
- アライテントが選ぶ登山装備【ベースウェイト】
- テント:アライテント「エアライズ2」=1,750g
- シュラフ:イスカ「エア 300」=570g
- シュラフマット:カスケード「ネオエアーXライトS」=230g
- テントマット:MPI「オールウェザーブランケット」=300g
- コンロ+燃料:EPI「レボ3500+カートリッジ2本」=571g
- クッカー:エバニュー「チタンクッカー深型RED」=125g
- 水筒:カスケード「プラティパス2L」=36g
- ヘッドライト:ペツル「ティカプラス+電池」=118g
- 防寒着:モンベル「シャミースジャケット」=234g
- 雨具:モンベル「ストームクルーザー上下」=448g
- 着替え:Tシャツ1、靴下1、下着1=350g
- ザック:アライテント「クロワール35sp」=1,100g
- その他:雑品=500g
- まとめ
アライテントが選ぶ登山装備【ベースウェイト】
季節や人数については「一般的な夏山の縦走登山の場合 2人パーティでの例」とされています。
テント:アライテント「エアライズ2」=1,750g
アライテントの自社製品。高山帯のテント場に行くと、3分の1から4分の1くらいがこのテントだったりします。
初めて買うテントで迷ったら、ひとまずこれを買えば後悔しません。将来、雪山にチャレンジするなら外張りを買い足せばOK。
床面積は間口130x奥行210。1人ならゆったり。2人なら荷物を隅にギュウギュウ寄せてぴったりです。
色々なテントについて考察した記事はこちらです。
シュラフ:イスカ「エア 300」=570g
※「エア 300 SL」(720FP羽毛300g封入、570g)は廃番となったため、代わりに「エアプラス 280」(800FP羽毛280g封入、550g)を掲載しました。
イスカの公式サイトでは「夏の北アルプスにぴったりの保温性能」「初夏から初秋までの中級山岳」とされています。
モンベルのシュラフならシームレス ダウンハガー800 #3くらいに相当。シュラフカバーやインナーシーツを付け足せば、初冬の高山帯まで対応できる汎用性の高いクラスの製品です。
色々なシュラフカバーについて考察した記事はこちらです。
シュラフマット:カスケード「ネオエアーXライトS」=230g
サーマキャプチャー層(熱反射板)を搭載した3シーズンモデルです。長さは119cmで半身用。足先にはザックを敷くことを想定しています。
色々なマットレスについて考察した記事はこちらです。
テントマット:MPI「オールウェザーブランケット」=300g
個人的にはオールウェザーブランケットは登山では使いにくいと感じています。152x213cmという面積は、エアライズ2のなかでは持て余すでしょう。
100均あたりで銀マット(銀シート)を買ってきたほうが安上がりで、軽くなります。耐久性は落ちるものの、断熱性はオールウェザーブランケットに負けず劣らずです。
コンロ+燃料:EPI「レボ3500+カートリッジ2本」=571g
ゴトクが広いので、大きめのコッヘルを載せても安心です。
EPIは極寒冷地用の「190エクスペディションカートリッジ」を販売しており、将来の雪山登山を見据えるなら有力なメーカーです。
私個人はスノーピークのギガパワーストーブ「地」を愛用しています。メーカー非推奨ですが、「190エクスペディションカートリッジ」を問題なく使用できました。
クッカー:エバニュー「チタンクッカー深型RED」=125g
「軽量化した食事メニューの例」には夕食として、
- 釜飯(アルファ米+釜飯の素)
- 具つき味噌汁
が示されています。
あれ? お湯を沸かす以外の食器はどうするのでしょうか。上記ページを読み進めると、「2人パーティの場合、同行者はテントを持つ必要がないので下記のような重量になります」と補足があり、そこに「食器」が記載されていました。
私個人は角型コッヘルを愛用しています。前項の「REVO-3700 STOVE」のページにも平出和也さんと谷口けいさんパーティーが角型コッヘルを使う写真が掲載されており、我が意を得たりです。
水筒:カスケード「プラティパス2L」=36g
水筒はこれ一択といってよいほど優れた製品です。空にするとペシャンコになり、ザックのちょっとした隙間に押し込むことができます。水場が遠いときのために予備を1つ加えても36g(トランクス1枚程度)しか増えません。
雪山では湯タンポになります。
ヘッドライト:ペツル「ティカプラス+電池」=118g
なぜか旧機種をチョイス。これから買うなら、重量は同等で高性能な「アクティック コア」をおすすめします。
色々なヘッドランプについて考察した記事はこちらです。
防寒着:モンベル「シャミースジャケット」=234g
渋い。渋すぎるチョイス……。フリースと言えば重厚な製品が多いなか、モンベルのシャミースシリーズは最軽量クラス。胸ポケットと腰ポケット×2を備えて200g台前半という製品を他メーカーで見つけるのは難しいです。
私は「シャミース プルオーバー」を所有しており、寒い時期にもう一枚レイヤリングを増やしたいときに重宝しています。
雨具:モンベル「ストームクルーザー上下」=448g
ストームクルーザー ジャケット
アウトドア雑誌でレインウェアの特集があると、必ずと言っていいほどエントリー。レインウェア界の「コンクール荒らし」です。価格、性能とも申し分なし。
サイズ展開はXS、S、M、L、XL、M-W(ゆったり)、L-W(ゆったり)と太めの方には嬉しい。
ストームクルーザー パンツ
サイズ展開はXS、S、M、L、XL、M-S(ショート)、L-S(ショート)、XL-S(ショート)、S-L(ロング)、M-L(ロング)、L-L(ロング)、XL-L(ロング)と、よりどりみどり。
