雪山登山で使える1~2人用テント、シェルターをレビューします。
テントやシェルターを選定するにあたって最初に、
- シングルウォールかダブルウォールか
- 自立式か非自立式か
を決めなくてはなりません。
この記事では自立式のシングルウォールを扱います。
重量は1.0kg未満を目指しますが、やや余裕をみて1.0kg~1.5kgも視野に入れます。
1.0kg未満
アライテント / ライズ1
サイズ | 間口100×奥行200×高さ95cm |
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重量 | 980g(本体+フレーム) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:1,000㎜/㎠ 透湿度:10,000g/㎡/24hr |
特徴
- 軽量化と耐久性のバランスを考慮している。(本体30デニール、底部40デニール)
- 底部のL字型ファスナーにより、ツェルトのようにかぶったり、土間を作ったりできる。
- ベンチレーターは2つあり、1つは大きくて低い位置に付いている。
- 出入口にモスキートネットが付いていない。ベンチレーターにはモスキートネットが付いている。
- 内部にはモノを吊り下げるためのループやポケットはない。
- 出入口の準L字型ファスナーにより軽量化している。
- エスフレッチャーは透湿性が高めである。
感想
- 1984年初登場
ドーム型シェルターと言うと、普通のドーム型テントの素材や機能を切り詰める発想の製品(↘️)が多いです。一方、ライズ1はアライテントが「自立式ツェルト」という発想からドーム型シェルターに発展させた製品(↗️)です。最初に発売されたのは1984年。メーカーが紹介ページに掲げる「世界で最も軽い自立式シェルター」という称号は後発製品に奪い取られた格好ですが、いまだに比較検討の対象として最新の製品たちと肩を並べてエントリーするのがすごい。 - 下部ベンチレーターがいろいろ使える
岩稜帯など不安定な場所に設営した際にセルフビレイ(自己確保)用のロープを通すことができます。寝そべったまま外の様子を見ることができます。雪山では水作り用の雪を取り込むことができます。寝静まったテント場でファスナーを開閉する音を立てずに、カップのすすぎ水などを外に捨てることができます。 - 底部のL字型ファスナーがいろいろ使える
雪山で土間を作って、アイゼンの着脱ができます。内部に侵入した雪や土を簡単に掃き出すことができます。雨天時の浸水が気になるところですが、すべてのファスナー部分は地面より高い位置にあり、フラップがおおいかぶさっています。 - 出入口の準L字型ファスナーは軽量化と使い勝手を両立している
ダンロップ(プロモンテ)社のテントや、古くはニッピンのメスナー型テントでは長辺の出入口がL字型ファスナーになっています。短辺についているのは珍しい。標準的な逆U字型ファスナーより(たぶん)軽量で、全開したパネルが地面に落ちて汚れたりしません。その代わり、屈曲部があるためワンアクションでは開閉できません。
詳細は当ブログの別記事をご参照ください。
2021年シーズンにポールが軽量化されて、ライズ1が880g、ライズ2が990gとなりました。単独行でも居住空間を広めに確保したい人にはライズ2がおすすめです。
「ライズ2」には、底部のL字型ファスナーはありません。
参考リンク
- 当ブログ – 生きた伝説、アライテントのライズ1
- Raiz 1 plus – ハイカーズデポ
「ゴアテックスやeVentと同様のフッ素樹脂膜ePTFEを使った2レイヤーナイロン素材を採用し、大幅に透湿性能をアップ」した特別生産品についての記事です。完売につき終了したのが残念です。 - 「自立するツェルト」に潜むテントメーカーのDNA – トレイルズ
ライズ1のみならず、アライテントについての読み応えのある記事です。 - サカイオーベックス株式会社「エスフレッチャーSFRETCHER」
- 山と渓谷2019年1月号 「組織から個人へ テントのニーズも変化」(p.62)
アライテント創業社長の福永克夫さんが発売時期について言及されています。
ヘリテイジ / クロスオーバードーム <2G>
サイズ | 間口210×奥行130×高さ110cm |
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重量 | 690g(本体、ポール、スタッフバッグ込み) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:1,230㎜/㎠ 透湿度:約15,000g/㎡/24hr(第一世代は8,000g/㎡/24h) ※透湿性は約1.9倍になったとされている。 |
