登山マットレス(スリーピングパッド)の選び方とおすすめ

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登山用マットレスについて固定観念、先入観にとらわれていませんか。

エアマットはパンクしやすいからクローズドセルしか使わない? ギリギリボーイズの皆さんが「32日かけて厳冬期の黒部横断」したとき、はたまた舟生大悟さんが「厳冬期にテント泊で 27日間の大縦走!」したとき、その装備にはエアマットが含まれていました。

クローズドセルは2020年から採用された新しいR値の規格によって軒並み低い数字に改訂されました。

暖かい季節と寒い季節でマットを使い分ける? 最高性能のマットを惜しみなくオールシーズン使い倒すほうが賢いかもしれませんよ。

なぜ寝袋だけではダメなのか? マットレスが絶対に必要な理由

「高い寝袋を買ったから大丈夫」というのは、登山初心者が最も陥りやすい罠です。

なぜ寝袋だけではダメなのか?

  • 寝袋の弱点: 寝袋の中綿(ダウンなど)は、背中側が自分の体重で押し潰されてペラペラになります。これでは空気を溜め込めないため、保温力はほぼゼロになります。
  • マットの役割: そこで、地面からの冷気をシャットアウトするのがマットの役割です。「背中の保温はマットが担当、それ以外は寝袋が担当」と考えてください。

寝袋は「掛け布団」、マットレスは「敷布団」だと言い換えてもよいでしょう。

登山マットレスの選び方:断熱性と収納性&軽さの相関

登山マットレスの構造は大まかに次の5種類に分類されます。

  1. クローズドセル(発泡素材)
  2. セルフインフレータブル(フォーム内蔵)
  3. インサレーション入りエアマット(中綿封入タイプ)
  4. リフレクティブ・エアマット(熱反射フィルム積層タイプ)
  5. ノンインサレーション・エアマット(空気のみ)

1. クローズドセル(発泡素材)

  • 構造: 独立気泡のスポンジ素材。
  • 特徴: パンク知らずでタフ。安価。
  • 弱点: かさばる。R値(断熱性)は2.0前後が限界。

2. セルフインフレータブル(フォーム内蔵)

  • 構造: 中にウレタンフォームが入っており、自動で膨らむ。
  • 特徴: 寝心地と断熱性のバランスが良い。
  • 弱点: 重く、収納サイズもそこまで小さくならない。

3. インサレーション入りエアマット(中綿封入タイプ)

マットの内部にダウン(羽毛)化繊綿(プリマロフト等)を物理的に封入し、空気の対流を防いで保温するタイプです。

  • 構造: ダウンジャケットの上に寝ているような状態を作ります。
  • メリット:
    • 圧倒的な断熱性: 特にダウン入りはR値7.0〜9.0超えなど、極地遠征レベルの暖かさを出せます。
    • 静音性: 中綿が音を吸収するため、寝返り時の「バリバリ」という音が少ないです。
  • デメリット:
  • 湿気に弱い: 呼気で膨らませると内部のダウンが湿ってカビや性能低下の原因になるため、必ずポンプバッグを使う必要があります。
  • 重量: 中綿の分だけ、次の「熱反射タイプ」よりは少し重くなる傾向があります。
  • 代表例: EXPED(エクスペド)DownMat / SynMat シリーズ、Big Agnes の一部モデル

4. リフレクティブ・エアマット(熱反射フィルム積層タイプ)

中綿を入れる代わりに、内部にアルミ蒸着フィルム(熱反射層)を何層も配置し、体の熱(輻射熱)を反射して温めるタイプです。

  • 構造: 内部を細かく部屋分けし、熱反射フィルムを吊るしたり積層させたりしています。
  • メリット:
    • 暖かさに対する「軽さ」が最強: 中綿という「質量」がないため、高断熱でありながら驚異的に軽くてコンパクトです。現在の雪山登山の主流です。
  • デメリット:
    • 音がうるさい: 内部のフィルムが擦れて、寝返りのたびに「カサカサ」「バリバリ」というポテトチップスの袋のような音がしがちです(最新モデルでは改善されつつあります)。
  • 代表例: Therm-a-Rest(サーマレスト)NeoAir XTherm / XLite シリーズ、NEMO テンサー(※テンサーはフィルム+トラス構造)

5. ノンインサレーション・エアマット(空気のみ)

  • 構造: 中に何もなく、ただの空気の層のみ。
  • 特徴: 非常に軽くて安いですが、空気の対流で熱が逃げるため全く暖かくありません。夏山の低山キャンプ用です。雪山では使用不可(背中から体温を奪われます)。

登山マットレスの構造ごとの性能を5点満点×7要素で評価

要素\構造 クローズドセル セルフインフレータブル エアマット
(中綿入り)
エアマット
(熱反射式)
エアマット
(空気のみ)
断熱性 ★★ ★★★ ★★★★★ ★★★★★
寝心地 ★★ ★★★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★
重量 ★★★★★ ★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★
容積 ★★★ ★★★★ ★★★★ ★★★★★
耐久性 ★★★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
利便性 ★★★★★ ★★★★ ★★★ ★★★ ★★★
価格 ★★★★★ ★★★ ★★★★
合計点数 25 24 24 24 25

