ワンダーフォーゲル部で苦楽をともにしたにもかかわらず、写真がほとんどないのが残念です。山の景色や集合写真ならたくさん撮りましたが、見すぼらしい家型テント(三角テント)を被写体として選ぶ発想はありませんでした。
上の写真はテント全体をとらえた珍しい一枚。北海道の十勝連峰、トムラウシ山に近いユウトムラウシ花園と呼ばれる場所です。2つテントがあるうち、手前が我がワンゲル、奥が交流のあったS大ワンゲルです。縦走中抜きつ抜かれつでした。
いかにも熊さんが好みそうな湿原で、テントの出入口(サブリーダーの定位置)に寝ていた私は、翌朝生きて目が覚めるか本気で心配しました。
熊よけの気休めとして、十勝岳で拾った硫黄を燃やしてテントの出入り口付近に置きました。S大のテントにおすそ分けしたところ、その異臭に悲鳴が上がりました。

白馬村営宿舎の家型テント
テントの骨組みは前後に立てるポールと張り綱です。当然ながら自立しません。ポールを支え持つ者と、ペグを打って張り綱を固定する者とが、軍隊式に分業で設営しました。一人で設営するのはかなり困難です。
出入口にポールがおっ立っているので、出入りの際にちょっとした手すり代わりになります。酔いどれた先輩がポールをつかんだままよろけると、テントが倒壊しそうになりました。

十勝岳山麓・白銀温泉の家型テント
収容可能な人数によって、4人用なら「ヨンテン」、6人用なら「ロクテン」などと呼びました。
前室はなく、サイドに張り出したフライシートの軒下に登山靴や鍋釜、食器類を適当にほったらかし。
使ったら使いっぱなしで、ろくにクリーニングした記憶がありません。濡れたまま持ち帰って、次の出発前に装備点検するときには乾いているというぐあい。ましてや防水処理のメンテナンスなどした記憶がなく、雨露を含むとズッシリ重くなる厄介な代物でした。
グランドシートは一体型ではなく、傾斜地で大雨に降られた翌朝には床一面を泥の河が流れました。

強風でポールを倒されると、本体の生地が寝袋にうえに覆いかぶさります。睡眠力が旺盛な若者たちは、目の前でバタバタする幕をうつらうつらとながめながら、掛け布団状態で寝つづけるのでありました。



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