特徴
- 2020年4月初登場
- 軽量化を優先した生地(本体、底部とも10デニール)
- 出入口の逆L字型ファスナーが長辺に付いている。
- 内部にはモノを吊り下げるためのループやポケットはない。
- 出入口・ベンチレーターともモスキートネットが付いていない。ベンチレーター用のモスキートネットは別売で用意されている。
感想
標準的なドーム型テントの居住性の高さ、設営のしやすさを維持しつつ軽量化をはかった製品です。ライズ1のような特筆すべきギミックはありません。
底部の生地が薄いので、小石混じり地面の上で引きずったり、体重を強くかけたりすると、穴があくおそれがあります。別途フットプリントの利用を強く推奨します。
別モデル
参考リンク
- 山と渓谷2018年6月号(p.128)
特集「テント泊装備のスタンダードとは」のなかで「自立式シェルター」として紹介されています。“厳格な分類の定義はないが、シングルウォールで生地の透湿性が低く、簡易的なものがシェルターと呼ばれることが多い。”
ヘリテイジ / エマージェンシー ドーム <2G>
サイズ | 間口100×奥行210×高さ105cm |
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重量 | 620g(本体、ポール、スタッフバッグ込み) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:1,230㎜/㎠ 透湿度:約15,000g/㎡/24hr(第一世代は8,000g/㎡/24h) ※透湿性は約1.9倍になったとされている。 |
特徴
- 2020年シーズン、生地を薄くして40g軽量化した。(15デニール→10デニール)
- 縫製ラインのシーリングは行っていない。
- 出入口の逆L字型ファスナーが長辺に付いている(縦ファスナー、横スナップボタン)。
- 内部にはモノを吊り下げるためのループやポケットはない。
- 出入口・ベンチレーターともモスキートネットが付いていない。
- ベンチレーターは短辺に2つ付いており、どちらも頭を出せるくらい大きい。
- 底部をスナップボタンで開くことができる。
感想
- ヘリテイジのドーム型シェルターのなかで最古参
ツェルトからクロスオーバードームへと進化する過程の中間に位置する製品です。 - 底割れ式のデメリット
上部はシームシーリングされておらず、しかも底割れ式なので雨天時にテント代わりに使うのには向いていません。むしろ雨の心配がない雪山テント泊に向いています。 - 底割れ式のメリット
ツェルトに近い使い方ができます。雪山の縦走なら、夜はテントとして使用し、昼間は休憩時にツェルトとして引っかぶれば一石二鳥です。無雪期には本体だけをツェルト代わりに携行するという手があります。 - 出入口の一部がスナップボタンになっているのは面倒くさい
軽量化にたいして貢献しているとも思えません。ここをファスナーにすれば売れ行きが伸びるのではないでしょうか。
参考リンク
モンベル / U.L.ドームシェルター 1型
サイズ | 間口210×奥行90×高さ95cm |
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重量 | 775g(本体、ポール、スタッフバッグ込み) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:600㎜/㎠ 透湿度:不明 |
特徴
- 2005年にODBOXがモンベルと共同開発
- 軽量化と耐久性のバランスを考慮している。(本体15デニール、底部30デニール)
- 出入口の逆U字型ファスナーが長辺についている。
- 内部にはモノを吊り下げるためのループやポケットはない。
- 出入口側と奥側に2箇所、ベンチレーションのメッシュになっている。閉じることはできない。
- インナーポール式。片側を外から挿入する。
感想
- 生地に透湿性がない
本体生地の耐水圧は600㎜/㎠と低めです。そのわりに透湿性がなく、常時開放のベンチレーションで換気します。ひさしがあるので、真上からの雨は降り込みにくいものの、横風が吹くと降り込みやすい。通気性のある生地と、閉じることのできるベンチレーションを備える方向に進化してほしいところです。 - インナーポール式はアウターポール式より面倒くさい