ハイブリッド型も存在するため、あくまで一般的な傾向として理解してください。

各要素について説明します。

断熱性
「見かけの厚さ」≠「断熱性」です。エアマットは「冷たい地面」側と「温かい人間」側とで熱が自由に対流するため、断熱性をあまり期待できません。エアマットにダウンを詰めたり、熱反射板をはさんだりすれば、対流が起こりにくく最高に暖かくなります。セルフインフレータブルも暖かいですが、軽量化のために縦穴があいた製品は「冷たい地面」側と「温かい人間」側とで対流が起こりやすいので要注意です。クローズドセルは見かけが薄いものの、微細な気泡に空気を閉じ込めているため対流が起きません。断熱性の指標としてR値(熱抵抗値)が使われます。R値が高いほど、断熱性が高くなります。※R値については次節で掘り下げます。
寝心地(厚さ、弾力性)
一般に厚いほど弾力性(クッション性)が高まり、寝心地が良くなります。とは言え、エアマット系はふわふわし過ぎて落ち着きません。セルフインフレータブルのやや硬めの寝心地が最高です。クローズドセルも悪くありませんが、なにぶん厚みが2cm程度なので、弾力性は限られます。
重量
エアマット(中身がない)とクローズドセル(外皮がない)がいちばん軽量です。エアマット(熱反射板)とエアマット(インサレーョン)を同じ4点としましたが、前者のほうがやや軽い傾向にあります。セルフインフレータブルがいちばん不利ですが、中身に大胆なダイカット(肉抜き)をほどこした製品はエアマット(インサレーション)なみに軽くなります。
容積
前項の「重量」と比例します。が、クローズドセルだけはひどく嵩張るため1点という正反対の評価となります。このデメリットは、次項の「耐久性」「利便性」とトレードオフの関係にあります。
耐久性
クローズドセルにはパンクの心配がありません。他のエアマット系(空気で膨らませる構造)には常にパンクの心配がつきまといます。ただし、セルフインフレータブルはパンクした場合もスポンジの厚さ分の断熱性と弾力性が担保されるという安心感(気休め?)があります。
利便性
クローズドセルには空気で膨らませたり、たたんだりする手間がかからず、取り扱いの容易さでは随一です。セルフインフレータブルは自動膨張する利便性を評価しました。
価格
安価さでは、クローズドセル > エアマット > セルフインフレータブル > エアマット(インサレーション)またはエアマット(熱反射式)の順となります。

R値の基礎知識

R値(アールち)は、マットレス選びで「軽さ」と同じくらい、あるいはそれ以上に重要な数値です。

一言で言うと、「R値 = 冷気を遮断する力(断熱性)」です。数字が大きければ大きいほど暖かく、小さければ寒さを感じやすくなります。

入門者の方が知っておくべきポイントを3つに絞って解説します。

1. 季節ごとの「R値」の目安

R値 適した季節・シーン
0.5 ~ 1.5 真夏のみ(低山キャンプ、夏フェスなど)
2.0 ~ 3.0 3シーズン(春・夏・秋の北アルプスなど)
3.0 ~ 4.0 晩秋・初冬(霜が降りる時期、寒がりな人)
4.0 ~ 6.0 雪山入門(厳冬期のテント泊、雪の上)
6.0 以上 極地・高所(厳冬期の高山、海外遠征)

上の図中の「VARIANCE ZONE(バリアンス・ゾーン)」は、R値の区分における「個人差や状況による変動・不確定な範囲(グレーゾーン)」を指しています。

体感温度の個人差(暑がり・寒がり)、寝具システム全体の組み合わせ(寝袋やウェア)、気象条件のブレ(平地の秋?高山の秋?)によってブレがあります。

この「VARIANCE ZONE」に該当する時期や場所に行く場合(例:晩秋や春先の高山など、どっちつかずの季節)は、「高い方のR値(暖かい方)」を選んでおくのが登山のセオリーです。寒くて眠れないリスクを避けるためです。

2. R値は「足し算」ができる

これが最も実践的で重要なテクニックです。 R値は、2枚のマットを重ねることで数値を単純に足すことができます。

3シーズンエアマット(R値 3.5) + クローズドセルマット(R値 2.0) = 合計 R値 5.5

これなら冬山でも対応可能になります。いきなり高価な冬用マット(R値6.0など)を買わなくても、持っているマットの組み合わせで対応できる場合があります。

3. 共通規格「ASTM F3340-18」について

2020年から採用されたASTM FF3340規格によってるR値(thermal resistance value=熱抵抗値)が修正されました。

新規格によってクローズドセルのR値は軒並み下がりました。 ただし、新規格による測定ではクローズドセルのR値が不利になるという主張があります。

「空気は最高の断熱材だが、動くと熱を奪う」

シンプルな(空気のみの)エアマットは、厚みのある空気層が地面の凹凸を物理的に吸収するためクッション性に優れます。が、内部が遮蔽物のない完全な空洞であるため、体温で温められた空気が対流によって循環し、絶えず冷たい地面側へと熱を奪われてしまいます。よって、断熱性能は低くなります。

筆者はこの現象を「熱交換ループ」と「ヒートロスのベルトコンベア」と呼んでいます。

これを防ぐために開発されたのが、タイプ3(中綿入り)やタイプ4(反射板入り)です。

  • ダウンや化繊綿(タイプ3): 物理的に邪魔なものを詰め込むことで、空気の移動(対流)を阻止し、空気を「動かない層」にします。
  • 小部屋に分ける(バッフル構造): 気室を細かく区切ることで、大きな空気の流れを作らせないようにします。

雪山や厳冬期での選び分け

雪山や厳冬期でハイスペックなエアマットの選び方は以下のようになります。

「軽さと収納サイズ」を最優先するなら
4. リフレクティブ(熱反射)タイプ(サーマレスト等)がおすすめです。
UL(ウルトラライト)志向や、荷物を切り詰めたいアルパインクライミング向け。
「寝心地と静音性、絶対的な暖かさ」を重視するなら
3. インサレーション(中綿)タイプ(EXPED等)がおすすめです。
音に敏感な方や、ベースキャンプ型で重量がそこまで気にならない場合。特にダウン入りは極寒環境での信頼性が高いです。

登山マットレスのおすすめ

登山マットレスの構造ごとにおすすめの製品を紹介し、簡単なレビューを付記します。

  • 長さが180cm程度
  • 重量が600g以下

という条件でピックアップしました。

特筆すべき製品についてはこの条件に当てはまらなくても取り上げました。

エアマット

THERMAREST – ネオエアーウーバーライト

250gの衝撃。耐久性を生贄に捧げ、究極の「軽さ」を召喚したエアーマット。

市場で最も軽量なエアマットの一つとして知られていました。

  • 異次元の軽さと収納サイズ (250g): レギュラーサイズでわずか250gという、缶ビール1本分以下の重さです。収納サイズも非常に小さく、バックパックの隙間に容易に収まります。「1gでも削りたい」というUL(ウルトラライト)ハイカーやトレイルランナーにとっての最終兵器でした。
  • 夏山専用の断熱性 (R値2.3): R値は2.3と低めで、使用推奨時期は「夏」に限られます。春先や晩秋の高山では冷気を感じるスペックであり、雪山での使用は不可能です。
  • 極薄素材によるデリケートさ (15D): 極限の軽さを実現するため、生地にはストッキングのように薄い15D(デニール)ナイロンが使われています。岩角や木の枝でのパンク、経年劣化による剥離リスクが他モデルよりも高く、取り扱いには細心の注意が必要です。
  • 快適な厚み (6.4cm): これほど軽量でありながら厚さは6.4cm確保されており、クローズドセルマット(銀マット)のような硬さとは無縁の、快適なクッション性を提供します。

