雪山登山おすすめダブルウォール自立式テント、シェルター

雪山登山で使える1~2人用テント、シェルターをレビューします。

テントやシェルターを選定するにあたって最初に、

  • シングルウォールかダブルウォールか
  • 自立式か非自立式か

を決めなくてはなりません。

この記事では自立式ダブルウォールを扱います。

3シーズン用とされているテントであっても、外張り等を使わずそのまま雪山に持ち込むことを想定しています。

重量は1.5kg未満を目指しますが、やや余裕をみて1.5kg~2.0kgも視野に入れます。

1.0kg~1.5kg未満

プロモンテ / ライトウェイト アルパインテント VL-27

サイズ 間口205×奥行120×高さ100cm
重量 1,300g(本体+フライシート+ポール) / 1,490g(総重量)
素材 フライシート:20Dポリエステル
本体:10Dナイロン
グランドシート:30Dポリエステル
ポール:DAC/NFL9.3mm

レビュー

  • 伝統の吊り下げ式。
    1971年に世界で初めて登場した「ダンロップ」の吊り下げ式ドームテント。その直系で軽量化路線を突き進めたのが、このVLシリーズです。このシリーズだけブランド名が「プロモンテ」ですが、ついつい「ダンロップ」と呼んでしまいます。
  • 出入口の逆L字型ファスナーが長辺に付いている。
    ファスナーは直線使いのほうが故障しにくいです。出入口のパネルが跳ね上げ式なので地面に垂れて汚れたりしません。ただし、逆U字型やC字型と比較すると、開口面積はあまり広くありません。
  • 出入口を跳ね上げて固定するためのヒモが長すぎる。
    プロモンテ/VL-16(1人用) – 高橋庄太郎の山MONO語り」では、
    ①ヒモが長すぎてテント内で邪魔、
    ②出入口のパネルをしっかり巻き上げることができない、
    と指摘し、ヒモの真ん中あたりを結ぶ簡単な解決方法を提示されています。
  • 張り綱はフライシート側に付いている。
    フライシートの裏側にあるベルクロテープをポールに巻きつけて固定する必要があります。1世代前のVL-25まではヒモを蝶結びにする必要があり、もっと面倒でした。本体側はパチッパチッとフックで留めることができるのに、フライシート側はチマチマと留めなくてはならないデザインは画竜点睛を欠く感があります。フライシート側もフック方式にしてほしいです。
  • 2023年シーズン、フライシートの色にオレンジ、オリーブの2色が用意された。
    VL-24は赤色、VL-25は黄色、VL-26は青色でした。

ひとまわり小さい1人用(間口205×奥行90×高さ100cm)は重量1,210gです。

参考リンク

アライテント / エアライズ1

サイズ 間口100×奥行205×高さ100cm
重量 1,360g(本体+フライシート+ポール) / 220g(ペグ、張り綱)
素材 フライシート:30Dナイロン
本体:28Dナイロン
グランドシート:40Dナイロン
ポール:NSL9フェザーライト(DAC社製)

レビュー

  • 生地が厚い。
    1人用ですが、前出の「プロモンテ / ライトウェイトテント2人用 VL-26」と同じくらいの重量です。昨今のウルトラライトの潮流から一線を画す昔ながらの質実剛健な設計です。
  • 出入口のモスキートネットが内側になっている。
    人間が中にいるとき換気するためには、いったん出入口のパネルを開けて、外側に手を出して、メッシュを覆うフラップを開く必要があります。虫が多い季節にはそのあいだに侵入されてしまう可能性が高くなります。いまどきのダブルウォールのテントでは普通、メッシュが外側になっており、内側のフラップを開く設計になっています。この点は改善してほしいと思う人が多いかもしれません。しかし、実は隠れたメリットがあります(後述)。
  • 出入口の逆U字型ファスナーが短辺に付いている。
    出入口のパネルが上を向く度合いが強いので、出入りするときに雨や雪や結露が入り込みやすい。
  • フライシートの色は緑と赤を選択できます。
    春夏秋が主体なら虫が寄り付きにくい緑、冬を考慮するなら雪のなかで目立ちやすい赤がおすすめです。
  • 雪山でシングルウォールのドーム型シェルターとして使える。
    「生地が厚い」「出入口のモスキートネットが内側になっている」という点は、ややもするとデメリットと解釈しがちですが、裏を返せばシングルウォールで使いやすい外側にメッシュがないので、雨や雪が溜まりません(ポールスリーブの一部にはメッシュを採用している)。張り綱は本体側に付いており、耐風対策は問題ありません。同社は「ライズ1」「ライズ2」というドーム型シェルターを販売していますが、それらは本体生地の透湿性が低く結露しやすいのが難点です。エアライズの本体をシングルウォールで使うほうが透湿性(通気性)という点では優れています。もちろん本体は通気性を重視した撥水処理のみで、小雨を弾くくらいの耐水性しかありません。雪山に限定されます。エスパースの「ソロ ウインター」のように超撥水加工したシングルウォールの例があるくらいですから現実味のある話です。フライシートを除く本体(+ポール)の重量は公式サイトには記載されていませんが、DXフライ仕様の重量(1,660g)からDXフライ単品の重量(690g)を差し引くと、970gとなります。ライズ1の重量(980g)より10g軽い。「雪山でみぞれや雨に見舞われるかもしれない」と心配する人は、市販の撥水剤で追加処理するか、専門の業者に撥水処理を依頼すると良いでしょう。