インナーポール式は最小のポールの長さで最大の居住空間を確保できるので、軽量化に貢献します。悪天時に内側から設営できるメリットがあると言われますが、ポールの張力はかなり強いので、内側でポールを連結して四隅に固定するのは大変です。外でさっとポールを連結して設営したほうが全体の労力は少ないでしょう。そのせいかどうかわかりませんが、2018年モデルで片側を外から挿入するように仕様変更されました。天井にループの類はありませんが、ポールが剥き出しなので、細引き等をわたして物をぶら下げることが可能です。
ひとまわり大きい「モンベルU.L.ドームシェルター 2型」(間口210×奥行130×高さ95cm)は重量860gです。
居住空間が広い以外は「1型」と同じスペックと特徴をもっています。
衣類や寝袋が内壁に接触しにくいため、結露しやすいデメリットが軽減されます。重量の差は85gなので、よほどミニマリズムを極めたい人以外には「2型」がおすすめです。
参考リンク
オクトス / シングルウォールテント
サイズ | 間口100×奥行209×高さ95cm |
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重量 | 972g(本体、ポール、リペアポール、スタッフバッグ込み) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:1,000㎜/㎠ 透湿度:8,000g/㎡/24hr |
特徴
- 軽量化と耐久性のバランスを考慮している。(本体15デニール、底部40デニール)
- 出入口の逆U字型ファスナーが短辺についている。
- 内部にはモノを吊り下げるためのループやポケットはない。
- 出入口側と奥側に2箇所、ベンチレーションのメッシュになっている。閉じることはできない。
- インナーポール式。
感想
モンベルの「U.L.ドームシェルター1型」に酷似しています。安易な模倣かと思いきや、耐久性と透湿性を高めたダークホース的な製品です。
主な相違点は次の通りです。
- やや広い。(短辺90cm⇒100cm)
- 出入口が短辺に付いている。
- 底部の生地が厚い。(30デニール⇒40デニール)
- 本体生地に透湿性がある。(なし⇒8,000g/㎡/24hr)
- ポール径がわずかに太い(8.5mm⇒8.8mm)
- ポール末端の「球」が大きい。
- 四隅をゴムシートで補強してある。
- 張り綱(別売)の取り付け位置がやけに高い。
- 重量が増えている。(775g⇒972g)
- やや安価である。(36,000+税⇒34,560円)
モンベルの「U.L.ドームシェルター1型」でいちばん不満な「本体生地に透湿性がない」弱点を解消しています。ベンチレーションを閉じることができればなお良かった。生地の厚さやポール径を見るかぎり、耐久性も上回ると期待できます。重量は増えています。
ひとまわり大きい「ULシングルウォールテント2人用」(間口118×奥行209×高さ105cm)は重量1,077gです。
居住空間が広い以外は「1人用」と同じスペックと特徴をもっています。
衣類や寝袋が内壁に接触しにくいため、結露しやすいデメリットが軽減されます。重量の差は105gなので、よほどミニマリズムを極めたい人以外には「2型」がおすすめです。
参考リンク
LOCUS GEAR / Djedi DCF-eVent Dome【生産終了】
サイズ | 間口130×奥行230×高さ105cm |
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重量 | 870g(本体+フレーム) / 970g(メッシュドアパネル付き) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:15,000㎜/㎠ 透湿度:50,000g/㎡/24hr(DCF-eVent) |
特徴
- ダイニーマ繊維の不織布にeVentのメンブレン(膜)をラミネート。
- ファスナー周り以外には縫い目がない。
- インナーポール式。
- 長辺が230cmある。
感想
ウルトラライト界隈で有名なガレージメーカー(と言っては失礼か)による少量生産品。X-TREK(ゴアテックス)製のテントが市場から消えた現在、ゴアテックスと同じePTFE素材であるeVent(イーベント)に期待したいところです。
「DCF」とは「ダイニーマ・コンポジット・ファブリックス」の略で、ダイニーマを使った生地のことです。
天頂部の出入口側は庇状で、その下がベンチレーション用のメッシュとなっています。出入口を風下に向ければ雨や雪が吹き込みにくい。庇を支える突っ張り棒はベルクロで立てたり倒したりできます。
長辺が230cmと長いため、寝袋の頭や足元が内壁と接触しにくいです。
参考リンク
- Djedi DCF-eVent Dome – LOCUS GEAR
- PEAKS 2018年8月号「野外道具探訪記 第98回 ローカスギア」(p.081)