「道具の扱いに慣れており、パンクリスクを許容できる」「耐久性よりも軽さが全て」という上級者向けの製品でしたが、現在はより耐久性と静音性が向上した「XLite NXT」シリーズ等へ統合される形で廃盤となっています。市場流通在庫のみとなります。

NEMO – テンサートレイル レギュラーマミー

369gの軽さで、9cmの厚み。夏山を制する「快眠」ウルトラライト。

3シーズン(春・夏・秋)に特化した超軽量モデルです。他社の夏用・軽量マットと比較した特徴は以下の通りです。

  • 厚さ9cmの安定感: サーマレストの「ネオエアー ウーバーライト(2.5インチ/約6.4cm)」や「XLite(3インチ/7.6cm)」よりも厚い9cmの厚み があり、身体が地面に触れるリスクを極限まで減らしています。NEMO独自の構造で、ふわふわせずピタッと安定する寝心地は健在です。
  • 超軽量 369g (レギュラーマミー): R値8.5の「エクストリーム(約472g)」から断熱材を減らすことで、約369g という驚異的な軽さを実現しています。サーマレストのXLite(354g)とほぼ同等の軽さで、より厚いクッション性を得られます。
  • R値2.8(3シーズン用): 断熱性能はR値2.8 です。これは夏山や、そこまで冷え込まない春・秋の低山向けです。夏のアルプス縦走などには最適なスペックです。
  • 静音性と耐久性のバランス: トップ素材に20D(デニール)、ボトムに40Dナイロンを使用しており、サーマレストの最軽量モデル「ウーバーライト(15Dで非常に薄い)」よりもパンクへの安心感があります。もちろん、カサカサ音も静かです。

「雪山には行かない」「夏の北アルプスなどで、荷物は軽くしたいが、ペラペラのマットで寝心地を犠牲にしたくない」という方に最適な一枚です。

個人的には、なぜか菓子パンのように食欲をそそる風合いが好ましく、スペックを度外視して強く惹かれる製品です。

SEA TO SUMMIT – ウルトラライトマット

薄くても、ボヨンとしない。「寝心地」と「軽さ」を両立した、
エアマットの入門にして完成形。

同社のラインナップで最もベーシックかつ軽量コンパクトなモデルです。

  • 「点」で支えるエアスプラングセル構造: 無数の「点(セル)」で身体を支える構造です。縦型チューブのマットに比べて横揺れやフワフワ感が非常に少なく、薄くても安定した寝心地が得られます。
  • 厚さ5cmのダイレクトな使用感: ふかふかしたベッドのような寝心地ではありませんが、重心が低いためテント内で安定しやすく、パッキングサイズも非常にコンパクト(缶ビールサイズ)になります。
  • 優れたコストパフォーマンス: 他社の同等スペック品と比較して価格が抑えられていながら、「ポンプ一体型スタッフサック」が標準装備されています。口で膨らませる必要がなく、初心者でも扱いやすい親切設計です。

「安価なマットの寝心地の悪さは避けたい」という、夏山登山やULキャンプの最初の一枚として非常にバランスの良い優等生です。

mont-bell – U.L. コンフォートシステム エアパッド 180

「夏山」限定の特等席。
7cmの厚みで500g、コスパ最強の連結エアマット。

中綿を含まない純粋な空気層のみで体を支える、夏山専用の軽量エアマットです。

  • 厚さ7cmの極上クッション: 同社の自動膨張式(アルパインパッド/2.5cm)とは比較にならない7cmの厚みがあり、地面の凹凸を完全に無効化します。寝心地重視の方には天国のようなフワフワ感です。
  • 軽量コンパクト (約504g) :これだけの厚みがありながら、中綿がないため504g(※スタッフバッグ込514g)と軽量です。収納サイズもφ11×20cmと、自動膨張式よりも圧倒的に小さくまとまります。
  • 夏山専用スペック (R値1.4): 断熱材が入っていないため、R値は1.4と低めです。基本的に「暖かい時期(夏)の登山」や「キャンプ」専用となります。春や秋の高山では底冷えする可能性が高いため、銀マットとの併用が必要です。
  • 例の「連結システム」も健在: 製品名にある通り、モンベル独自のトグル(留め具)システムを搭載しており、マット同士の連結や枕の固定が可能です。エアマット特有の「軽すぎてズレる」問題をシステムで解決しています。

「とにかく安く、夏山で快適に眠れる分厚いマットが欲しい」という方に。冬は使い物になりませんが、夏のテント泊デビューにはコスパも含めて最適な一枚です。

国内の有名アウトドアブランドで純然たるエアマットを作っているのは今やモンベルくらい。一世を風靡したキャラバンのエアマットを現代に引き継ぐものと言ってよいでしょう。かつては縦長のチューブを並べるのが主流でしたが、揺れを防ぐために短いチューブを横向きに並べる構造に進化しました。いかにも合理的ですが、かつてキャラバンのエアマットで幾多の眠りをむさぼった者としては一抹の寂寥をおぼえなくもありません。

KLYMIT – INERTIA-O zone

穴だらけの常識破り。
寝袋の性能をブーストする、350gの「着る」マット。

超軽量化のために大胆な「肉抜き」加工が施された、非常にユニークなエアマットです。

  • 最大の特徴「ロフトポケット」: マットにあえて大きな「穴(空洞)」を設けたスカスカの見た目が特徴です。寝袋の下ではなく寝袋の中に入れて使うことで、背面のダウンが穴の中で膨らみ、寝袋本来の保温力を活かす(ダウンを潰さない)逆転の発想で設計されています。
  • 枕一体型で超軽量: 頭部を包み込む「X枕」が本体と一体化しており、寝ている間に枕が逃げません。これだけの機能を持ちながら重量は約354g〜369g と非常に軽く、収納サイズは350ml缶程度まで小さくなります。
  • 断熱性は「寝袋次第」: 穴が空いているため、マット単体のR値(断熱性)は測定不能(ほぼゼロ)です。単体での使用は夏に限定されるか、他の薄いマットと重ねて使う「ブースト用」として割り切る必要がある、玄人好みのギアです。