別サイズ、別モデル

ひとまわり大きい「エアライズ2」(間口130×奥行210×高さ105cm)は重量1,550gです。

春夏秋はDXフライシートでより快適に、冬は本体のみでシングルウォールとして使い分けるという手もあります。

参考リンク

アライテント / トレックライズ1

サイズ 間口210×奥行110×高さ105cm
重量 1,460g(本体+フライシート+ポール) / 220g(ペグ、張り綱)
素材 フライシート:30Dナイロン
本体:28Dナイロン
グランドシート:40Dナイロン
ポール:NSL9フェザーライト(DAC社製)

レビュー

  • エアライズ1の居住性を高めたモデル。
    サイズが大きくなり(長辺:205cm→210cm、短辺: 100cm→110cm、高さ:100cm→105cm)、長辺側に出入口を付けたので出入りしやすく、前室を広く確保できます。そのぶん重量が増えます(1,360g→1,460g)。エアライズ1が1人用(最大2人)なのに対して、1~2人用という位置づけです。
  • 「3シーズン専用」だが耐久性はエアライズと同等。
    ライズシリーズの相関マップのなかでは「3シーズン専用の快適設計、超軽量テント」とされていますが、生地使いはエアライズと同じなので耐久性は同等だと推測できます。ただし、冬用の外張りは用意されていません。

別サイズ、別モデル

ひとまわり小さい「トレックライズ0」(間口205×奥行80×高さ100cm)は重量1,250gです。ひとまわり大きい「トレックライズ2」(間口210×奥行150×高さ110cm)は重量1,680gです。《1人でやや余裕があるサイズ》という条件だと、「トレックライズ0」は狭すぎ、「トレックライズ2」は広すぎます。このシリーズから選ぶなら、「トレックライズ1」がおすすめです。

参考リンク

アライテント / オニドーム2

サイズ 間口166(最大240)×奥行157(就寝部115)×高さ97cm
重量 1,480g(本体+フライシート+ポール)
素材 フライシート:30Dナイロン
本体:28Dナイロン
グランドシート:40Dナイロン
ポール:NSL9フェザーライト(DAC社製)

レビュー

  • 2016年初登場。
  • 生地が厚い。
    前出の同社「エアライズ1」と同じ生地使いです。
  • 自立式の前室と土間を提供する。
    前室は外側に張り出す形ではなく、内側に食い込んだ形をしています。通常のダブルウォールテントのようにフライシートをペグで留める必要がありません。本体の出入口側キャノピーが垂直に近いので、フライシート開放時に雨や雪が侵入しにくいです。
  • 床の形状は台形になっている。
    床の形状は出入口に向かって狭くなっています。他シリーズと同じポールの長さで奥行を出すための苦肉の策だと推測されます。それでも足りなかったのか、テント本体の高さは3cm低くなっています。結果的に台形になり、両脇に突き出した内部の床とあわせて「鬼」に見立ててネーミングしたのが見事です。
  • フライシートの色は緑と赤を選択できます。
    春夏秋が主体なら虫が寄り付きにくい緑、冬を考慮するなら雪のなかで目立ちやすい赤がおすすめです。
  • 別売のグランドシートも台形。
    土間の部分までカバーするので、土間の意味がなくなる気がします。曲線にカット・縫製するとコスト高になるのでしょうか。せめて三角形もしくは台形に食い込んだ形にしてほしいところです。