- Djedi DCF-eVent Setup – Youtube動画(公式)
- Tent Tech: Light, Tough, & Waterproof With Dyneema Fabric
1.0kg~1.5kg
ヘリテイジ / クエスト 1
サイズ | 間口210×奥行100×高さ105cm |
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重量 | 1,340g(付属ペグは除く) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:20,000mm 透湿度:10,000g/㎡/24h |
特徴
- 2023年7月に初登場。
- ポール受けのグロメットが3段ある。
- エスパース伝統の長辺に付いた円形型の出入口。冬季には別売の吹き流し式の入り口に付け替え可能。
- 出入口・ベンチレーターともモスキートネットが付いている。
感想
ようやくeVentを採用した国産シングルウォールが登場しました。XTREK採用の「ソロ-X」亡きあと、同じePTFE系メンブレンであるeVent(イーベント)に期待を寄せていました。
本体パネルが30デニール、グランドシートが40デニール、ポール径が9mmと耐久性を重視した設計で、居住空間のわりには重めです。
出入口のO字型ファスナーは重量がかさむ気がしますが、跳ね上げ式に開閉すれば、地面に垂れて汚れることがなく、雨や雪の吹込みを軽減できるメリットがあります。冬季はパネルを吹き流し(別売)と交換することにより、ファスナーの凍結を回避できます。冬季使用(特に連泊)がメインなら有力な選択肢となります。
ひとまわり大きい「クエスト 2」(間口210×奥行120×高さ115cm)は重量1,480gです。
プロモンテ / VB-21
サイズ | 間口205×奥行120×高さ100cm |
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重量 | 1,140g / 1,280g(総重量) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:4,500mm 透湿度:25,000g/㎡/24h(B-1法) ※ 高通気エントラント(従来の50倍の通気性) |
特徴
- 2019年春にVB-20が登場。2020年4月、ドアパネル下部を庇状に突き出すためのループが付いてVB-21となった。
- 軽量化と耐久性のバランスをとった生地の配置(本体20Dナイロン+メンブレン+7Dポリエステルトリコット、底部30デニール)
- 出入口のL字型ファスナーが長辺に付いている。
- 出入口・ベンチレーターともモスキートネットが付いている。
感想
X-TREK素材のテントが廃番になる中、新世代の防水透湿(通気)素材として「高通気エントラント」が登場。2018年にこの素材を使ったトレランジャケットの試作品が限定販売されるなど注目されていました。2019年春夏から多くのブランドで使われる見込みとされていましたが、素材名を明記した市販品としてはテント分野が先行した恰好です。
軽さを重視しつつ、耐久性とのバランスをはかった手堅いデザインとなっています。雨天時の前室を確保したければ、ダブルウォールシリーズのフライシートを流用できます。
耐風性能についてやや気になる点があります。
- 張り綱用のテープ(ループ)がテント面と垂直に縫い付けられている。
地面方向に引っ張られたとき、片端から引き裂く力が働きやすい。ショッピングサイトのカタログ写真では長い黒色のテープですが、実物は短い灰色のテープとなっています(プロトタイプと市販品のちがいか)。 - フック縫い付け部の強度は未知数である。
ダブルウォールシリーズではポールのラインにメッシュ状の生地が立ち上がり負荷を分散する仕組みになっています。VBシリーズではそれがありません。表側・裏側ともに平坦(内側はシームテープで目止めされている)で、補強の具合は不明です。
ひとまわり小さい「VB-10」(間口205×奥行90×高さ100cm)は重量1,050gです。
2021年シーズンに登場した、前室のみダブルウォールとしたVB-22Zにも注目です。
参考リンク
- 山と渓谷 2019年05月号「防水・透湿・通気に優れたシングルウォールテントがデビュー」(p.110)
- PEAKS 2018年4月号「エントラント高通気タイプをホーボージュンが徹底検証」(p.190)
- 「【山岳テントの話】プロモンテのVBシリーズと…。」 – 秀山荘川越店
