登山にウォークマンやiPodを携行するとイヤホンが断線する理由

登山にウォークマンやiPodを携行するとイヤホンが断線する理由

その昔、ワンダーフォーゲル部の合宿に携行する電子機器と言えば、アナログのラジオくらいでした。毎日16時、NHKの気象通報を聴いて天気図を作成します。バカ話やトランプに打ち興じていた家型テントが、そのときばかりは息をひそめて、父島やウルップ島やハバロフスクといった、なんだか架空の物語に出てくるような、遠い憧憬をそそる地名に意識を集中しました。

古い天気図用紙

すこしグレードアップして「ラジカセ」を持っていくこともありました。カセットテープには所有者がチョイスした音楽が詰まっています。山に入っているあいだ、同じカセットテープを繰り返し聴きます。電池が弱くなるとだんだん音が間延びしてくるのが、合宿の風物詩のひとつでありました。

ワンダーフォーゲル部を卒業して、単独行が多くなってからもラジオを携行して天気図を付ける習慣は続きました。天気図を付けたあと、長い夜をパーソナリティのおしゃべりと音楽で埋めるのがラジオの重要な役割です。話の内容はとりとめがないほどよろしい。山の中まで来て、下世話な話や世知辛い話はごめんです。そんな視聴者が多かったのか、時代の空気がそうだったのか、昔のパーソナリティはアクの強い話を避けて、ときおり流す音楽を引き立てる語り口に徹していたように思います。


15の夜

孤独な雪山の夜、尾崎豊の「15の夜」が流れてきたときには参りました。初めて聴いた曲で、どんな人が歌っているのか全然知りませんでした。誰しも身に覚えがある、痛々しい歌詞に胸を突き刺された気分で、次の日とっとと山を下りてしまいました。「オレ、こんな生活を続けてていいのかな」と、山と都会とのはざまで迷っていた心境にある種の見切りをつけたのだと思います。それ以降、しだいに本格的な雪山登山から離れて、乾いた岩でのクライミングに傾倒しました。

初めて携帯音楽プレーヤーを買ったのは1990年代。ずいぶん流行に乗り遅れたものです。ウォークマン体験については、椎名誠さんが電車の中の猥雑な日常さえ映画的に見えると書かれていたのが印象に残っています。

その気になって眺めると、へんてつもない武蔵小金井駅も、小雨にけぶる南フランスあたりの、愛と哀しみに満ちた別れのプラットフォームのようにも見えてくる。

「ふーん、そんなものなのか」と他人事だったのですが、いざ自分が手に入れるとハマりました。耳にイヤホンを突っ込んでいないと落ち着かない。何も聴かずに街を歩いていると時間を有効活用していない気がする。この症状は多くの人に共通するようです。ある知人はオフィスにiPodを忘れたまま週末を迎え、「業務用の携帯とかだったら気にしないけど、iPodはないと我慢できないから休日のオフィスに取りに行った」なんて告白していました。

城ヶ崎海岸のフナムシロック

城ヶ崎の岩場で登った帰り、伊豆急電車の座席でうつらうつらしながら、山下達郎を聴くと誠に気分がよろしい。小川山の岩場で登った帰り、清里ラインの大渋滞を避けて大門ダム方面の裏道に入り、のどかな農道をたどりながら、井上陽水の「少年時代」を聴くと絶品です。

小川山の「きたない大岩」で宙吊りになって喜ぶ

オフィスで周囲の会話が耳について集中できないとき洋楽を聴くことがあります。いくらビジネスカジュアルの仕事場とはいえ、上役に見つかると注意されそうですが、背に腹は代えられないときがあります。歌詞は聴き取れないほうが良い。2019年現在、出番が多いのはリアーナです。かなり歌詞がヤバイらしいですが、私の英語力ではほとんど聴き取れません。あえて深く調べないようにしています。


Loud [Explicit]

ウォークマンにしろiPodにしろ、FMラジオ機能が付いているのがありがたい。普段は滅多に聴きませんが、2011年3月11日、仕事場から自宅まで何時間もかけて歩きながら、災害情報をキャッチするのに役立ちました。タンスのこやしとなっていた小型のAM/FMラジオは断捨離してしまいました。

テント泊登山でも、ウォークマンやiPodの便利さを享受しています。単独行で混んだテント場に泊まると、聴覚の全てをお隣りの会話に支配されかねません。そんなときは耳にイヤホンを突っ込めば解決です。昔は携帯ラジオのオートオフ機能(1時間したら電源OFF)を利用しましたが、今はアルバムを1枚聴くと丁度良い。なかなか寝付かれず、もう1枚、さらにもう1枚……と延長したり。

標準で付属するイヤホンは音の鳴り方が物足りなかったり、iPodにいたってはどうやったら耳にとどまってくれるのやら謎の形状だったりするので、別に買うようにしています。音質マニアではありませんが、さすがに二千円くらいのイヤホンだと我慢できない。オーディオテクニカ製(よく鳴る気がする)の実売価格三千円以上の品を買うようにしています。

ウォークマンを胸ポケットに入れたままザックに押し込む

ここでやっと標題のテーマにふれます。有線タイプのイヤホンには断線が付き物。私の場合、その原因はシャツやジャケットの胸ポケットに入れたまま、カバンやデイパックに突っ込む行為にあります。柔らかく包むように畳んでも何かの拍子にイヤホンジャックの根元に無理な力が加わるらしい。ボルダリングジムで着替えたり、登山のアプローチで保温着を脱いだりするとき、胸ポケットに入れたままでかまいませんが、必ずイヤホンジャックを抜くように心がけています。それを忘れると、その直後ないしは数日後に片耳が鳴らなくなります。

必ずイヤホンジャックを抜く

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