
このテント(自立式シェルター)は思いも寄らぬ方角から登場しました。
これまでクッカーなどの火器・金物類で圧倒的な支持を得ていたエバニューが、2026年5月に満を持してテント・ツェルト市場に本格参入。ダブルウォールの「Meadow highat / carbon」と同時に発売したのが、このシングルウォールテントです。
その名は「Ledge highat / carbon」――岩棚のホテル?
山岳用テントの基本をしっかり踏まえつつ、マニアックで斬新な仕様を盛り込み、ソロ登山者向けでありながら広々とした居住空間を確保し、昨今の物価高に逆進するリーズナブルな価格を打ち出しています。
- 超軽量・高強度:総重量わずか約930g(最小848g)。軽量なカーボンポールを採用しつつ、風速20mの耐風試験をクリアする強度を誇ります。
- 極小スペースで設営可能:「Ledge(岩棚)」という名前の通り、狭い場所でも設営できるように入口を短辺側に配置しています。
- 素早いハイブリッド設営:吊り下げ式とスリーブ式の良いとこ取りをした構造で、悪天候下でも慣れれば3分〜5分以内で素早く設営できます。
- 結露を抑える工夫:シングルウォールの弱点である結露を軽減するため、前後左右の4か所に高低差をつけた大型ベンチレーションを配置し、空気の循環を促します。
- 圧倒的な居住性:幅125cm × 長さ220cm × 高さ110cmと、ソロなら荷物をすべて入れても広々、いざという時は2人でも横になれるサイズ感です。
5月中旬発売と告知されていましたが、出荷開始は6月14日でした。
| サイズ | 長さ:2,200mm × 幅:1,250mm × 高さ:1,050mm |
|---|---|
| 本体 | 15Dリップストップナイロン(フロア) 10Dリップストップナイロン(メイン) |
| ポール | カーボンポール |
| 重量 | 930g ( 本体 + ポール + 張り綱:835g ) |
専用のフットプリントを同時に購入しました。
【開封&実測】スペックと付属品を徹底検証
テント本体・ポール・ペグの同梱物一覧

フットプリントは別売です。
重量は、樹脂製のタグをのぞいた実測値です。

テント一式

▼テント本体にポールとペグがくるみこまれていました。

▼テント本体はこのストラップで円柱状にまとめて括られていました。ほかに使い道はなさそうです。

▼テント本体(張り綱を含む)の重量は実測で590.5gでした。

▼テント一式を入れるスタッフサックの重量は実測で10.5gでした。

ポール
▼ポールの重量は239.5g、スタッフサックは5.0gでした。

▼ポールの仕舞い寸法は約36.3cmでした。

ペグ、ポールの応急処置用スリーブ

ペグの重量は8.0g×10本で80g、スタッフサックは3g、ポールの応急処置用スリーブは6.5gでした。
ペグはMSRのミニグランドホグステイクとそっくりですが、やや軽く、独自の黒いコードが付いています。このコードは、スタッフサックの巾着にも採用されています。

▼ペグ単体で別売されています。
▼黒いコードの正体はたぶんこちら(破断強度650N 経年劣化の少ないスーパーコード0.7mm)です。
フットプリント

フットプリントの重量は135.5g、スタッフサックは6.0gでした。
公称値930gは本当か?【実測重量まとめ】
重量をまとめると、以下のとおりです。
| アイテム | 本体の重量 | 収納袋の重量 |
|---|---|---|
| テント本体(張り綱を含む) | 590.5g | 10.5g |
| ポール | 239.5g | 5.0g |
| ペグ | 80.0g | 3.0g |
| アンダーシート | 135.5g | 6.0g |
| リペアスリーブ | 6.5g | – |
| 合計 | 1,076g | |
公称値の930g ( 本体 + ポール + 張り綱:835g )と比較すると、スタッフサックを含めて928.5g(リペアスリーブを除く)と微妙に軽いです。リペアスリーブを含めると、微妙に超過します。
使用したキッチンスケールの最小単位が0.5gのため、重量の切り上げがあったかもしれません。公称値通りといってよいでしょう。
ポール破損を防ぐパッキングの注意点(取扱説明書より)
ペラ一枚(A3の二つ折り)の取扱説明書が同梱されていました。