さらに「ストームクルーザー フルジップパンツ」ならサイドを完全にオープンできるので、泥まみれの登山靴をはいたまま簡単に着脱できます。
着替え:Tシャツ1、靴下1、下着1=350g
この項目で特定の商品は挙げられていません。個人的なオススメ商品を紹介します。
ノースフェイス「ショートスリーブGTDメランジクルー」
海外ブランドですが、ウェア類は国内企画で日本人の体形に適合するようデザインされています。
パタゴニアやアークテリクスのように無闇に高価でなく、モンベルのようにもっさりイメージがなく、実店舗で質感を確認して入手しやすい最適解だと言えます。
Lサイズで95gと軽量でさらっとした着心地のコイツがいちおしです。
ダーンタフ「マウンテニアリング」
生涯保証をうたうスゴイやつ。
ご購入の製品に製造上の欠陥があった場合、又は通常のご使用で穴があいた場合のみ商品を無償で交換いたします。
はじめはゴムを練りこんでいるかのような独特の硬い履き心地に驚きました。山行日数を重ねるとチラホラ毛玉ができて、爪先や踵など擦れる箇所が色褪せてくるものの、初めの頃の履き心地が持続します。
Icebreaker「アナトミカ ボクサー ウィズフライ」
メリノウール製のベースレイヤーは濡れても温かく、抗菌防臭性にすぐれているので、長期の山行に向いています。
なぜか有名どころのメリノウール製のトランクスには前開き(フロントフライ)を備えていないことが多い。個人的には前開きは必須。限られた選択肢のひとつがこの製品です。
特に男性はモノの収まり具合によって1日24時間、無意識にストレスを感じていると言われます。腰の締め付け具合、モノの収まり具合、太もものフィット感がしっくりこないと、ストレスが増大します。実店舗で試し履きするわけにもいかず、色々な製品を試すしかありません。
ザック:アライテント「クロワール35sp」=1,100g
アライテントの自社製品。「スパイダロン®リップ」は、しなやかで、耐久性、耐磨耗性に優れ、なおかつ軽い素材です。
過剰なパッドや調節機構がないため、見た目よりモノをたくさん詰めることができます。もっと容量を増やしたければ、サイドポケットを取り付け可能です。背面には28×100cmのパッドが二つ折りにして格納されています。ビバーク時や、行動中の休憩時に取り出して、マットレスとして利用できます。
その他:雑品=500g
その他、雑品として、ティッシュペーパー(トイレットペーパー)、個人用カトラリーセット、個人で必要とする医薬品、地図、コンパス、交換用電池、携帯電話(スマートフォン)、ラジオ、細引きなどが挙げられています。
どうやらここが鬼門で、実際に500gにおさめるのは難しそうです。
この項目で特定の商品は挙げられていません。個人的なオススメ商品を紹介します。
ネピネピ「水に流せるポケットティシュ」
有名どころのキャンプ指定地なら、有料トイレ(テント利用料に含まれる)にトイレットペーパー(ロールペーパー)が備え付けられています。自分で持って行くのは、水に流せるポケットティッシュが便利です。
- 食器拭きに利用したとき紙のカスが残りにくい。
- 日数分の計算がしやすい。(2個/1泊とか)
ユニフレーム「FDシリコンスプーン」
カトラリーについては、コンビニやスーパーで無料でもらえるプラスチックのスプーンやフォーク、割り箸を持って行けば十分だという気がします。
別途もっていくと便利なのがシリコン製のスプーン。柔軟なので、アルミ食器やコッフェルの底に残った米粒や麺をしっかりすくい上げたり、こそぎ落としたりできます。
マルチビタミン&ミネラル
新鮮な野菜や果物を携行しにくい登山では、マルチビタミン&ミネラルのサプリメントを携行したいところです。
ピルケースについて考察した記事はこちらです。
山と高原地図
「山と高原地図」は情報量の多さで右に出るものがありません。情報量が多すぎて、どの説明文がどこを指しているかわかりにくいキライがあるので、計画段階でガイドブック等とじっくり読み合わせて、概要を頭に入れておく必要があります。
ユポ紙は水濡れに強いので、雨の中で安心して広げることができます。
コンパス
スマートフォンの地図アプリが進化した現在も、こうしたプレート型のコンパスと地図の組み合わせは必須。広域を把握するには紙の地図がイチバンです。
モバイルバッテリー
スマートフォンでGPSを動かし、写真や動画を撮りまくるならモバイルバッテリーの携行が必須です。
スマートフォン側のバッテリー容量が3,000mAhだとしたら、それをフル充電するには5,000mAhくらい必要です(充電時のロスにより60~70%くらいの効率となる)。
2泊3日なら、1日目は自宅で充電しておくとして、残る2日を10,000mAhでまかないます。
ウォークマン
いまどきAMラジオでNHKのラジオ第2放送を聴いて天気図を作る人は少ないかもしれません。でもFM放送くらいは聴きたい。好きな音楽だって聴きたい。
それらを実現してくれるのがソニーのウォークマンです。
隣のテントの話し声が気になって仕方がないとき、音消しに利用しましょう。なかなか寝付かれないとき、スリープタイマーを設定して、音楽を聴きながら入眠しましょう。
まとめ
ベースウェイト以外の水や食料については、昼の行動食が「カロリーメイト」主体だったり、夕食に「釜飯」や「クイック餅」が登場したり、実に味わい深い(古い登山愛好家としては共感する)内容になっています。
極端なウルトラライト志向に走らない実直なガイドラインは、初心者から熟練者まで大いに参考になるのではないでしょうか。
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