- 「19SS、来年の新作・気になる物(その11)」 – DENARI BLOG
- 「プロモンテから注目のテントが入荷です! 」 – 好日山荘名古屋駅前店
PUROMONTE×oxtos / 超軽量 シングルウォールアルパインテント
サイズ | 間口205×奥行120×高さ100cm |
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重量 | 1,350g(総重量) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:20,000mm 透湿度:20,000g/㎡/24h(B-1法) |
2023年8月登場。PUROMONTEの「VBシリーズ(前室付)」をベースとして、耐久性や居住性を向上しつつ、前室パネルを薄くして軽量化をはかった意欲作です。
先行レビューするYoutube動画はこちら。
アライテント / Xーライズ1【生産終了】
サイズ | 間口100×奥行205×高さ100cm |
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重量 | 1,400g(本体+フレーム) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:推定20,000㎜/㎠ 透湿度:推定13,500g/㎡/24hr(ヘリテイジのX-TREK使用テントを参照) |
特徴
- X-TREKの採用により耐水性と透湿性が高い。
- 出入口のD字型ファスナーが短辺についている。
- 出入口、ベンチレーターともにモスキートネットが付いている。
- 内部にはモノを吊り下げるためのループがあるが目止め処理が必要である。
- ポール受けのグロメットが2段になっている。
感想
X-TREKを採用したオーソドックスなシングルウォールテントです。
「D字型ファスナー」とは勝手に付けた名称です。一見、よくある逆U字型ですが、底辺を横に開放できます。逆U字型だと、パネルを内側に垂らせば床が濡れ、外側に垂らせば泥で汚れるというジレンマに陥りますが、D字型なら横向きに開いて、外壁にもたれさせることができます。悪天の最中には、最小限だけ開いて跳ね上げれば、雨や雪の侵入を軽減できます。
ポール受けの2段グロメットは「エアライズ」シリーズでも採用されている同社の十八番。低温時、テント生地が縮んでいるときは外側のグロメットを利用します。
参考リンク
ヘリテイジ / エスパース・マキシム
サイズ | 間口 210×奥行き 110×室内高 110cm |
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重量 | 1,200g(本体+フレーム) |
防水性と透湿性 | パネル:30dn ナイロンリップストップ耐久ナノ撥水加工 グランドシート:40dn ナイロンタフタ PU コート耐久撥水加工 |
特徴
- エスパースの名作「マキシムナノ」が「Maxim」にリニューアルして登場!
- 無雪季用モスキートネット付出入口が標準装備。
- 降雪季用に吹き流し式出入口を取り付け可能(他モデルと共通オプション)。
- 冬期用インナーシート(俗にいう内張り)が別売で用意されている。
- 降雨季用にレインフライが別売で用意されている。
感想
他のテントが「冬季の利用も考慮されている」のに対し、このテントはどちらかというと「冬季に寄せている」です。
エスパースの名作「マキシムナノ」をリニューアルというキャッチフレーズが前面に出ていますが、私見では「孤高の冬季単独用」として異彩をはなった「エスパース・ソロ ウインター」の流れも汲んでいます。
本体生地に防水透湿素材ではなく、耐久ナノ撥水加工した30Dナイロンリップストップを使用し、防水性より透湿性を重視しています。
厳冬期に連泊すると防水透湿素材のラミネート層に水分が溜まって凍結する場合があると言われています。シンプルな一枚生地のほうがそうしたトラブルを回避しやすいです。
内張は冬季の保温性を高め、結露による濡れを軽減します。この内張は取り外すことができ、別売のレインフライを装着すれば、冬季以外にも利用可能とされています。
参考リンク
ブラックダイヤモンド / ファーストライト2P
サイズ | 間口122×奥行208×高さ106cm |
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重量 | 1,162g(本体+フレーム) 1,445g(本体+フレーム+ペグ+張り綱+スタッフバッグ) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:800㎜/㎠ 透湿度:不明(ナノシールド) |
