登山マットレス比較~クローズドセルをザックに収納する方法

クローズドセルと言えば、登山用品店の棚はサーマレスト社のロール式(リッジレストシリーズ)と折りたたみ式(Zライトシリーズ)に席巻された感があります。昔ながらの、凹凸のない平坦なロールマットは少数派となりました。

リッジレストの凹凸は嵩増しのためのごまかしではない

シュラフの背中側の膨らみが凹凸に入り込む

私はリッジレストやZライトを初めて見たとき、「この凹凸加工は嵩増しのためのごまかしではないか。隙間が多いぶん保温性が低いなら意味がない」と思いました。事実は逆で、シュラフを敷いて寝た際に、通常は潰れてしまう背中側の膨らみが凹凸に入り込み膨らみを確保できる分、保温性が向上するらしいです。

リッジレストを銀マットと組み合わせれば万全

地面側の凹凸に冷気が喰い込まないように銀マットを敷く

リッジレストの地面側の凹凸に冷気が食い込むのを防ぐため、テント床のベースレイヤーとして銀マットを敷くと万全です。

冬季縦走のエキスパート・田中幹也さんはこの組み合わせを採用されているようです。

極力快適に過ごすために雪洞でもツエルトでもなくテントである。薄手の銀マットに厚手の全身用ロールマットを併用する。(山と渓谷2017年2月号)

リッジレストをザックに収納する方法

リッジレストやZライトをザックに外付けすると行動時に邪魔になります。急峻な岩稜では岩角にぶつけてバランスを崩す危険が増しますし、樹林帯では藪に引っかかって動けなくなったりします。

ウルトラライトハイキング界隈では、軽量なザック(生地が薄く、背中のパッドがない)の中にリッジレストを煙突状に入れることにより、

  • 嵩張るマットを収納する
  • ザックの骨格を作る
  • 荷物を衝撃や寒暖から守る

という一石三鳥のテクニックが常識となっています。

これは一般の登山でも通用します。

リッジレストをザックの中に煙突状に収納し、その内側に装備を詰める

リッジレストのデッドスペースには長物を収納する

背中側のデッドスペースにテントのフレームを収納する

リッジレストを煙突状に収納すると、全体が丸いので、ザックの内周とのあいだにデッドスペースができます。特にザックの背中側の隅が気になります。そのスペースにはテントのフレームなど長物を挿入するのが最善です。重いモノを背中寄りに収納することで、ザックの重心を身体に引き寄せる効果があります。

Zライトはコの字型に収納するのが賢い

Zライトを コの字型にたたんでザックに収納する

もともと背中のパッドが厚いザックにリッジレストを煙突状に収納すると、マットの厚みが加わる分、ザック全体の重心が身体から離れるのが少し気になります。その点、Zライトならコの字型に折りたたむことができるので、背中側に厚みを加えずに収納できます。

ちなみに、上の写真はモンベルのZライトもどきフォームパッド150です。本記事ではこれを「Zライト」と呼ぶことにします。

Zライトは変幻自在

私は雪山に復帰した当初、リッジレストを煙突状に収納する方式を愛用していました。が、しだいにZライトに移行しました。

いちばんの理由は、リッジレストだとデッドスペースが発生しやすいからです。前後左右にふわふわと押しごたえがないため、荷物をギュウ詰めしにくい。かなり大きめのザックを用意しないと、装備を詰め切れません。

Zライトは四角四面な構造なので、一見応用がききにくいようですが、実は折り方や重ね方を工夫すると、リッジレストよりはるかに変幻自在です。

基本形

まずは前述した基本形。モンベルの60リットルくらいのザックだと、ちょうどいい按配でコの字形におさまります。背中側にはマットレスを配置しないので、荷物をギュウ詰めしやすいです。

フロントアクセス対応

ザック正面をファスナーでオープンできるタイプのザックで中身にアクセスしたければ、Zライトを逆向きのコの字形に収納するとよいでしょう。背中側をできるだけ薄く、サイド側を厚く畳んだほうが重心が背中から離れずにすみます。

シンプル形

私自身は、シンプルにパネル2枚分の幅に畳み、板状にして、ザックの正面側(背中とは反対側)に収納しています。これがいちばん荷物をギュウ詰めしやすく、重心が背中側に寄ります。

椅子や枕になる

無雪期など余裕のある環境で、テントの外で地べたにすわって、食事したり、コーヒーを飲んだりするときには、Zライトは小高い椅子になってくれます。Zライトを枕に昼寝するのもいいですね。

お風呂マットは厳冬期の北アルプスで通用した

帆布製のキスリングを背負って、えっちらおっちら雪山に登っていた頃、発砲ポリエチレン製のお風呂マットを二つ折りにして背当てにしていました。

ホームセンターで500円程度で入手でき、厚さは2cmくらいあるので保温性は十分。広さは85cm×60cmくらい。横幅に余裕のある半身用として利用しました。

お風呂マットとリッジレストの比較

昨今は就寝用としては利用していませんが、ボルダリングの補助マットとして、母艦のマットにはさんで携行することがあります。

メスナーはチョモランマ単独行で2センチ厚のマットを利用した

ラインホルト・メスナーが1978年のエベレスト無酸素登頂で利用したのが2センチ厚のマットでした。「チョモランマ単独行」のなかで7800m地点のビバークをこう書いています。

テントの壁を軽金属のパイプに結びつけて、やっとこれでよし、という気分になれた。二本のスキーストックとアイスピッケル、それに持ってきた唯一のフェルスハーケンを使って、このビバークザック状のテントを固定する。次に二センチほどの厚さのスポンジマットを地面に敷き、いっぱい詰まったルックザックを奥の方に押しやると、這うようにしてテントのなかに入る。

いろいろ興味深いくだりです。

メスナーは高所登山でストックが有用であることを身をもって証明しました。

「スポンジマット」というのはウレタンマットのことでしょう(もちろんお風呂マットではない)。テントはニッピンのメスナーモデルで、「軽金属のパイプ」はジェラルミン製のテントフレームのこと。「結びつけて」は、ドライエッケン方式の設営方法(テント本体のコードをフレームに引っ掛ける)を指しています。

このあたり原文はどうなっているのか気になります。横川文雄さんの翻訳では一人称を「ぼく」とし、「~のである。」と言い切るのが特徴的でした。そうでないメスナー本を読むと違和感をおぼえるくらいでした。山岳紀行文を書くときに影響を受けた人は多いのではないでしょうか。

【参考リンク】
メスナーテント誕生秘話


※ 初公開(2017年3月15日)
※ 「Zライトは変幻自在」を書き足しました。(2018年3月7日)

登山装備
神山オンライン

コメント