登山マットレス比較~エアマットを遊び尽くそう

学生時代にワンダーフォーゲル部の仲間がこぞって使っていたのがエアマットでした。たしかキャラバン社の製品です。当時はエアマットかロールマットくらいしか選択肢がありませんでした。セルフインフレータブル式の製品はバカ高かった……と言うより、その存在さえ知られていませんでした。

帆布素材のキスリングに装備をガシガシ詰め込むので、やわなロールマットには居場所がありません。外付けするとしたらキスリングの天辺ですが、その特等席にはたいてい布製の家型テントや、武骨なアルミのポールを収納した細長い円筒形の収納袋が鎮座しています。昼間はズッシリと重い鍋釜や灯油ストーブや米や野菜や肉をエッチラオッチラ担ぎ上げ、夜はフカフカのエアマットの上でグースカ寝る。そんな縦走登山にはエアマットがベストマッチだったのでしょう。

デメリットとメリットを3つずつあげてみます。

デメリット

パンクのおそれがある

案の定、使い込むうちに空気漏れが発生しました。これが就寝中に発生すると厄介です。眠気と闘いながら、身体をねじって、吸い口から空気を吹き込もうと無駄な努力をします。腰を浮かして、できるだけ体重を抜いたりして。そんなやり方で膨らませられるわけがありません。二十歳前後の旺盛な睡眠欲に負けて、そのうち寝てしまいました。

膨らませるのが大変である

元気な時はいいのですけどね。体調が悪かったり、匂いが気になる製品だと、オエッとなることがあります。日本の雪山縦走くらいまでは何とか使えますが、ヒマラヤ登山の前進ベースキャンプでエアマットを膨らませようとしたら卒倒するのではないでしょうか。

雪山では寒い

エアマットは内部で空気が対流し放題なので、雪山では地面の冷気が伝わって眠れないと言われますが、そんなことかまわずに使ってました。中級山岳なら寒気がそれほど厳しくなく、体力にまかせて必殺ダブルシュラフ(それも化繊の分厚いやつ)を持ち上げたから通用したのでしょう。

昨今はダウンや熱反射板を入れて保温性を向上したエアマットが発売されていますが、テント床のベースレイヤー(下地)として銀マットを敷けば、オーソドックスなエアマットでもかなり保温性が向上します。

メリット

寝心地は最高である

これはダントツ。地面の多少のデコボコは吸収してくれます。満員御礼の涸沢でゴロた石の上に寝る羽目になったら、これしかないでしょう。ただし、慣れないと独特の浮遊感で落ち着かなく感じるかもしれません。

コンパクトに収納できる

これもダントツ。中に詰めるのは現地調達の空気ですから。

海や川や湖でも活躍する

支笏湖に沈む夕陽

支笏湖に沈む夕陽

これは山岳雑誌のレビュー記事で触れられないメリットですが、水に浮かぶのでビーチマットや浮き輪や救命ボート?として応用できます。

ある夏、北海道の十勝・大雪山系を縦走したあと、メンバー全員で支笏湖畔でゆったりキャンプしたことを思い出します(泥臭い縦走登山後のこうしたくつろぎ行動を「リゾート」と呼んでいました)。私はエアマットを湖にプカプカ浮かべて昼寝したものです。沖縄では西表島のジャングルを横断したあと、竹富島の海にエアマットを浮かべました。伯耆大山を登ったあとは鳥取砂丘で砂ゾリ……いや、これはやめておきました。実際にやったことはありませんが、渡渉をともなう山行ではザックくらいならエアマットにくくりつけて対岸に渡せるのではないでしょうか。

鳥取砂丘と海

鳥取砂丘と海

水に浮かぶと言えば……。昔の家型テントでは屋根と壁(本体)部分は一体化していますが、床(グランドシート)は分離していました。ドーム型テントのようなバスタブ構造にはなっていません。雨が降ると容赦なく浸水しました。泥の斜面に設営した翌朝、目覚めると、床一面が泥水の川になっていることがありました。でも厚いエアマットの上なら安心。これがエアマット一択の最大の理由だったのかもしれません。

おすすめエアマット

2018年現在、登山用品店の店頭でよく見かけて、実際に手に取って確かめやすい製品のうち、重量が500g以下のモデルを厳選してみました。

モンベル / U.L. コンフォートシステム エアパッド 150

主要なスペック

サイズ 長さ150cm×幅50cm×厚さ7cm
重量 431g
定価 \9,000+税

レビュー

お手頃価格。全身用ではありませんが、スタッフバッグに余分な衣類など詰め込んだ枕を付属のストラップで連結できます。

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サーマレスト / ネオエアーXライト

主要なスペック

サイズ 長さ183cm×幅51cm×厚さ6.3cm
重量 350g
定価 ¥23,000+税

レビュー

三角形の隔壁と熱反射板により、冬季でも通用する断熱性をうたっています。

繊細な手触りで、取扱いに細心の注意を払いたくなります。寝そべると、パリパリと音がするのが気になるかもしれません。とてもエキスパートが長期縦走に好んで携行するような製品ではないと思いましたが、黒部ゴールデンピラー隊の記事(ROCK&SNOW 072号「剣沢大滝左壁ゴールデンピラー 厳冬期 黒部横断32日間」)には、雪洞内でこのエアマットにすわって将棋を指す写真が掲載されていました。

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ニーモ / テンサー20R

主要なスペック

サイズ 長さ183cm×幅51cm×厚さ7.5cm
重量 360g
定価 \15,000+税

レビュー

なぜか食欲をそそる外観や手触りです。菓子パンを連想させるからでしょうか。ネオエアーXと比較すると、パリパリ感はなく、重量は同等で、比較的安価ですから、個人的にはこちらに軍配を上げます。

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クライミット / イナーシャ オゾン

主要なスペック

サイズ 長さ183cm×幅54.6cm×厚さ4.4cm
重量 346g
定価 \15,660+税 →実勢価格は半額くらい

レビュー

肉抜きして軽量化し、かつ、その穴に寝袋の背中側のロフトが入り込み保温性が向上するという一石二鳥を目指した製品です。寝袋の内側に入れることを想定していますが、より保温性が高い中綿(ダウン)を身体に近づけるという意味では、通常のエアマットのように外側に出したほうがよいかもしれません。いずれにせよ寒い季節に保温性を確保するには、最低でも薄い銀マットを併用する必要があります。

参考リンク

クライミット / イナーシャXライト

主要なスペック

サイズ 長さ107cm×幅46cm×厚さ4cm
重量 173g
定価 \11,500+税 →実勢価格は半額くらい

レビュー

全身用ではありませんが、特筆すべきモデルです。

穴に首を通し、二つ折りにして胸側と背中側をおおえば、

  • 防寒着
  • 救命胴衣

になります。行動中にはデッドウェイトとなるスリーピングマットを徹底活用!

参考リンク

その他のマットレス

エアマットをはじめとする様々なマットレスについての記事はこちらです。

登山マットレス比較~山と渓谷の特集記事など
最近のマットレスの潮流を俯瞰するため、「山と渓谷」で特集された山岳装備の特集を読んでみました。 山と渓谷2015年1月号 GTR VOL.09「冬季用マット」 山と渓谷2016年10月号 GTR VOL.07「スリーピングマット」 山

変更履歴

  • 初公開(2017年3月5日)
  • 「おすすめエアマット」を追加しました。(2018年8月3日)
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