軽量テントの一般的な注意事項が多く記載されています。
カーボンポールの取り扱いについては特に注意。
カーボンポールは外部からの衝撃(圧し潰す、踏みつける、固いものにぶつかる等)に対し弱い特性があります。運搬時、車への積載時などは衝撃が加わらないようご注意ください。
本体生地にポール一式をくるみこむ収納方式は、カーボンポールの保護を意図しているはず。バックパックのサイドポケット(ワンドポケット)に差すパッキングは避けましょう。たとえバックパックに収納したとしても、ポールのスタッフサックだけを単独で立てて収納すると、バックパックを地面に置いたときに底付きします。
スタッフサックは、フットプリントをいっしょに収納できる余裕のあるサイズ感です。長細いので、ウルトラライト系のバックパックだと縦に収納することになるでしょう。

【実働レビュー】上高地・小梨平で試して分かった設営性と居住性
【足元】土汚れがサッと落ちる専用フットプリントの凄さ

フットプリントの四隅には長めのコードが付いています。根元のバックルはどう使うのかよくわかりませんでした。長さを調節するだけなら、もっとコンパクトなテンショナーで良さそうですが……。

このフットプリント、撥水コーティングがよく効いている模様。湿った土がまぶされた状態で撤収・下山し、自宅の風呂場で洗おうとスタッフサックから取り出したところ、ほとんど汚れが見当たりませんでした。
数箇所を濡れ雑巾で拭くだけで作業は完了しました。綺麗になったことに首をかしげましたが、後から風呂場の床を見ると、細かい土や木屑がたくさん落ちていました。
生地に付着していた泥や泥粒子は、乾燥すると固着力を失い、フットプリントを広げた拍子にパラパラと剥がれ落ちたわけです。
【設営】スリーブ×吊り下げのハイブリッド構造で爆速設営

全体がスリーブ式だと、生地が突っ張って、ポールの端をグロメットに差すのが大変な場合があります。このテントは、60%ほどがスリーブ式で、残る40%ほどを2箇所のクリップで留めるハイブリッド方式です。40%が開放されているので、簡単に差すことができます。
- スリーブ方式は軽量で耐風性が高いものの、設営に多少手間がかかる。
- 吊り下げ式は素早く設営できるものの、重量が増えて耐風性に劣る(風圧が点に集中する)。
この二律背反を絶妙にバランスさせるのが、このハイブリッド方式です。
近年ではMSRの「アドバンスプロ」という先例があります。
海外メーカーの尖った設計を、山岳用テントに初参入?のエバニューが採用したことに驚きました。

ポールの端を差し込むグロメット(金具)は長さを調節可能なテープで本体とつながっています。
【出入り】横揺れに強く室内を濡らさない「D型ドアパネル」の妙

立ち姿はこれこの通り、本体のサイドに張り出した小屋根?が斬新です。この小屋根は、本体のサイドに開いたベンチレーションを覆うと同時に、本体の居住空間を広げ、横風への耐風性を強化する役割を担っています。

出入り口のパネルはD型の横開き。開きっぱなしにしたいときはタッセルでまとめて留めます。が、サイドパネルに適当にはね上げておくという手抜きが可能です。
よくある逆U字型パネルだと、外に落とせば泥で汚れ、内に落とせば結露がこぼれて床を濡らすという悩ましさがあります。横にはね上げれば気になりません。アライテント(ライペン)のライズ1、ライズ2でも採用されているマニア好みの設計です。


床の面積は長さ:2,200mm × 幅:1,250mm。1人で使うなら余裕しゃくしゃくです。全身用マットレスを敷いて、余ったスペースにおおざっぱに荷物を広げてくつろぐことができます。

もちろんシングルウォールの宿命、登山靴の取り込みのために、ポリ袋をお忘れなく。
【通気性】4箇所の大型ベンチレーションと結露対策

ドアパネルの上半分をファスナーで開放するとメッシュのベンチレーションとなっています。

両サイドにユニークな形状のベンチレーションあり。ファスナーを開放して、中央のコード沿いに生地をずりあげて固定します。

メッシュ越しに、小屋根?のガイラインを留める赤いペグが見えます。傍らを通る人がいたとしても、地面に顔をすりつけるくらい屈まないかぎり、中を覗き込まれる心配はありません。