別サイズ、別モデル

ひとまわり小さい「オニドーム1」(間口148(最大230)×奥行122(就寝部82)×高さcm)は重量1,290gです。

参考リンク

モンベル / ステラリッジ テント2

サイズ 間口130×奥行210×高さ105cm
重量 1,230g(本体+フライシート+ポール) / 1,430g(総重量)
素材 フライシート:20Dナイロン(別売
本体:10Dナイロン
グランドシート:30Dナイロン
ポール:7001超々ジュラルミン、直径8.5mm

レビュー

  • 山岳テントの先進モデル。
    従来よりアライテントのエアライズやプロモンテ、ダンロップの対抗馬でしたが、2019年シーズンに吊り下げ式に変更されて、さらには軽量化(本体生地=30Dナイロン→10Dポリエステル、フライシート生地=30D→20D)されたことにより、頭一つ抜け出した感があります。
  • 細部の完成度が高い。
    ポール末端に滑り止めグリップを備え、ポールスリーブのエンド側がグロメット式で耐久性が高い(袋とじだと地面との摩擦で破れやすい)。アライテントのライズシリーズと同様、差し込み側のポール受けは2段グロメットになっています。ライズシリーズでは「冬季など生地が縮んでいる場合には外側に差し込む」と説明されることが多いのに対して、ステラリッジテントでは「雨や結露などで生地の張りが弱まった際は内側のポール受けに差し込みます」(モンベル 「ステラリッジテントの組み立て方」 – Youtube動画)と逆の説明がされています。

フライシートは別売。

本体の価格だけ見て、安いと勘違いしないように注意してください。

別サイズ、別モデル

【モンベル】ステラリッジ テント1 本体
長年にわたり、多くの登山家やアウトドア愛好家から支持されてきた「ステラリッジテン...

ひとまわり小さい「ステラリッジ テント1」(間口90×奥行210×高さ105cm)は重量1,140gです。重量の差は90gなので、よほどミニマリズムを極めたい人以外には「ステラリッジ テント2」がおすすめです。

参考リンク

ヘリテイジ / エスパース・ ソロ アルティメイト

サイズ 間口100×奥行210×高さ105cm
重量 1,340g(本体+フライシート+ポール) / 100g(ペグ)
素材 フライシート:20Dポリエステル
本体:15Dナイロン
グランドシート:30Dポリエステル
ポール:YUNAN社 (7001-T6)、直径8.64mm

レビュー

  • キャッチフレーズは「究極の軽さと極上の使用感」
  • 換気性能が高い。
    前後に広大なメッシュパネルを備えています。フラップを全開すれば、海外製テントによく見られる上半分メッシュのテントに近い風通しを得ることができます。真夏から厳冬期まで幅広く対応するモデルです。外張りが別売されています。
  • 後方のパネルを開閉してモノを出し入れできる。
    雪山ではこの小窓から水作り用の雪を取るなど、「ライズ1」のような使い方ができます。
  • 張り綱はフライシート側に付いている。
    ヘリテイジ社に問い合わせたところ、本体とフライシートは裾以外は連結しない構造とのこと。張り綱付け根部分で本体とフライシートを連結できる仕様にも加工可能(加工賃3,200円+税)との情報もいただきました。「マキシムフライの取付方法」と同じ連結方法(樹脂製のトグルをループに引っ掛ける)になります。

別サイズ、別モデル

ひとまわり大きい「デュオ アルティメイト」(間口210×奥行130×高さ115cm)は重量1,550gです。

2018年6月に販売開始した「HI-REVO(ハイレヴォ)」は耐久性が劣るものの、その軽量さ(960g)が魅力的です。

参考リンク

ファイントラック / カミナドーム2

サイズ 間口212×奥行130×高さ105cm
重量 1,310g(本体+フライシート+ポール) / 1,430g(総重量)
素材 フライシート:15Dナイロン(補強糸40D)
本体:7Dナイロン(補強糸30D)
グランドシート:不明
ポール:DAC Featherlite NSL、直径8.5~9mm(異径ポール)

