生きた伝説、アライテントのライズ1

1984年に登場して以来のロングセラー。山岳雑誌でテントやシェルターの特集があると必ずと言っていいほどいっちょ噛みしてくる生きた伝説です。最新鋭の超軽量テントと並んでも見劣りせず、耐久性を優先するならこちらを選びたくなる質実剛健な設計。アルパインクライミング、沢登り、雪山縦走からウルトラライトハイキングまで活躍するオールマイティな製品です。

2021年にフレームが軽量化(390g→290g)。この機会に購入に踏み切りました。ひと回り大きいライズ2と迷いましたが、ライズ1特有のギミックを試したいという誘惑に勝てませんでした。

開封の儀

同梱物

透明なポリ袋にテント本体、フレーム、取扱説明書が同梱されていました。

価格タグ

取扱説明書

セット内容

設営手順、設営の注意点

オプション、アフターケア

修理、品質保証

収納袋のタグ

重量

フレームは袋込みで286g、本体は袋込みで613g。合計すると、899gです。

フレーム収納袋にはコードロックが付いていません。

収納袋の26gを除くと、873g。カタログスペックの880g(本体+フレーム)を下回っています。

フレームの詳細

フレームの仕舞寸法(一節の長さ)は約38cm。スペアスリーブが1本付属しています。

製造メーカーは、テントポール界のトップブランド、DAC社。「Featherlite NFL GREEN」と印刷されています。

ぶっつけ本番で試し張り

長い緊急事態宣言が明けた2021年10月初旬、赤岳鉱泉のテント場でデビューしました。

自宅でフレームは確認しましたが、本体は広げてみませんでした。もし致命的な初期不良があったら? まぁ、入浴も食事も提供してくれる赤岳鉱泉のそばなら何とでもなるでしょう。

立ち姿

設営方法はいたってシンプル。2本のフレームをポーリスリーブに通して立ち上げるだけです。

風はほとんどありませんでしたが、しっかり張り綱をとりました。

ドアパネルの下部にモデル名を表記したタグが付いています。

張り綱

標準で付属

張り綱、自在ともオレンジ色です。

ペグダウンした様子

四方向の張り綱、四隅をペグダウンしました。

無雪期にはMSRのエレガントな「フック ステイク」を愛用しています。

お洒落なテントペグ、MSR フック ステイク
無雪期のテントペグとして、MSRの「Hook Tent Stake」を愛用しています。 MSRのペグといえば「グラウンドホグ ステイク」「ダート ステイク」「カーボンコア ステイク」「サイクロン ステイク」「ニードル ステイク...

「エアライズ」シリーズではフレーム受けのアイレット(穴)は2つ付いていて、張り具合を選択できます(写真の左下)。本製品では1つだけです。ペグダウン用の輪っかはありません。テープを捩じって、直接ペグを通せば十分でしょう。

ベンチレーション

上部

下部

モスキートネットを備えています。コードロックは付いていません。

ドアパネル

ライズ1の特徴のひとつが、湾曲したL字型のドアパネルです。横開きにしてサイドパネルの上にはね上げることができます。

逆U字型のドアパネルの場合、外側に落とすと地面の泥で汚れ、内側に落とすとパネルに付いた雨露がこぼれてくるという悩ましさがあります。

ドアパネルを内側から見るとこんな感じです。

弧を描く部分のファスナーはダブルジッパー仕様。上部だけ少し開放すれば、雨や雪が降りこむことなく、より換気を促進できます。ただし、モスキートネットはないので、虫の多い場所では避けたほうがよいでしょう。

L字型の屈曲部でファスナーが二分されています。

あれ? 右下に重なった3番目のジッパーは何でしょうか。ボトムのファスナーにつながっていますね。(わざとらしい展開)

ボトムのL字型開口部

このボトムのファスナーこそ、ライズ1の最大の特徴です。

このファスナーを開放すると……。

床に三角形の土間ができます。

  • 厳しい環境(岩壁の狭い岩棚など)で、この開口部からセルフビレイをとることができます。
  • ドアパネルのファスナーが凍り付いたとき、ボトムから脱出するという選択肢が増えます。
  • テント内部に侵入した雪や泥や砂を掃き出しやすくなります。
  • 降雪中にテントを撤収する場合、土間でアイゼン装着まで済ませて完全武装してから、外に出ることができます。逆に降雪中に設営した場合、ひとまず中に転がり込んでから、全身の雪を払い落とし、アイゼンを脱ぎ、床から雪を掃き出して、快適な寝床をととのえることができます。

ファスナーは「オレンジ色のサイドパネル」と「黒いバスタブ状のボトム」の境目を走っています。5~10cm浮いた高さにあるので、地面にたまった水が隙間から侵入する心配はありません。上から降り注ぐ雨や雪に対しては外側を覆うフラップが防壁となります。「通常のテントと同等の防雨性能を有している」というのが私の見解です。ただし、L字型の屈曲部でファスナーが地面に近づくあたりは弱点になるかもしれません。

ドアパネル側のファスナーにはフラップが覆いかぶさっているので、ここから雨漏りすることはありません。

サイドパネル側も同様にフラップが覆いかぶさっています。

天井

天井にはランタンを吊るすループの類はありません。普通のテントでは床とサイドパネルの境目に小物ポケットが縫い付けられていることが多いですが、それもありません。

ドアパネルの下部に「警告」タグが付いているのみです。

床面積

奥行き

奥行き(長辺)は200cm。愛用のダウンマット(長さ163cm×幅52cm×厚さ7cm)を敷くと、こんな感じです。

EXPEDのダウンマットで極上の寝心地を味わう
ダウンマットの特徴 ダウンマットとは。ひと言で表現するなら「羽毛を詰めたエアマット」です。 EXPED社以外にダウンマットを製造販売しているメーカーがあるのかどうかは不明。日本で入手しやすいダウンマットとしてはEXPED一択です...

