誰が呼んだかナポレオンポケット。ジャケット前面に設けた縦ファスナー付きポケットをそう呼びます。
この呼び名は、かのナポレオン・ボナパルトがその肖像画において、右手を上着に差し込むポーズをよくとっていることから、比喩的に用います。
ナポレオンはなぜそのポーズをとったのか。慢性的な胃痛に悩まされていたとか、疥癬を掻いていたとか、手をぶらぶらさせない礼節的な所作であったとか、いや単なる癖であったとか、諸説紛々としています。
本来は「隠しポケット」の意味合いが強かったのでしょうが、フラップを省略してファスナーが露出したポケットをナポレオンポケットと呼んでも差し支えないでしょう。ただし、ワイシャツに付いているような、モノを縦に入れる胸ポケットをそうは呼びません。手を横向きに差し込むところが特徴です。
筆者はアウトドアウェアにナポレオンポケットが必須であると考えています。
現在、日常生活でもアウトドア活動でも、スマホを手放せなくなりました。この文明の利器を素早く出し入れできるナポレオンポケットがあるかどうかでウェアの評価がはっきりと分かれます。
満員電車で座席にすわっているとき、腰のポケットからスマホを取り出そうとすると、体をねじって、肘を突き出さなくてはならず、隣の乗客に迷惑をおよぼします。
ナポレオンポケットなら体の正面でささっとモノを出し入れできます。
筆者が所有する上半身のアウターやミドラーの九割はナポレオンポケットをそなえています。ナポレオンポケットがあるかないかで購入対象として検討するかしないかが決まると言っても過言ではありません。
よく軽量コンパクト系のジャケットで、両腰のポケットを省略して、ナポレオンポケットだけをつけて事足れりとしている製品があります。それだと意味がありません。両腰ポケットに加えて、さらにナポレオンポケットが欲しいのです。ナポレオンポケットが両胸にあれば文句なしです。
せっかく意欲的な新製品が発表されても、ナポレオンポケットがない、その一点でスルーせざるを得ないことが多々あるのが残念です。








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