「マットで暖かさを確保する」という常識を捨て、「寝袋の暖かさを補助する」ことに特化した、UL(ウルトラライト)ハイカーのための飛び道具です。

YouTube動画「Klymit Inertia Ozone review (Japanese)」では、実際に膨らませた際の独特な形状やサイズ感、薄さについて分かりやすく解説されています。

大胆に肉抜きされた異形のデザインに怯みます。その一方、頭にはしっかり枕が付いているというアンバランスさ。昔懐かしい「筋肉大移動」をほうふつとさせます。

エアマット(インサレーション or 熱反射式)

インサレーション式と熱反射式とを併用する場合があるので、まとめて取り扱います。

THERMAREST – ネオエアーXサーモ NXT

雪山登山の絶対王者。
世界最高レベルの「暖かさ」と「軽さ」を両立したベンチマーク

サーマレストの「ネオエアーXサーモ NXT」は、冬山用マットの「軽さ」における金字塔です。

  • 圧倒的な重量対保温比(R値7.3 / 439g): Sea to Summitのマット(560g)と比較して約120gも軽量です。R値7.3という極地対応の暖かさを持ちながら、夏用マット並みの軽さと収納サイズを実現しており、荷物を極限まで軽くしたい登山者の第一選択肢です。
  • 改善された厚み(7.6cm)と静音性: NXTモデルになり厚さが6.4cmから7.6cmにアップし、快適性が向上しました(ただしSea to Summitの10cmには及びません)。また、以前のモデルで不評だった「バリバリ音」が劇的に低減され、静かに眠れるようになりました。
  • 独自の断熱構造「トライアンギュラーコアマトリックス」: 内部に熱を反射する層を何枚も重ねる構造で、地面からの冷気をシャットアウトします。中綿を使わないため、経年劣化によるロフト(かさ高)低下の心配が少なく、長く性能を維持できます。
  • 耐久性の高いボトム素材: 地面に接する裏面には70D(デニール)ナイロンを使用しており、軽量マットながら岩場などでのパンクリスクを抑えたタフな作りです。

厳冬期用で「装備の軽量化・コンパクト化」を最優先するなら、この製品がイチオシです。

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山岳用マットレスの新次元、サーマレスト「ネオエアー XサーモNXT」レビュー
2023年春夏シーズンに登場したサーマレストの「ネオエアー XサーモNXT」が山岳用マットレスの新次元を切り開きました。これまではダウンマットと重量面、断熱/保温性能で拮抗していましたが、この新モデルによって頭ひとつ抜きん出ました。 重量は...

RAB – イオノスフィア5

最新技術「TILT」が熱を逃さない。
静音と暖かさを両立した、頼れるオールシーズン・マット。

化繊中綿と熱反射テクノロジーを組み合わせた、非常にバランスの良いエアマットです。

  • 「TILT」技術による効率的な保温 (R値4.8): 繊維一本一本にチタンコーティングを施す「TILT(Thermo Ionic Lining Technology)」という独自技術により、体から出る輻射熱を効果的に反射します。さらにリサイクル化繊中綿(Stratus R)を組み合わせることで、R値4.8という、晩秋から残雪期、軽めの雪山まで対応できる絶妙な暖かさを実現しています。
  • カサカサ音が気にならない静音設計: 熱反射フィルム単体ではなく、中綿と繊維コーティングで断熱しているため、サーマレストのような不快な「バリバリ音」が大幅に抑えられています。ダウンマットに近い静けさで眠ることができます。
  • 落下を防ぐ安定形状: 厚さは8cmあり、縦型バッフル構造を採用していますが、両端のチューブだけ少し太く高く設計されています。これにより、寝返りを打ってもマットから転がり落ちにくいよう工夫されており、包まれるような安心感があります。
  • 実用的な重量と耐久性: レギュラーサイズで550g です。超軽量クラス(400g台)よりは少し重いですが、その分生地がしっかりしており(20D)、滑り止め加工も施されているため、実用性と耐久性のバランスが取れています。

「R値7(厳冬期専用)までは不要だが、3シーズン用(R値3)では不安」という方や、「フィルムの音は嫌だが、ダウンマットは高価すぎる」という方に、春~冬の入り口まで長く使える賢い選択肢です。

RAB – ハイパースフィアーウルトラ7.5

800FPダウンの贅沢な温もり。
フィルムの音が苦手な人に贈る、静かで暖かな雪山マット。

断熱材に最高品質のダウンを使用したユニークな雪山用マットです。他社のフィルム断熱モデルと比較した特徴は以下の通りです。

  • 天然ダウンによる「静かな」暖かさ (R値7.3): サーマレストやNEMOが「反射フィルム」で熱を閉じ込めるのに対し、このマットは800FPの撥水ダウンを封入しています。そのため、フィルム特有の「バリバリ・カサカサ音」がほとんどせず、ダウンシュラフに包まれているような自然な暖かさを感じられます。
  • 安定した厚みと保温性: 厚さは8cm と十分で、地面の凹凸をしっかり吸収します。R値は7.3(名称は7.5ですが実測は7.3)あり、厳冬期の雪山でも底冷えを感じさせないスペックです。
  • 重量は少し重め (610g) :ダウンを使用している構造上、サーマレスト(439g)やNEMO(472g)の超軽量モデルと比較すると100g〜150gほど重くなります。しかし、Sea to SummitのXRプロ(560g)とは近い重量感です。
  • パッキングの小ささ: ダウンは圧縮性が高いため、広げた時の大きさに対して収納サイズは比較的コンパクトに収まります。