横幅

幅(短辺)は100cm。マットの横に必要十分な炊事スペースを確保できます。

メーカーは「テント内では、火気(ろうそく、ランタンを含む)を使用しないで下さい」と警告しています。テント内での炊事は自己責任です。

写真の左上に映り込んでいる、地面近くのベンチレーションがまたライズ1の特徴のひとつです。反対側パネル上部のベンチレーションとあいまって、換気を促進してくれます。

雪山テント泊で水を作る際、ここから新鮮な(?)雪をとりこんで、鍋に投入できます。逆に、ちょっとしたすすぎ水をここから外に捨てるなんてこともできます。寝静まったテント場でドアパネルのファスナーを開閉する音って、けっこう耳障りなんですよね。

斜めに横たわる

ライズ1は、1人用(最大2人用)と位置付けられています。正直なところ、2人だと快適とは言い難い床面積です。いまどきのテントは1人用でも長辺が210cmくらいありますが、ライズ1は200cmと切り詰められています。マットレスを対角線に斜めに配置することにしました。

斜めに寝ても、寝袋の足元が壁にくっつきがちです。足先に冷気が伝わって、寝付けませんでした。起き出してみると、シュラフカバー越しに壁が結露していました。

しばし考えたのち、床に敷き詰めている銀シートをずらし、足先にかぶせました。これが効果てきめん! わずか1~2mm厚の発泡ポリエチレンの断熱性と、アルミ面の熱反射によって、冷気を遮断することに成功しました。コロンブスの卵ですね。

昔、ずん胴のキスリングを背負って登山していた頃は、空にしたキスリングに足先を突っ込んで防寒に役立てました。いまどきのスリムなアタックザックでそれをやると、足先の拘束感が我慢しがたく、そのノウハウを実践できずにいました。今後は、少し広めの銀シートを携行することにします。重量増は大したものではありません。

透湿性は限定的

10月初旬、標高2,300メートルの赤岳鉱泉。朝方、室温は5℃くらいまで下がりました。朝起きて、ヘッドランプで照らすと、じっとりと結露した天井が目に飛び込んできました。

「撤収時に拭き取るか、ドアパネルを開放して乾かさないといけないかな」と思いながら、硫黄岳~横岳の周回に出発しました。帰着すると、すっかり乾いていました。

雪山で使うと、この結露がビッシリと霜になるようです。いずれその写真も掲載します。

オレンジ色の生地の内側は「エスフレッチャー」という若干の透湿性能をもった防水コーティングで覆われています。

フットプリント

軽量コンパクトさを追求したテント(シェルター)にフットプリントを合わせるのはお門違いかもしれませんが、ひどく荒れた地面や泥汚れから保護したいので、無雪期限定で併用することにしました。

アライテントの公式ページにライズ1用のフットプリントは見当たりません。「エアライズ/ゴアライズ / トレックライズ用アンダーシート」は長辺が205cm以上と長めです。フットプリントが床面積より大きいと、雨水がたまって浸水しやすくなります。縦横とも10cmくらい小さいものを選ぶ必要があります。

Amazonでサイズが適合しそうなサードパーティー製品を見つけました。

初の試し張りにもっていきましたが、地面が乾いた草地という快適な条件でしたので、使用しませんでした。撤収間際にライズ1の下に敷いてみました。

四隅にペグダウン用のループが付いています。それをフレーム受けの外側に回して固定するといい感じです。

やや長辺が足りず、ライズ1本体が弛んでしまいました。ショックコードか細引きのループを付け足して調整するつもりです。

まとめ

似た発想のシェルターとして、すでにモンベルの「U.L.ドームシェルター」を所有しています。空気の出入りを確保するために、メッシュの換気口を閉じることができない仕様になっていて、風が吹き荒れる雪山で内部が雪まみれになりました。

モンベルのU.L.ドームシェルターで過ごした悲惨な夜
2018年2月17日、入山 厳冬期の甲斐駒ヶ岳を目指して、黒戸尾根を登りました。 登山口の橋には雪がありません。しばらくは夏道歩きか? と思いきや、橋を渡ると、雪があらわれ、階段状の踏み跡はアイスバーン化しています...

自分が使いどころを間違えただけなのですが、もしあのとき持って行ったのがライズ1だったら、ずいぶんちがう夜になったことでしょう。

新しい装備を導入して、いざ使ってみると、「ここは今一つだな」と感じることがよくあるものです。このライズ1に関しては、唯一「透湿性はイマイチ」という弱点があるものの、そんな手のかかるところさえ愛着が湧きます。

これから色々な場所に連れていく期待感がつのるばかりです。

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