レビュー

  • 2016年初登場。
  • タフさと軽さを両立。
    軽さの秘密は生地の薄さにあります。《フライとインナー、ボトム全てに66ナイロンリップストップ生地を採用》しています。本体はなんと7デニールで内部が透けて見えそうです。出入口のモスキートネットが外側に付いているせいもあり、シングルウォールで使うのは厳しい。
  • 床面積の割に居住空間が広い。
    異径ポールにより、壁が垂直に近く立ち上がるため、寝袋や衣類が内壁と接触しにいです。
  • 四隅のポール受けが開放型になっている。
    ポールスリーブの片側が閉じていないので、四隅を固定するために一周する手間がかかります。

別サイズ、別モデル

ひとまわり小さい「カミナドーム1」(間口205×奥行90×高さ100cm)は重量1,130gです。「カミナドーム2」との重量差は180g。床面積の割に居住空間が広いため、こちも有力な選択肢です。

参考リンク

ニーモ / タニ オズモ 2P

サイズ 間口220×奥行130×高さ104cm
重量 1,240g(最小重量)
素材 フライシート:OSMO™ リップストップ(ナイロン、ポリエステル)
本体:15Dナイロン
グランドシート:OSMO™ リップストップ(ナイロン、ポリエステル)
ポール:不明

レビュー

  • 2012年初登場。
    ニーモが日本の山岳シーンのために開発し、マイナーチェンジしてきたモデルです。2018年モデルでは「ボリューマイジングガイアウト」(本体下部をフライシートと連結して張り綱でいっしょに引っ張ることにより居住空間をひろげる)が追加されました。2023年モデルではフライやフロアの素材に環境負荷が少なく耐候性が高い素材が採用されました。
  • ダブルウォールのクロスポールテントとして最軽量クラス。
    同じ吊り下げ式のプロモンテの「ライトウェイトテント2人用」と比較すると、床面積がやや広い(間口205×奥行120×高さ100cm→ 間口220×奥行130×高さ104cm)にもかかわらず軽量(1,300g→1,240g)です。海外製品らしく長辺が220cmと長いため、寝袋の頭や足先が内壁に接触しにくいです。
  • 異径ポール
    ポールの製造メーカーを問い合わせたところ、旧モデルでは「DAC Featherlite NSL、直径8.5/9.0mm」を採用しているとの回答をいただきました。公式サイトでは特に言及されていませんが、ファイントラックの「カミナドーム」と同様、異径ポールで頭上空間を広げる設計になっているようです。(2023年モデルの詳細は不明)
  • 張り綱はフライシート側に付いている。
    フライシートの裏側にあるベルクロテープをポールに巻きつけて固定する必要があります。
  • 床の生地が薄い。
    旧モデルではなんと15Dでした。2023年モデルもそれに準ずると思われます。無雪期はフットプリント必須です。
  • 4シーズン対応
    適用シーズンは明記されていませんが、軽量化を優先した3シーズン用です。厳冬期には森林限界以下(八ヶ岳なら赤岳鉱泉、行者小屋、黒百合ヒュッテくらいまで)に限定されるでしょう。フライシートの裾を雪で埋めた場合には、前室ファスナーの上部や、後部のベンチレーションを突っ張り棒で開いた状態に維持すれば空気の出入りを確保できます。
  • 耐風性と耐久性
    耐風性については、旧モデルでは実績のあるDAC Featherlite NSLを採用していました。2023年モデルの詳細は不明。長時間、強風に吹かれた場合の耐久性については未知数です。

ひとまわり小さい「タニ1P」(間口202×奥行105×高さ103cm)は重量1,120gです。

参考リンク

MSR / アクセス1

サイズ 間口213×奥行84×高さ104cm
重量 1,370g(本体+フライシート+ポール) / 1,600g(総重量)
素材 フライシート:20Dナイロン
本体:20Dナイロン、10Dポリエステルマイクロメッシュ
グランドシート:30Dナイロン
ポール:イーストンサイクロン