「軽さ」よりも「静音性(カサカサ音が嫌)」や「ダウンならではの安心感」を重視する方におすすめの、玄人好みな一枚です。

NEMO – テンサー エクストリームコンディションズ レギュラーマミー

R値8.5の衝撃。
驚異的な暖かさと静音性を兼ね備えた、雪山マットの革命児。

THERMARESTの「ネオエアーXサーモ NXT」に強力なライバルが登場。最高レベルの断熱性と静かさを両立させたエアーマットです。

  • 世界最高クラスの断熱性 (R値8.5) :サーマレスト(R7.3)やSea to Summit(R7.4)を上回るR値8.5を記録し、現在市場にある超軽量マットの中で最も暖かいモデルの一つです。内部の「Apexバッフル」構造が、吊り下げられた4層の断熱フィルムで冷気を完璧に遮断します。
  • 「カサカサ音」がしない静音設計: 断熱フィルムを使用しているにもかかわらず、フィルムが擦れ合わないよう工夫されているため、サーマレストのような「バリバリ音」がほとんどしません。静かな山小屋やテント場で周囲に気を使いたくない人に最適です。
  • 暖かさと重量の最強バランス: これだけの断熱性能と9cmの厚み を持ちながら、重量は472g。最軽量級のサーマレスト(439g)に肉薄する軽さで、「重さに対する暖かさ」の効率はトップクラスです。
  • 安定した寝心地: 厚みはSea to Summit(10cm)に次ぐ9cm です。独自のトラス構造により、マットの端に乗っても沈み込みが少なく、ふわふわした不安定さが抑えられています。

「軽さ」も「暖かさ」も妥協できず、さらに「静かに眠りたい」という雪山登山者にとって、現在の最適解といえるマットです。

SEA TO SUMMIT – イーサーライトXRプロマット

厚さ10cmの無重力体験。
暖かさと軽さを極めた、雪山用マットの到達点。

厳冬期に対応する最高レベルの断熱性能を持つエアーマットです。

  • クラス最厚の10cmによる極上の寝心地: 他社製品(7.6〜9cm)よりも分厚い10cmの厚みがあり、横向きに寝ても底付き感が全くありません。「エアスプラングセル(独立気室)」構造により、エアーマット特有のフワフワした揺れを抑え、自宅のベッドに近い安定感があります。
  • 厳冬期も安心の断熱性(R値7.4): 旧モデル(中綿入り)から内部構造を「反射フィルム」に一新したことで、R値7.4という最高クラスの暖かさを実現しました。これは雪山登山の標準装備であるサーマレストXサーム(R値7.3)と同等以上の性能です。
  • 劇的な軽量化: 構造変更により、旧モデルから約170gもの軽量化に成功しました(レギュラー560g)。最軽量クラスのサーマレスト(約440g)には及びませんが、「+100gの重量増で、圧倒的な寝心地の良さを手に入れる」という選択肢として非常に優秀です。
  • 静音性と使い勝手: 反射フィルム入りながらカサカサ音がしにくく、静音性に優れています。また、枕がズレない「ピローロック」や、微調整が容易なバルブなど、細部の使い勝手も追求されています。

BIG AGNES – ズームULインシュレーテッド

「マミー型」の窮屈さから解放。
広々とした長方形で397gを実現した、高コスパな快眠マット。

軽量化のために足元を削るのが常識のUL市場において、「長方形(レクタングラー)」のまま軽さを実現した意欲作です。サーマレストやNEMOと比較した特徴は以下の通りです。

  • 足元が広い「長方形」デザイン: 多くの軽量マットが「マミー型(足元が細い)」であるのに対し、このマットは長方形です。足を開いて寝たり、寝返りを打っても足がマットから落ちにくく、マミー型の窮屈さが苦手な人に圧倒的な開放感を提供します。
  • この形状でアンダー400g (397g): 生地面積が広い長方形でありながら、重量は397g(レギュラーサイズ)に抑えられています。マミー型のサーマレスト(XLite NXT/354g)やNEMO(テンサー/369g)と比較しても、その差はわずか数十グラムです。
  • 厚さ9cmのボリュームと断熱性 (R値4.3): 厚さはNEMOと同等の9cmあり、横向き寝でも快適です。R値は4.3あり、3シーズンはもちろん、初冬や残雪期まで対応できる十分な暖かさを持っています(内部に熱反射フィルムを2枚使用)。
  • コストパフォーマンスの高さ: 競合のトップモデル(サーマレストやNEMO)と比較して、実売価格が安価に設定されていることが多く、「高性能な軽量マットが欲しいが、4万円オーバーは厳しい」という層にとって非常に魅力的な選択肢です。

数グラムの軽さよりも、足元の広さと安眠を取りたい」「寝相が悪くてマミー型だと落ちてしまう」という方に、現在最もおすすめできるバランス型マットです。

EXPED – Ultra 7R M Mummy

ダウンの暖かさと、9cm厚の包容力。
静寂に包まれる「快眠」ドーピング剤。

断熱材に700FPの高品質ダウンを使用した、非常にユニークかつ高性能な雪山用マットです。

  • ダウンならではの「無音」の暖かさ (R値7.1): 内部にダウンが封入されているため、サーマレストやNEMOのような「バリバリ・カサカサ音」が一切しません。R値7.1 という厳冬期対応の暖かさを持ちながら、まるで家の布団のような静けさを提供します。
  • 9cmの厚みと、体がブレない「縦型チューブ」: 厚さは9cm と、Sea to Summit(10cm)に迫るボリュームがあります。EXPED特有の縦向きの空気室(バッフル)は、体のラインに沿って沈み込み、寝返りを打ってもマットから落ちにくい「ゆりかご(クレードル)」のような安定感があります。
  • 驚異的な軽さ (495g): ダウン入りで9cmもの厚みがありながら、重量はわずか495g です。最軽量のサーマレスト(439g)やNEMO(472g)と比較しても数十グラムの差しかなく、ダウンマットとしては驚異的な軽さを実現しています。
  • 優秀な「シュノッツェル・ポンプバッグ」が標準付属: 付属のポンプバッグは防水スタッフサックとしても使用でき、非常に短時間でマットを膨らませることができます。他社製ポンプよりも使い勝手が良いと評判です。