入り口と反対側の天井にもベンチレーションがあります。

芯のはいった棒の端をベルクロで留めて突っ張ります。
パネルのベルクロ同士をくっつければ、ベンチレーションをほぼ閉じることができます。ほぼ、と言うのは、強風だとパネル沿いに吹き上げて、多少は侵入しそうだからです。
それでも、かつてモンベルのU.L.ドームシェルターで体験した悲惨さは回避できそうです。

【こだわり】アルミリング採用のガイラインと唯一の弱点(視認性)

ガイラインのテンショナー(自在)は初めて見るタイプです。最初、するっとテンションが抜けるので戸惑いました。よく見ると、テンショナーの穴にスリットが設けられています。「ここにコードを食い込ませて留めよ」と語りかけてきます。

特筆すべきは、テント側のガイラインの取り付け口がアルミ製?のリングになっていることです。

テンショナーをテント側に付け替えるのは、よく知られたハックです。

テープの輪に直接ガイラインを通すと、長さを調節するたびに摩擦が発生し、テープが擦り切れる心配があります。アルミのリングならガイラインの滑りは良好で、耐久性も申し分ありません。
ガイラインにテント設計者の志があらわれる。(持論)
他の山岳テントメーカーで見かけない、痒い所に手が届く設計に拍手を送りたい。
拍手を送りたい一方、ガイラインが極細かつ黒色である点には、改良の余地を感じます。
特に、黒っぽい地面のうえだと、ガイラインが消える!
一泊するあいだに、何度ガイラインに足を引っかけたことやら。10本の指では足りません。登山をはじめてン十年、最高記録を樹立しました。一度なんか、もんどりうって転倒しました。設営した本人がそんな具合ですから、混んだテント場では要注意です。
エバニューさん、ガイラインを蛍光色にアップデートしてください。
【居住性】高さ105cm&広々フロアで過ごす快適な室内空間

天井は高めの1,050mm。頭上を圧迫される感覚はいっさいありませんでした。5箇所にループあり。いろいろぶら下げることができます。

ドアパネルを開放し、コーヒーブレイク。フライシートが視界を邪魔しません。私がシングルウォールを好む理由のひとつです。
ちなみにこの日、小梨平キャンプ場には100張りほどのテントが設営されていましたが、シングルウォールは我が「Ledge highat / carbon」だけでした。
【夜間・結露】夏の結露具合とシングルウォールのリアルな居住感

夜中、一度目が覚めて、トイレに行きました。

内壁がうっすら結露しています。8月下旬なので、これくらいで済みました。

極細の黒いガイラインには反射材が編みこまれています。夜にヘッドランプで照らすと、しっかり目立ちます。
【撤収】「Ledge highat」は買いか?この一幕から始まる次の山へ

本体をひっくり返し、頭上にかかげ、バサバサと揺らします。
砂が舞い、乾いた葉と小さな虫の死骸が地面へ落ちていく。ポール構造に負荷がかかるのは分かっています。道具をいたわり過ぎず、手際の良さを優先します。
シングルウォールは結露します。泥のついた靴も袋に入れて中に持ち込まざるを得ない。万人に推奨できる快適さはありません。引き算の美学を愛する者の住処です。
「Ledge highat」――岩棚(Ledge)に立つ高級ホテル(Highat)。
荒涼とした山肌にナイロンの丸屋根が立つ。東の空が赤く染まる。私は岩のラウンジに立っている。チタンマグから、淹れたてのコーヒーを喉へ流し込む瞬間こそ至高なり。
次はどの岩棚に、このホテルを建設しようか。








コメント
ご無沙汰しております。大変参考になりました。師匠の影響でライズ2を使用しておりますが、人生最後のテントとしてこれを買おうかどうか悩んでいるところです。
jigemoさん、こんにちは。
X方面ではご無沙汰しております。
シングルウォール好きにはたまらないアイテムですよね。
私はライズ1をやや手狭に感じていまして、ゆったり過ごしたいときや真夏の森林限界以下用に奮発してみました。