特徴
- 出入口の逆U字型ファスナーが短辺についている。
- 内部には長辺2箇所にポケットがある。
- 出入口、ベンチレーターともにモスキートネットが付いている。奥側のベンチレーターをファスナーで閉じることができる。
- 縫製ラインのシーリングは行っていない。(シーリング剤が付属)
- 天井が高い。(107cm)
- インナーポール式。
感想
海外製品らしく耐水性より通気性を優先しています。雨の多い日本向けにシーリング剤が付属しています(海外のサイトを見るとシーリング剤の記載は見当たらない)。
ナノシールドについて、カタログにはこう記載されています。
シングルウォールテントのキャノピー素材で、極めて通気性に優れ、超撥水性を併せ持ちます。ポリエステル繊維にシリコンナノセルコーティングを施し、耐水圧は800mm。ファブリック内側のマイクロポーラスコーティングはMVTR(気化水分透過率)4,000の通気性を誇ります。
MVTRという独自の指標なので、国内メーカーの防水透湿コーティングとは比較しにくいですが、レビュー記事を読むかぎりでは透湿性は高めです。
古いモデルではエピック素材を使用し、より透湿性が高かったと言われています。「ライトハウス、ファーストライト 取り扱い上の注意」に“エピックは繊維の1本1本を撥水ポリマーでコーティングし、更に織り込まれた繊維の隙間にも撥水ポリマーを埋め込んだ生地で、優れた撥水透湿性があります。”と記載されています。
インナーポール式で高さ107cm。モンベルのU.L.ドームシェルターやオクトスのシングルウォールテントの95cmと比較すると、かなり天井が高いです。
参考リンク
- ファーストライト2P: ブラックダイヤモンド | ロストアローオンラインストア
- ライトハウス、ファーストライト 取り扱い上の注意
- BlackDiamond Firstlight – 毒を放出!
- ブラックダイヤモンド ハイライトテント 実践投入! – ソロもん
モンベル / マイティドーム 1型
サイズ | 間口90×奥行210×高さ105cm |
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重量 | 1,080g(本体+フレーム) 1,250g(本体+フレーム+ペグ+張り綱+スタッフバッグ) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:20,000mm 透湿度:不明(ブリーズドライテック™プラス) |
特徴
- ブリーズドライテック プラスの採用により耐水性と透湿性が高い。
- 出入口の逆U字型ファスナーが短辺についている。
- 出入口、ベンチレーターともにモスキートネットが付いている。
- 内部にはモノを吊り下げるためのループやポケットがある。
- ポール末端に滑り止めグリップが付いている。
- ポール受けのグロメットが2段になっている。
感想
ブリーズドライテック プラスを採用したオーソドックスなシングルウォールテントです。ブリーズドライテックはポリウレタン系の素材ですが、「プラス」はePTFE(ゴアテックスと同系)とされています。
古いモデルは同社の「U.L.ドームシェルター」のようにインナーポール式で常時開放のベンチレーターが付いていたり、生地にブリーズドライテックを使用したりと試行錯誤が激しい製品でした。2015年モデルからX-TREKを採用したオーソドックスなデザインになりました。2019年にブリーズドライテック プラスに切り替わり、さらに軽量化されました。
ポール末端の滑り止めグリップ、ポール受けの2段グロメットによって、スリーブ式の設営しにくさを軽減する工夫が光ります。旧モデルはポールスリーブの片側が閉じていましたが、新モデルでは四隅とも開放型になりました。
ひとまわり大きい「マイティドーム 2型」(間口130×奥行210×高さ105cm)は重量1,240gです。
X-TREKマイティドームの情報
2018年まで販売されていた「X-TREKマイティドーム」はX-TREK素材の廃止にともない廃番となりました。参考のために、過去の商品リンクを掲載しておきます。1型の重量は1,190g(本体+フレーム)または1,340g(本体+フレーム+ペグ+張り綱+スタッフバッグ)とされていました。
参考リンク
- マイティドーム 1型 – モンベル
- マイティドーム 2型 – モンベル
- 【テント】モンベル・マイティドーム1型
2008年頃、ブリーズドライテック時代の製品をレビューされています。 - X-Trek マイティドーム2型 – ちぇり小屋
2013年頃のモデルをレビューされています。