「軽さ」は譲れないが、「カサカサ音はどうしても許せない」「横揺れが少ない縦型バッフルが好き」という方にとって、このUltra 7Rは最高の選択肢となります。

クローズドセル

THERMAREST – リッジレストクラシック

パンク知らずの不死身の相棒。
安くて軽くてラフに使える、永遠の定番マット。

1986年発売。空気を入れる必要がないクローズドセル(発泡フォーム)タイプのマットです。高級エアマットとは対極にある、質実剛健な製品です。

  • 絶対的な信頼性(パンクしない): 空気を使わないため、鋭利な岩場でも、アイゼンを引っかけようとも、絶対にパンクしません。故障のリスクがゼロであることは、過酷な長期遠征において最強のメリットとなります。
  • 軽量かつ即座に設営可能 (400g): レギュラーサイズで400gと軽量です。袋から出して広げるだけで「1秒」で寝床が完成し、撤収も巻くだけ。休憩時の座布団としてもラフに使えます。
  • 必要十分な断熱性 (R値2.0): 表面の凹凸が空気を溜め込むことで、R値2.0 の断熱性を確保しています。夏山では単体で十分機能し、厳冬期にはエアマットの下に敷く「ベースマット(底冷え&パンク防止用)」として大活躍します。
  • 圧倒的なコストパフォーマンス: 数万円するエアマットに対し、数千円で購入できる手軽さも魅力です。雑に扱っても壊れないため、長期間使い続けられる高コスパモデルです。

「道具を丁寧に扱うのが面倒」「故障リスクをゼロにしたい」というタフな登山者や、「とりあえず最初の1枚」を探している初心者に、まず間違いのない選択肢です。

登山マットレス比較~クローズドセルをザックに収納する方法
ウルトラライトハイキング界隈では、軽量なザック(生地が薄く、背中のパッドがない)の中にリッジレストを煙突状に入れることにより、嵩張るマットを収納する、ザックの骨格を作る、荷物を衝撃や寒暖から守る、という一石三鳥のテクニックが常識となっています。
熱反射コーティングされたモデル「リッジレスト ソーライト」は残念ながら2022年4月に「販売終了」が告知されました。

THERMAREST – Zライト ソル

パタパタ畳める、山の制服。
1秒で設営できる、信頼と実績の銀マット。

1989年発売。登山に行けば必ず誰かが持っていると言っても過言ではない、クローズドセルマットのベストセラーです。直前に紹介した「リッジレスト」と比較した特徴は以下の通りです。

  • 最大の違いは「アコーディオン折り」: リッジレストが「丸めて収納」するのに対し、Zライトは「パタパタと屏風のように畳める」のが最大の特徴です。手を離しても勝手に丸まろうとせず、バックパックの外付けにも収まりが良い四角形になるため、携行性でこちらを選ぶ人が圧倒的に多いです。
  • アルミ蒸着による熱反射 (+20%): 表面にアルミを蒸着(ThermaCapture加工)しており、体温を反射して暖かさを高めています。これにより、通常の黄色いZライトよりも断熱性が約20%向上しており、R値2.0を確保しています。
  • 1秒で座布団に早変わり: 設営・撤収が一瞬であるだけでなく、休憩時に半分だけ広げて座布団にしたり、枕の高さを調整したりと、エアマットにはできない柔軟な使い方が可能です。
  • もちろんパンク知らず: 発泡フォーム製なので、岩場でラフに使ってもパンクしません。雪山ではエアマットの下に敷くことで、冷気の遮断とエアマットの保護を兼ねる「鉄板の組み合わせ」として重宝されます。

「リッジレストの丸まるクセが嫌」「パッキングをスッキリさせたい」という方に。最初の一枚としてこれを買っておけば、初心者からベテランになるまで絶対に無駄にならない必須アイテムです。

クローズドセルにはパンクの心配がないので、安価な類似品も十分に選択肢となりえます。

NEMO – スイッチバック

厚さは増しても、収納は小さく。
王者の座を脅かす、次世代の「銀マット」。

長年市場を独占していたサーマレスト「Zライトソル」の対抗馬として開発された、アコーディオン折りのクローズドセルマットです。Zライトソルと比較した特徴は以下の通りです。

  • Zライトより「分厚い」 (2.3cm): 六角形の交差する凸凹パターンを採用することで、Zライトソル(2.0cm)よりも約3mm厚い、2.3cmの厚みを確保しています。このわずかな差が、地面のゴツゴツ感をより和らげ、寝心地の「フワッと感」を向上させています。
  • 厚いのに「小さく畳める」: 通常、厚みが増せば収納サイズも大きくなりますが、スイッチバックは凸凹が隙間なくピッタリ噛み合うように設計されているため、畳んだ時の高さはZライトソルとほぼ同じか、わずかに薄く収まります。
  • 同等の断熱性と重量 (R値2.0 / 415g): 裏面に熱反射フィルムを装備しており、R値は2.0とZライトソルと同等です。重量もレギュラーサイズで415gと、Zライトソル(410g)とほぼ変わらないため、純粋に「寝心地の好み」で選ぶことができます。
  • 裏面の保護: 裏面(地面側)のフィルムにも耐久性のある保護層があり、ラフに扱っても反射フィルムが剥がれにくい工夫がされています。

スペックはほぼ互角ですが、「Zライトソルよりも、もう少しクッション性が欲しい」「人とは違うマットを使いたい」という方に選ばれている、新しい有力な選択肢です。

スイッチバック」という名称が鉄道マニアに訴求するかも。他人とちがうブランドを所有したい人に向いています。

EVERNEW – FP mat 125

「硬さ」こそが快適。
薄さ5mmの常識を覆す、玄人好みの『畳める板』。

クッション性を捨てて「硬さ」に特化した、非常にユニークなクローズドセルマットです。

  • 薄くても石を感じない「硬度」: 厚さはわずか5mmですが、非常に硬い素材を使用しているため、体重をかけても潰れきらず、地面の小石や木の根の凹凸をシャットアウトします。「畳(たたみ)」の上で寝ているような安心感があります。
  • ザックの背面フレームになる: パタパタと板状に畳めるため、丸めるタイプと違いバックパックの背面に差し込んでフレーム(背骨)として使えます。
  • 最強の「サブマット」: 単体で使うのは慣れが必要ですが、エアマットの下に敷くことで「パンク防止」兼「断熱ブースト」として使うのが、雪山や長期縦走での賢い定番スタイルです。

Gossamer Gear – Thinlight Foam Pad

たった3mmの「保険」。
エアマットを守り、滑りを止める、ULハイカーの万能シート。

厚さわずか1/8インチ(約3mm)という極薄のクローズドセルマットです。単体で寝るためのマットというよりは、他のマットを補助する「万能な布」として絶大な支持を得ています。

