軽量な縦走用ピッケルが欲しい
「残雪の利尻山」にはピッケルとして、クライミングテクノロジーの「アルパインツアー」とペツルの「ガリー」を携行しました。実際に山頂に持って上がったのは「アルパインツアー」です。
「アルパインツアー」の全長は50cmくらいですので、下降時にシャフトを雪に突き刺すとき、かなり前屈みにならなくてはなりません。「ラプラード・デメゾン」を持ってくればよかったかな、と後悔しました。
しかし、「ラプラード・デメゾン」はずっしりと重い。もはや一体化して解けなくなったリーシュと合わせて実測で819gです。
軽量な縦走用ピッケルを新調しようと決心しました。
軽量な縦走用ピッケルの選定条件
選定の条件は、
- 長さ=65cm程度
- 重量=500g以下
- ヘッド(ピックやブレード)が極端に華奢でない
です。
検討した候補はたくさんあります(記事の最後に列記)が、最終的にペツルの「グレイシャー」に決定しました。価格やデザインの好みもさることながら、先に購入した「ガリー」とブランドが同じだという点が大きかったです。
ペツルの「グレイシャー」
全体
渋い艶消しのメタリックな外観です。
シャフトのロゴ
ヘッド
長さは68cmです。
「Made In France」と刻印されています。
反対側の面はシンプルです。
「PETZL」と刻印されています。
ブレード
下面です。大胆に肉抜きされています。
上面です。
スピッツェ(スパイク、石突き)
グリップにゴムはなく、滑り止めの刻み目があるだけです。
リーシュ
リーシュが付属しています。よくある平べったいテープではなく、直径6mmくらいの丈夫なコードです。コードの末端は、折り返してしっかり縫い付けられたループになっています。ピッケル本体側はループの内側を通せば取り外すことができ、他のピッケルに付け替え可能です。
単品で別売もされています。
ダブルアックス体制
「グレイシャー」と「ガリー」のダブルアックス体制を構想しています。
2本の合計が688g(リーシュを含む)です。なんと「ラプラード・デメゾン」より軽い。
初登板
初登板は「那須・朝日岳東南稜」でした。予想に反して、まったく雪がなく、出番はありませんでした。ザックのサイドに刺しっぱなしでも重さを感じさせないという意味では、その能力を遺憾なく発揮してくれました。
ピックとブレードのカバーにはクライミングテクノロジーの「ヘッドカバー」が適合しました。スピッツェ(スパイク、石突き)にはブラックダイヤモンドの「スパイクカバー」がカチリと嵌ります。
軽量な縦走用ピッケルの候補
グリベルの「エアーテック SA ライト」
長さと重量 |
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53cm=420g、58cm、66cm |
2023~2024シーズン、グリベルから400g台前半のスタンダードなピッケルが登場。緩やかなベントシャフトにより、雪山縦走から軽い登攀まで利用範囲が広い。
ペツルの「グレイシャー」
長さと重量 |
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60cm=350g、68cm=370g、75cm=390g |
マイチョイス。軽量ピッケルにありがちな「ヘッド部が華奢で頼りない感じ」はありません。
ペツルの「サミットエボ」
長さと重量 |
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52cm=400g、59cm=420g、66cm=450g |
シャフトが湾曲し、グリップにゴム(TPU)が巻かれています。氷雪壁でガンガン、ピックを打ち込みながら登るならこちらでしょう。
ペツルの「サミット」
長さと重量 |
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52cm=360g、59cm=380g、66cm=400g |
「サミットEVO」と同じ形状です。グリップのゴム(TPU)をなくしたぶん軽量です。
ブラックダイヤモンドの「レイブン」
長さと重量 |
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55cm=428g、60cm=445g、65cm=462g、70cm=478g、75cm=495g、80cm=512g、90cm=528g |
シュイナード・マウンテンアックスの流れを組むレイブンがリニューアル。ピックとアッズの形状が改良され、打ち込みやすさと作業性が向上。鋭利さを増したスパイクは凍結面にもしっかりと打ち込めます。シャフトは台形断面になり、より握りやすくなりました。
ブラックダイヤモンドの「レイブンプロ」
長さと重量 |
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550cm=373g、55cm=389g、60cm=406g、65cm=423g、70cm=439g、75cm=456g |
台形断面の緩やかなベントシャフトとなり、クライミング性能と握りやすさが向上。ピック、アッズ、スパイクの形状が改良され、よりテクニカルな用途にも対応できるようになりました。
カンプの「コルサ」
長さと重量 |
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50cm:約202g、60cm:約232g、70cm:約261g |