MSR / アドバンスプロ2
サイズ | 間口107×奥行208×高さ112cm |
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重量 | 1,320g(本体+フレーム) 1,460g(総重量) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:1,000㎜/㎠ 透湿度:不明 |
特徴
- ポールスリーブと吊り下げ式のハイブリッド方式。
- 出入口の逆U字型ファスナーが短辺についている。
- ガイコードポイントが12箇所に付いている。
- 天頂部にベンチレーション用のメッシュが付いている。
感想
ポールスリーブと吊り下げ式のハイブリッド方式が斬新です。設営者が踏み台から動かずに組み立てる動画が公開されています。岩稜や雪稜など足場が狭い場所でも設営しやすいメリットが強調されています。
ここでちょっと、ポールスリーブ(片側袋とじ)式と吊り下げ式のメリットとデメリットを振り返ってみましょう。
ポールスリーブ式だと設営しにくい理由は大まかに2つあります。
- 片側からポールを押し込むため、設営者の後方に2メートル以上の余分な空間を必要とする。
- ポールを奥に押し込むにしたがってスリーブの弛みが累積し、ポールエンドをグロメットに嵌めるのに苦労する。
吊り下げ式は簡便ですが、フックを多用するぶん重量がかさみますし、設営者はテントの周囲をぐるりと回る必要があります。フックの一点に負荷が集中するため、耐風性・耐久性に一抹の不安が残ります。
アドバンスプロ2なら、ポールスリーブの長さは半分なので押し込みやすく、弛みが生じにくく、フックの数は手前側の半分ですみます。その結果、踏み台から動かずに組み立てるデモンストレーションが可能となるわけです。他のテントでもできなくはないのでしょうが、ハイブリッド方式のほうがやりやすいのは間違いありません。ポールスリーブ側が風上になるので耐風性・耐久性の点でも好都合です。
「ガイコードポイント」はポール沿いに上下2段あり、耐風対策しやすくなっています。出入口以外の3面には居住空間を広げるためのポイントが付いています。天頂部のポイントも合わせて12箇所となります。
天頂部のベンチレーションはファスナー付きの三角形のフラップで開閉可能です。
テント本体の素材には透湿性があるとされていますが、X-TREK(ゴアテックス)やeVentと比較すると限定的です。日本のメーカーがeVent素材を使用してこのハイブリッド方式のテントを製造してくれないものでしょうか。
参考リンク
- MSR アドバンスプロ2の特徴 – Youtube動画(公式)
- Tente MSR ADVANCE PRO 2 Bivouac – Youtube動画
雪山ビバークに使用したレポート。天頂部のベンチレーションのフラップや内壁の結露具合を見ることができます。 - MSR Advance Pro 2 Ultralight – Alpinist(英語レビュー)
スキーツアーで使用したレビューです。
Rab / ラトク サミット
サイズ | 間口120×奥行220×高さ80cm |
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重量 | 1,450g(本体+フレーム) |
防水性と透湿性 | 耐水圧:不明 透湿度:不明(eVent) |
価格 | £570.00 = 75,655.82円(2020/4/30時点) |
特徴
- インナーポール式。
- 天上が低い。
感想
X-TREK(ゴアテックス)製のテントが市場から消えた現在、ゴアテックスと同じePTFE素材であるeVent(イーベント)に期待したい。
eVentは英国のBHA社が開発し、同じ英国のRab社がeVent製のテントを製造しています。
インナーポール式だと、極限状況に追い込まれたとき(たとえば猛烈な吹雪に叩かれたとき)、ひとまずツェルトをかぶるようにテントのなかに潜り込み、人間自身が重しとなって吹き飛ばされないようにしながら設営できるのが強みです。
ひとまわり大きい「ラトク マウンテン 2」(間口130×奥行225×高さ110cm)は重量1,850gです。
参考リンク
- Latok Summit – Rab
- Latok Mountain 2 – Rab
- Zeltaufbau im Sturm – Rab Summit Superlite Bivi mit Fliegfix Carbongestänge – Youtube動画
強風下での設営デモンストレーション。 - First wild camp in Rab Latok Summit Bivi Tent – Youtube動画
