撥水ダウンを自作する~洗濯篇

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撥水処理する前に汚れをきれいに落とします。そうしないと、撥水剤が定着しにくかったり、下手をすると汚れの上に撥水処理されてしまい汚れが落ちにくくなります。

リサーチ篇」からの続きです。

洗剤選び

ダウン専用洗剤、液体せっけん、エマールなど利用できますが、よほどの特別な事情でもないかぎり、専用洗剤を利用しましょう。

洗剤 ダウンへの適性 コメント
ダウン専用洗剤(NIKWAX、モンベルなど) 最も安全で仕上がり良好
エマール(中性・おしゃれ着用) ○〜△ 軽い汚れなら可、代用品として
普通の洗濯洗剤や液体せっけん(アルカリ性) × 羽毛が潰れて撥水も劣化

ダウン専用洗剤

NIKWAX ダウンウォッシュダイレクト

成分は

界面活性剤(11.4%アルキルグルコシド、5.7%純石けん分(脂肪酸ナトリウム))、水軟化剤(炭酸塩)

と表示されています。

炭酸塩は洗濯液のアルカリ性を保ち、石鹸カスの発生を抑制する成分です。アルキルグルコシドは合成界面活性剤に分類される成分です。

一定の洗浄力を保ちつつ、石鹸カスの発生を抑えるコンセプトがうかがえます。

輸入販売元に問い合わせたところ、撥水効果のある成分が微量含まれているそうです。Amazonの説明画像には「NIKWAX開発の特許成分(撥水ポリマー)」の文言が見えるので、「NIKWAX ダウンプルーフ」(撥水剤)と同じ成分が含まれているようです。

Grangers ダウン ウォッシュ コンセントレート

アウトドア業界でNIKWAXと双璧をなすダウン製品専用洗剤です。

エマールでダウンジャケットを洗うことは「一応可能」

おしゃれ着洗い用中性洗剤の代名詞「エマール」でダウンジャケットを洗う方法を販売元が公開しています。

エマールでダウンジャケットを洗うことは「一応可能」ですが、あくまで“緊急時の代用”にとどめるのが安全です。

エマールの特性
  • エマールはおしゃれ着用中性洗剤で、ウールやシルクなどの繊維を優しく洗うよう設計されています。
  • 中性で脱脂力も穏やかなので、一般の洗濯用洗剤よりはダウンに優しいです。
  • ただし、羽毛専用ではないため、羽毛の油分バランスや撥水加工の維持という点では、専用洗剤に劣ります。
エマール使用が「可」なケース
  • 汚れが軽い(皮脂や汗程度)
  • 中性洗剤が指定されているダウン
  • 手洗いまたは洗濯ネット使用で弱水流

液体石鹸でダウンジャケットを洗うツワモノもいる

洗濯のプロと言える方達がダウンジャケットを石鹸で洗う手順を公開されていました(2017年頃)が、現在読むことができません。

基本的には液体せっけん(一般的な台所用や衣料用)ではダウンジャケットを洗うのは避けた方がよいです。

なぜ液体せっけんではダメなのか

  1. 羽毛の油分が落ちすぎる
    ダウンには天然の油分があり、これが保温性やふくらみを保っています。普通の洗剤やせっけんは脱脂力が強すぎるため、油分を落としすぎて羽毛が「ぺしゃん」とつぶれやすくなります。
  2. すすぎ残しやすい
    液体せっけんは泡立ちや残留が多く、羽毛の内部に石けんカスが残ると、乾燥後にダマになったり、臭いやカビの原因になります。
  3. 撥水コーティングが落ちる
    表地に撥水加工が施されている場合、普通の洗剤やせっけんで落ちやすくなります。

どうしても液体せっけんを使う場合の注意点

どうしても専用洗剤がない場合は、以下を厳守すれば“応急処置”的に使えます。

  1. 中性の液体せっけん(アルカリ性や漂白剤入りは絶対NG)を極少量(通常の1/4~1/5程度)。
  2. ぬるま湯で手洗い(洗濯機不可)。
  3. すすぎを何度も(最低3回以上)。
  4. 脱水は短時間で軽く押し絞る。
  5. 乾燥は風通しの良い場所で完全に乾かすか、乾燥機で低温+テニスボールを数個入れて羽毛をほぐす。

実践:お気に入りのダウンジャケットをダウン専用洗剤で洗う

マーモットのトランスダウンジャケット(MJD-F1013)です。2012年夏頃、前シーズンの型落ち品を購入しました。830フィルパワーの高品質ダウンを採用しています。

手洗い可能か確認

トランスダウンジャケットの洗濯表示

オケに水をためたマークがあればOK。文字の意味は以下の通りです。

  • 「手洗イ」 → 手洗い可能
  • 「30」 → 30℃のぬるま湯
  • 「中性」 → 中性洗剤

洗濯表示の詳細は以下のリンクを参考にしてください。

襟や袖口など黒ずんだ汚れを洗剤の原液でこする

スポンジに洗剤の原液を含ませて、襟や袖の汚れをこする。

全体を洗う前に、襟や袖口などピンポイントの汚れを洗剤の原液をこすりつけて落とします。スポンジに含ませるやり方だと、原液がすぐに垂れ落ちてしまうので、やや効率が悪い気がしました。

襟や袖に限定するなら「固形石鹸で直接こする」という荒業も悪くあり。表生地の石鹸成分は洗い流しやすいので、ダウンへの影響をあまり気にしないですみます。

浴槽で手洗いする

洗剤を節約する

ふだんの入浴時の設定温度(39℃)のお湯を浴槽にためました。通常の推奨温度(30℃)より熱いですが、その代わりに洗剤を少なめ(キャップ1杯分=50ml)にするという節約モードです。

ダウンジャケットを手や足で押し、内部の空気を完全に抜いて沈めます。

足で押し洗いするとラクチン

浴槽に腰かけて足でじゃぶじゃぶ押し洗いすると楽です。生地の薄いダウンジャケットでは、体重をかけすぎて繊細な縫製を引きちぎらないように注意してください。

たっぷりの水でしっかりすすぐ

十分に洗ったら、白く濁った水を抜きます。ダウンジャケットが含んだ水も押し出します。

きれいなお湯をため直して、押し洗いします。

お湯を抜いて、ため直して、洗う。これを3回くらい繰り返します。

軽く水を切って、小ぶりのバケツに入れました。

ダウンのふくらみがなくなると、ずいぶん小さくなります。大きさの比較用にNIKWAXのボトルをいっしょに入れました。

これで洗濯の行程は終了です。「撥水処理篇」に続きます。


その他、ダウンジャケット関連の記事もご参照ください。

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