ヘッドが華奢です。スピッツェ(スパイク、石突き)はシャフトを斜めに切った形状です。中空になった内部に雪が詰まってしまわないか心配です。雪山でガシガシ使うには心もとないですが、夏山の雪渓歩きなどで持っていると心強いでしょう。
カンプの「コルサナノテク」
長さと重量 |
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50cm:約225g、60cm:約253g、70cm:約284g |
「コルサ」のベントシャフト版です。
オクトスのオリジナルピッケル
長さと重量 |
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50cm:約400g、55cm:約410g、60cm:約420g、65cm:約430g、70cm:約450g |
低価格が魅力。実物を手に取って見ることができる店舗が少ないのが難点です。
エキスパートオブジャパンの「バイオレッド飛鳥」
長さ | 重量 |
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59~84cm | 444g |
ピッケルの長さで悩んでいる人に福音。なんとシャフトの長さを59~84cmの範囲で調節できます。
ブルーアイスの「ブラックバード」
長さと重量 |
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54cm:342g、60cm:357g、67cm:374g |
ヘッドガードが付属しています。
ピッケルとトレッキングポールのハイブリッド
雪山と言っても、北八ヶ岳を逍遥するだけだとか、メインのピッケルの補助として使いたいなら、こんな製品を検討しても良いでしょう。
ブラックダイヤモンドの「ウィペットスキーポール」
エキスパート オブ ジャパンの「3段ピックステッキ」
エキスパート オブ ジャパンの「ピッケル用ラッセルリング」
長いピッケルにこのリングを付けて、トレッキングポールを省略することにより、装備全体の軽量化をはかるという手があります。ン十年前はこちらが主流でした。
- オクトスの紹介ページ : 装着イメージを見ることができます。
ピッケルとショベル(スコップ)のハイブリッド
テント泊や雪洞泊のためにショベル(スコップ)を携行するなら、こんな製品を検討しても良いでしょう。
bca / SHAXE TECH AVALANCHE SHOVEL
重量 | 長さ | |
---|---|---|
ショベルモード | 706g | 68cm |
ピッケルモード | 436g | 51cm |
合計 | 902g |
簡易ピッケル(あくまでも補助程度)として兼用できます。
初めてピッケルを買うならこんな装備も必要
ピッケルカバー
行き帰りの公共交通機関でピッケルをザックに外付けする場合にはピック、ブレード、スピッツェのカバーが必須です。もちろんザックのなかに収納するのが理想ですが、その場合もカバーがないとザックや他の装備を傷つけてしまいます。
ブラックダイヤモンドの「アックスプロテクター」
クライミングテクノロジーの「ヘッドカバー」
ブラックダイヤモンドの「スパイクカバー」
マジックマウンテンの「アックスヘッドカバー」
リーシュ
急な氷雪壁でうっかりピッケルを落としたら進退窮まってしまいます。リーシュで手や身体に連結しましょう。いざ滑落や転落したら、リーシュで連結されたピッケルは凶器と化す可能性があるため、あえてリーシュを付けない熟達者もいますが、初めてピッケルを手にする人は付けることをおすすめします。
グリベルの「ニューロングリーシュ」
手首を通すループ部分に盲腸のようにスピッツェカバーが付いています。リーシュ付きのピッケルを買った場合もこれに交換したくなるアイデア商品です。
グリベルの「ショルダーリーシュ」
リーシュのループに手首を通してしまうと、ピッケルを左右の手に頻繁に持ち替えるのが面倒です。この製品を肩にたすき掛けにして、伸縮コードとカラビナでピッケルを連結すれば、自由に持ち替えることができます。
グリベルの「スプリングリーシュベルト」
リーシュが付属しないピッケルを買った場合、オールインワンのこの製品が役に立ちます。スピッツェカバーが付属しています。
縦走用ピッケルを「下り優先」で選ぶ
登山者のすれちがいの話ではありません。
雪山に限らず、登山では登りよりも下りのほうが技術的に難しい。ピッケルを選ぶ際にも、下りでの使いやすさを優先する視点が必要ではないでしょうか。
たしかに固く締まった氷雪の急斜面を登下降するなら、ピックを打ち込む動作が主体になるので、短いピッケルのほうが取り回しが良い。しかし、不安定な雪壁の下降はどうでしょうか。シャフトを下方の雪面に深く刺しこみ、確実に効かせてから、追いかけるように身体を降ろしていきます。シャフトが短いと、雪面に届かせるだけでひと苦労です。やっと刺すことができても、深く差し込む安心感を得ることができません。
『トレッキングポールと併用するなら、ピッケルは短めで良い』という今風のアドバイスに片耳を傾けつつ、『縦走主体であれば、歩行時に持て余さない程度に長いピッケルを購入する』ことをおすすめします。私(身長175cm)はペツルの「グレイシャー」68cmを購入しましたが、75cmでも良かったかなと思っているくらいです。
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