  • 空気のような軽さ (約76g〜94g): 丸めるタイプや畳めるタイプがありますが、重量は100gを大きく切ります。バックパックの隙間に差し込んだり、背面パッドとしてフレーム代わりに使うのが定番です。
  • エアマットの「守護神」: 高価で繊細なエアマットの下に敷くことで、パンクの原因となる小石や棘をシャットアウトします。また、ツルツル滑るテントフロアの上でも強力な滑り止めとして機能し、「寝ている間にマットがズレる」ストレスを解消します。
  • ブースト&多用途: R値は約0.5とわずかですが、メインマットに重ねることで底冷えを軽減します。休憩時にはサッと広げて座布団やヨガマット代わりにもなり、畳めば枕の高さ調整にも使える、まさに「何でも屋」です。

「エアマットのパンクが怖い」「テント内でマットが滑って安眠できない」という悩みを、わずかな重量増で解決してくれる、ULハイカーのお守りのような存在です。

セルフインフレータブル

THERMAREST – プロライト

エアマットの「フワフワ」が苦手なあなたへ。
耐久性と安定感を約束する、自動膨張式の世界的スタンダード。

1973年に初登場した自動膨張式(セルフインフレータブル)の直系モデル。中にスポンジ状のフォームが入ったタイプのマットです。

  • 「フォーム入り」ならではの安定した寝心地: 内部にスポンジが入っているため、エアーマット特有の「ボヨンボヨン」という揺れや、体が跳ねる感覚が全くありません。厚さは2.5cmと薄めですが、自宅の布団に近いしっかりとした硬さがあり、腰が沈み込むのが嫌な人に支持されています。
  • バルブを開けるだけの半自動設営: バルブを開くと、中のスポンジが空気を吸って勝手に膨らみます。最後に数回息を吹き込むだけで完成するため、疲れた体に鞭打って酸欠になりながら膨らませる必要がありません。
  • パンクへの強さと、万が一の安心感: エアーマットよりも生地が丈夫で、パンクリスクが低いです。また、万が一穴が開いても中のスポンジ自体にクッション性があるため、「ただのビニールシート」になってしまうエアーマットと違い、最低限の断熱とクッション性は残ります。
  • 3シーズン向けのスペック (R値2.4 / 510g): R値は2.4で、春~秋の使用に適しています。重量は510gと、最新のエアーマット(300g台)に比べれば重く、収納サイズも大きめですが、その分「耐久性」と「手間の少なさ」が手に入ります。

結論として: 「軽さ」よりも「寝心地の安定感(揺れない)」や「設営の楽さ」「道具としてのタフさ」を重視する、堅実派の登山者に愛され続ける名品です。

MAGIC MOUNTAIN – スーパーライト

日本人のための「160cm」。
絶妙なサイズ感で無駄を削ぐ、質実剛健な自動膨張マット。

日本の輸入代理店オリジナルブランドならではの、かゆい所に手が届くサイズ展開が魅力の自動膨張式マットです。

  • 海外勢にはない「160cm」という選択肢: サーマレスト等の海外ブランドは、サイズが「120cm(半身用)」の次がいきなり「183cm(レギュラー)」になりがちです。しかし本製品は160cmというモデルがあり、「小柄な方」や「枕は服で作るからマットは肩まででいい」というUL志向の人に、切ることなくジャストサイズを提供します。
  • 実はかなり軽い (180cmで約510g): 内部フォームに軽量化のための穴あけ加工(肉抜き)が施されており、180cmモデルで約510gと、本家サーマレストの「プロライト(510g)」と全く同じ軽さを実現しています。知名度では負けますが、スペックは一級品です。
  • 滑り止めと連結機能: 表面にはハニカムパターンの滑り止め加工があり、就寝時のズレを防ぎます。また、モンベルのようにサイドにベルクロ(マジックテープ)が付いており、マット同士を連結できる機能も備えています(※モデル年式により仕様が異なる場合があります)。
  • 厚さ2.5cmのスタンダード: 自動膨張式の標準である厚さ2.5cmで、底付き感のないしっかりとした寝心地です。

「サーマレストのレギュラー(183cm)は長すぎて無駄だが、ショート(120cm)では足が寒くて眠れない」という身長165cm前後の登山者や女性にとって、これ以上ない「シンデレラフィット」するマットです。

NEMO – ゾア 20R

プロライトより軽く、小さく。
自動膨張式の限界を攻めた、ULハイカーの隠れた名品。

自動膨張式(インフレータブル)マットの中で、「軽さと収納サイズ」を極限まで追求したモデルです。ライバルであるサーマレスト「プロライト」と比較した特徴は以下の通りです。

  • 縦横無尽の「肉抜き」技術: 通常の自動膨張式は「縦」や「斜め」に穴を開けますが、ゾアは「縦・横」の両方から穴を開ける(2アクシスコアリング)という高度な加工を施しています。これにより、スポンジのクッション性を残しつつ、極限まで重量と嵩(かさ)を削ぎ落としています。
  • プロライトを凌駕する軽さ (430g): 同クラスのサーマレスト「プロライト(510g)」と比較して、レギュラーサイズで約80gも軽量です。3シーズン用の自動膨張式マットとしては最軽量クラスであり、収納サイズも一回り小さく(細く)なります。
  • 十分な断熱性 (R値2.7): これだけ激しく肉抜きをしていても、R値2.7(ASTM規格)を確保しており、プロライト(R2.4)と同等以上の暖かさがあります。春から秋のアルプス縦走に十分対応できるスペックです。
  • 寝心地は「コシのある硬さ」: 軽量化のためスポンジの密度が工夫されているため、プロライトのような「しっとり・もちっとした反発」というよりは、少し「しっかりした硬さ」を感じる使用感です。体が沈み込みすぎないため、腰痛持ちの方などに好まれる傾向があります。

