ゴアテックスのテントが市場から消えた

噂の発端

ゴアテックスのテントが市場から消えるらしいと初めて知ったのは、山と渓谷 2017年 11月号の連載「山岳装備大全 第20回 シェルター」(p.128)を読んだときでした。

北米ではゴアテックスファブリックスのテントやシェルターは販売されていない。(中略)カナダでは、この難燃性基準を連邦法として定めている。この基準は、サーカステントで起こった大火災事故を基に定められたものであり、山岳用テントに該当するものではない。しかし、この基準を理由にテントメーカー各社はゴアテックスファブリックスの使用を自粛している。(中略)第一世代ゴアテックスは、2009年から「Xトレック」として日本限定で流通してきたが、今季をもって製造が中止されるというのだ。この素材を使ったシェルターに興味があるのなら、早めに入手しておくことをおすすめしたい。

その他、バックカントリー穂高さんが2009年6月の「ほたか日記」で言及されています。

正式な生産終了宣言

山と溪谷 2018年 7月号で、ICI石井スポーツの広告ページp.24をG-LIGHTテントが飾り、「30年以上愛されたロングセラーモデルが生産終了」と宣言されました。kindleの試し読みで見ることができます。メーカーが正式に告知したのは初めてではないでしょうか。

アライテントの「X-ライズ」や、エスパースの「ソロ-X」「デュオ-X」といった製品も生産終了となりました。

今後はどうなるのか

ポリウレタンコート生地で我慢

ICI石井スポーツの店員さんと「今後はどうなるんですかねぇ」と話したら、アライテント(テント製品のOEM元)がライズ1などで採用しているエスフレッチャーあたりを使うのかなぁ、なんて漏らされていました。あ、これ、完全に立ち話レベルの話ですよ。

エスフレッチャーという素材のスペックは、サカイオーベックス株式会社の「エスフレッチャーSFRETCHER」によれば、

耐水圧:1,000㎜/㎠
透湿度:7,000g/㎡/24hr

です。

謎のePTFE素材テント

2019年2月、モンベルのマイティドームがモデルチェンジしました。

素材をX-TREKから「ブリーズドライテック プラス」に変更。この素材は2018 Gear Catalogで登場し、シュラフカバーなど一部の製品でひっそりと採用されていました。従来の「ブリーズドライテック」はポリウレタン系の素材ですが、「ブリーズドライテック プラス」はePTFEというゴアテックスと同じ系統の素材とされています。

高通気エントラントという選択肢

2019年春、プロモンテが高通気エントラントを採用した吊り下げ式テントを売り出しました。古くて新しいエントラント素材。昔はゴム引きと変わりませんでしたが、最新素材はメンブレンを通して水の中に泡をボコボコ吹き出すほどの通気性を備えています。(☞「通気レベルの透湿性」)

クロスオーバードームが第二世代に進化

ゴアテックス素材ではありませんが、ヘリテイジのクロスオーバードームは防水透湿性をそなえたポリウレタンコート生地を採用しています。第二世代に進化して、防水性と透湿性の両方が強化され、通気性まで備えるようになりました。

名作テント「G-LIGHT」復刻!

2020年7月、石井スポーツが「G-LIGHT」が数量限定で復刻しました。

本体生地にゴアテックスインフィニウムを採用し、防水透湿性とともに通気性を備え、結露を最小限に抑えるとされています。同ページには【スタッフによる使用レポート】が掲載されています。

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石井スポーツ所属の天野和明さんはご自身のブログで歴代のゴアテックステントについて使用体験を書かれています。(☞ テントについて

2021年6月現在、復刻版は販売終了となっています。

XライズからEライズへ

 

G-LIGHTの製造元はアライテントと言われています。アライテントの自社製品「Xライズ」(X-TREK採用)も生産終了となっていましたが、2021年夏に「Eライズ」(高通気エントラント採用)を数量限定で試験販売しました。

eVentを採用した国産シングルウォール

2023年7月登場。ゴアテックスと同じePTFE素材「eVent」を採用しています。「Xライズ」の正当な後継者です。

ヘリテイジ(カモシカスポーツ)はすでにシュラフカバーでeVentを採用していました。

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テント購入を検討中の方はこちらの記事をどうぞ。

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コメント

  1. crossroader より:

    こんばんは。
    Xトレックファブリックがなくなってしまうとは残念です。ほととんど結露せず凍結もしないので、私の冬山の必需品です。昔のゴアテントは結露してバリバリに凍りつきました。エスフレッチャーも盛大に結露して壁が氷だらけになるようなので、代替品にはならないと思います。
    http://mukuri03.naturum.ne.jp/e2630955.html
    2レイヤーならば、氷を叩き落として落ちた氷が溶けなければ大きな支障はないでしょう。しかし通気性がなさそうなので、ベンチレーターを開けっぱなしにしなければならず、冬は寒いのではないでしょうか。私は冬のフォーカストビバーク用にライズ1を買いましたが、まだ使ったことがありません。

    • kamiyama kamiyama より:

      crossroader さん、コメントありがとうございます。
      ゴアライトだと内壁の霜をストーブの火であぶるとあらかた蒸散しますが、エスフレッチャーでその手がきくかどうか気になります。モンベルのドームシェルター(透湿性がない)だと融けて滴り落ちてくるので逆効果でした。透湿性能が劣る場合、幕営中は放置し、撤収間際に霜をこそぎ落とすしかなさそうだと感じました。

  2. […] らG-LIGHT (X)が生産中止になりました。 (追記:2019-01-01) ゴアテックス社からゴアテックス素材”X-trek”の供給が中止されたそうです。 参照:ゴアテックスのテントが市場から消える […]

  3. Hiroyuki_pad より:

    モンベルのブリーズドライテック™プラスですが、これってeVentじゃないでしょうか
    たしかeVentはライセンス条項でメーカー側で好きな名前を付けて良いとなっていたはずです
    耐水圧2万mmで通気性もある素材って簡単に開発できるものじゃないですし

    • kamiyama kamiyama より:

      Hiroyuki_padさん、コメントありがとうございます。eVentは通気性を確保しているので、テントに適している。すなわち第一世代のゴアテックス≒Xトレック相当ということになりますよね。他メーカーの動向も注視したいところです。