- またやっちまった。新幕♪ – 喰ウ寝ルキャンプ
まとめ
ダブルウォールについての記事はこちらをご参照ください。
ダブルウォールでも1kgを切る製品については別途、こちらの記事で取り上げました。
簡易テントとしてツェルトを検討するなら、こちらの記事をご参照ください。
コメント
kamiyama様、情報発信ありがとうございます。
ドーム型シェルターを検討中ですので、参考にさせてもらいます。
クロスオーバードーム f のスペックは 200×75×H95-600gです。
別の製品のデータが記載されているようです。
MURRAY様、コメントありがとうございます。修正いたしました。H95が内寸表記だという点も強調しました。記事にするために細部を調べるうちにいろいろ見えてきます。ちょこちょこと追記していくつもりです。
去年から4シーズンのテントを考えていて、いろいろ参考にさせてもらっています。
X-Trekの供給が停止して”X”が品名に入ったテントがついに手に入らなくなりましたね。今年のはじめ頃にエスパースのマキシムX買おうと決心してカモシカに行ったんですが、残念ながら完全に在庫ないと言われてしまいました・・・
最近プロモンテからVBシリーズが出て、好日山荘も取扱いを始めたようです。東レのエントラントというファブリックを使っていて、なかなか良さげ。もし何か情報おもちでしたら、追記していただければと思います。
http://www.kojitusanso.com/shop/g/g4582146365206_b10701010/
bb62様、コメントありがとうございます。
私もプロモンテのVBシリーズに注目しております。
https://twitter.com/kamiyama_online/status/1126465231624892416
記事を更新しました。プロモンテの「VB-20」とヘリテイジの「クロスオーバードーム2」を追加しております。
kamiyamaさま
私もkamiyamaさま同様、山道具関係のブログをやってまして、
私とは違う視点からの商品評価を勉強させていただいてます。
軽量テントかツェルトかジャンルは迷いますが、今年6月に発売された、
『Juza Field GearのLight & Easy Shelter Wide』
は475gと軽量で、ダークホース的な商品と思っています。
目目連 様、コメントありがとうございます。
『Juza Field GearのLight & Easy Shelter Wide』注目しております。
奥側の吊り下げ式をどう解決するのか位置付けが難しい気がして、
「軽量テント」の記事でも取り上げるのを見送りました。
よく見ると、ポール2本が付属しているのですね。
計画的露営を前提としたテントとして考えると、密閉性の高さに優位性がありますね。
ほぼ「ポールが付属しない旧ムーンライト1型のインナー」という感じもいたします。
ブログを拝見しました。もし購入されたら、ぜひ詳細レビューをお願いいたします。
Kamiyama様
今さらですが、ほんとうに(ある程度快適性のある)シングルウォールは無くなりましたね。
今年のGWは涸沢でテン泊しましたが見たところ、自分を含めて3〜5 / 100張りでした。以前にあれほど見かけたゴアライトも何処かへです。
私はゴアライズでしたが4年ほど前に予備的にxライズに入れ替えました。
テントをアライに修理に出そうと思って電話で相談したら、長いこと考えたら修理するより新品の方が良いよ、今なら在庫がまだあるからと言われ購入しました。
その時に製造中止をしりました。
ご存知だと思いますが、何でもゴアテックスジャパンの岡山工場が閉鎖になるからとのこと。
新たなxライズは前のゴアライズより丁寧に使っています。
但し、ゴアライズより内側のレイヤー能登街からか結露が多いです。
今思えばゴアライズの後釜はメスナーにしようかと悩んでいるうちに無くなってしまい、兆候があったようですね。
若い頃に比べたら雪山、冬山の回数は少なくなりましたが、シングルウォールの(悪天候時でも)直ぐに張れるのに慣れると困りますね。
もんもん様、コメントありがとうございます。
私は30年くらい前のゴアライトをもってます! ゴアライトもG-LIGHTへバージョンアップして軽量化するにつれて、結露しやすくなったと聞きます。軽量化のために生地(特に裏地)を薄くすると、吸湿拡散の余裕が減り、内外の温度勾配が大きくなり、その結果結露しやすくなると解釈しています。
ゴアテックスにも新しい風が吹く(メンブレン素材がポリエチレン主体に切り替わり、薄くなる)ようですので、シングルウォールテントでの採用を首を長くして待ちたいです。