「パンクに強い自動膨張式が良いが、プロライトは重くて嵩張るのが悩み」という方にとって、最も軽量・コンパクトに持ち運べるベストな解決策です。

mont-bell – U.L. コンフォートシステム アルパインパッド25 180

枕もマットも逃がさない。
「連結」システムが作る、盤石の寝床。

日本ブランドならではの細やかな配慮とコストパフォーマンスが光る、自動膨張式の定番マットです。

  • 最大の特徴「ジョイントシステム」: マットの側面に付いているトグル(留め具)を使い、マット同士を連結できます。テント内でマットが離れて隙間ができるのを防ぐため、複数人で寝る場合や、寝相が悪くてマットから落ちやすい人に最強の機能です。また、同社の枕も固定でき、「朝起きたら枕がない」ストレスから解放されます。
  • 日本人に合わせたサイズと形状: 長さ180cm、幅50cmの長方形です。海外製の「マミー型」のように足元が細くなっていないため、足を開いてリラックスして眠れます。
  • 必要十分なスペック (R値3.2 / 664g): 厚さは2.5cmで、R値は3.2(ASTM規格)あります。これはサーマレストのプロライト(R2.4)よりも少し暖かく、春~秋のアルプスや、工夫次第で初冬まで使える性能です。重量は664gと、軽量特化の海外勢(400~500g台)に比べれば少し重いですが、その分丈夫で価格も手頃です。
  • 圧倒的なコストパフォーマンス: サーマレストやNEMOの同等品と比較して、半額近い価格で入手できることも多く、最初の一枚として非常に人気があります。

「軽さ(数百グラムの差)」よりも、「安さ」「マットや枕がズレない快適さ」「長方形の広さ」を重視する方に、最も賢い選択肢です。

PuroMonte – エアーマット180

450gの隠れた実力派。
「名前はエアーでも中身はフォーム」な、軽量自動膨張マット。

製品名に「エアーマット」とありますが、実際には自動膨張式(インフレータブル)タイプです。

  • プロライトより軽い: 450g サーマレストの定番「プロライト(510g)」やモンベル(600g台)よりも軽量で、最軽量級のNEMO「ゾア(430g)」に肉薄する450gを実現しています。日本ブランドらしい、無駄を削ぎ落とした設計です。
  • 標準的な厚さと断熱性: 厚さは2.5cmで、3シーズン(春〜秋)のテント泊には必要十分なクッション性と断熱性を持っています。中身がスポンジフォームなので、純粋なエアーマットよりも底冷えしにくい構造です。
  • 「ワンプッシュバルブ」の使い勝手: 口で空気を吹き込む際に逆流を防ぎ、排気時には一気に抜けるバルブを採用しており、設営・撤収がスムーズです。
  • コストパフォーマンス: 他社の軽量モデルと比較して実売価格が手頃な場合が多く、「軽くて安い自動膨張式」を探している人にとっては、非常に有力な選択肢となります。

ブランドの知名度は大手より控えめですが、「NEMOのゾア並みに軽くて、モンベル並みに安い」という、知る人ぞ知る高コスパな良品です。

長さ105cm、120cm、135cm、150cm、165cm、180cmの6種類。チビッ子から巨人まで、きめ細かく対応できます。

まとめ(スリーピングパッド選びの指針)

登山用マットは「軽さ・収納サイズ」「断熱性(R値)」「快適性(寝心地)」「耐久性・価格」の4要素のトレードオフで成り立っています。

重視するポイント おすすめのタイプ 暖かさ (R値) 軽さ・収納 耐久性 価格
限界までの軽量化 エアマット(夏用) △ (低い) ◎ (最強) △ (弱い)
厳冬期の生命維持 エアマット(冬用) ◎ (最強) 〇 (軽い) △ (弱い) △ (高い)
故障なし・安さ クローズドセル 〇 (普通) 〇 (軽いがかさばる) ◎ (最強) ◎ (安い)
寝心地・バランス セルフインフレータブル 〇 (普通) △ (重め) 〇 (普通)

私自身は、最高性能のマットをひとつ購入し、惜しみなくオールシーズン使い倒すほうがお得だと考えています。

特に登山用マットのような化学繊維と樹脂の塊において、「温存」は「延命」を意味しません。

なぜなら、全ての道具には「耐用年数」という名の寿命が存在するからです。 岩場で酷使しようと、風通しの悪い押し入れで大切に眠らせようと、加水分解という名の時計の針は、等しく残酷に進み続けます。

傷ひとつないまま、経年劣化で剥離し、ただのゴミとして捨てられるマットの、なんと無念なことか。 それは「節約」ではなく、道具に対する「飼い殺し」です。

3万円のマットを10年で5回しか使わずに剥離させるなら、1回あたり6,000円の浪費です。 しかし、3年で100回使い倒してパンクさせたなら、1回あたり300円の極上の投資となります。


エアマットの悲喜こもごもについてはこちらの記事をご参照ください。

泥の河で眠れ~ワンゲル野郎とエアマット
昔の家型テントでは屋根と壁は一体化していますが、床(グランドシート)は分離していました。雨が降ると容赦なく浸水しました。泥の斜面に設営した翌朝、目覚めると、床一面が泥水の川になっていました。でも厚いエアマットの上なら安心。

クローズドセルは嵩張るのが難点です。こちらの記事で携行方法について考察しています。

登山マットレス比較~クローズドセルをザックに収納する方法
ウルトラライトハイキング界隈では、軽量なザック(生地が薄く、背中のパッドがない)の中にリッジレストを煙突状に入れることにより、嵩張るマットを収納する、ザックの骨格を作る、荷物を衝撃や寒暖から守る、という一石三鳥のテクニックが常識となっています。

私自身は長らく、ダウンマットを愛用していました。

賢者はEXPEDのダウンマットで眠る
ダウンマットとは「羽毛を詰めたエアマット」のことです。登山用のマットレスのなかで最高レベルの保温性を誇ります。雪山テント泊で普通のエアマットを使うと、背中側で温まった空気が対流し、地面側で冷やされ、熱が奪われます。ダウンマットなら、羽毛が対流を抑制します。

2023年、サーマレストの新次元マットレスを購入しました。

山岳用マットレスの新次元、サーマレスト「ネオエアー XサーモNXT」レビュー
2023年春夏シーズンに登場したサーマレストの「ネオエアー XサーモNXT」が山岳用マットレスの新次元を切り開きました。これまではダウンマットと重量面、断熱/保温性能で拮抗していましたが、この新モデルによって頭ひとつ抜きん出ました。 重量は...

 

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