レビュー

  • お洒落に雪山テント泊を楽しむセレブテント
    機能性うんぬんより、まず雪山に映える造形や配色を鑑賞したくなります。Youtube動画でMSRチームのケイトリンさんが「プロスキーヤーから山岳のプロ、週末に冬山でのテント泊を楽しむ人まで、冬山でテント泊を楽しみ、美しい風景を楽しみたい方にお勧めのテントです」と語っています。
  • サイクロンポール。
    ケイトリンさんがポールをぐんにゃりと円形に曲げるデモンストレーションを見せてくれます。曰く「新しく採用されたサイクロンポールはアルミと同等の軽さながらカーボンファイバーと同等な強さを持ち合わせています」「夜の間に雪が降っても、アクセステントは約12キロの重さに耐えることができます」
  • 常時開放のベンチレーション。
    出入口上部がメッシュになっています。ふさぐためのフラップ等はありません。
  • 張り綱はフライシート側に付いている。
    フライシートの裏側にはポールに連結するベルクロやコードはありません。四隅のみ連結します。「ガイコードポイント」は5箇所となっていますが、最初から張り綱がセットされている箇所以外にもループが付いているので、耐風性を強化したければ張り綱を追加するとよいでしょう。
  • オールシーズン対応?
    雪山対応をうたいながら、基本構造は「防水コーティングしたフライシートを本体にかぶせた至極普通の3シーズンテント」と何ら変わりません。しかも常時開放のベンチレーションが付いています。国内メーカーの3シーズン用テントをそのまま雪山に持ち込んでもいいのだと自信を与えくれます。

別サイズ、別モデル

ひとまわり大きい「アクセス2」(間口213×奥行127×高さ107cm)は重量1,640gです。

参考リンク

1.5kg~2.0kg

ZEROGRAM / El Chalten Pro 1.5P 2020

サイズ 間口210×奥行105×インナーの高さ100cm
重量 minimum:1,583g / packing:1,916g
素材 フライシート:15Dシルナイロン 本体:20Dモノフィラメント グランドシート:20Dナイロン ポール:不明

レビュー

  • ダブルウォールのクロスポールテントとして最軽量クラスでしたが、2023年現在のモデルは長辺が大きくなり、1,500gを超過しました。
  • 設営・撤収が簡単。 フライとインナー、フットプリントが一体となった吊り下げ式です。
  • 居住性が高い。 床面積は1人用プラスアルファですが、リッジポールにより前後に広い前室を確保できるため、モノの置き場所が豊富で、出入りしやすい。2人使用時にはおのおの専用の保管庫と出入口をもつことができます。
  • 4シーズン対応。 本体の生地は「モノフィラメント」という透け感のある素材です。通気性が高すぎて、冬季には寒さを感じやすいので、フライシートの風上側の裾を雪で埋めるなどして空気の動き抑制したほうがよいでしょう。天頂部に換気用のスリットがありますが、風下側の前室のファスナーを半開きにしておくなど工夫が必要です。厳冬期には森林限界以下(八ヶ岳なら赤岳鉱泉、行者小屋、黒百合ヒュッテくらいまで)に限定されるでしょう。
  • 耐風対策に工夫が必要。 前室に出っ張りがあるぶん強風にあおられやすくなります。張り綱はフライシートの薄い生地に縫い付けられたテープから取るため、耐久性に不安を感じます。テープが地面側を向いていない点も気になります。張り綱をポールに2~3回巻きつけて負荷を分散するとよいでしょう。

参考リンク

ビッグスカイ / チヌーク2P

サイズ 間口230×奥行120~135×高さ100cm
重量 1,643g
素材 シルナイロン使用(詳細不明:ヒルバーグと同じケルロンを使用しているとの情報もある)
ポール:直径9mm

レビュー

  • 3本ポールで前室が自立する一体型吊り下げ式。
    ZEROGRAMの「El Chalten 1.5P」のリッジポールの両端を地面まで延長したイメージです。そのぶん重量が増えます。本家サイトで1.823kgと記載されているのは、スタッフサックを含む重量だと思われます。ペグや張り綱は付属しません。海外製品らしく長辺が230cmと長いため、寝袋の頭や足先が内壁に接触しにくいです。
  • 耐風対策しやすい。
    3本ポールで剛性が高いですが、張り綱用ループの付け根は薄い生地なので耐久性に不安を感じます。張り綱をポールに2~3回巻きつけて負荷を分散するとよいでしょう。

別サイズ、別モデル

ひとまわり小さい「チヌーク1.5P」(変則的な六角形)は重量1,636gです。「本体を両側の前室いっぱいに広げる」「片側だけ前室にする」「両側とも前室にする」という3通りのトランスフォームが可能です。本家サイトの「BIG SKY CHINOOK 1PLUS TENT」と同等のスペックです。

参考リンク

オクトス / アルパインテント1人用

サイズ 間口207×奥行91×高さ100cm
重量 1,597g(本体+フライシート+ポール) / 1,778g(総重量)
素材 フライシート:30Dナイロン
本体:30Dナイロン
グランドシート:40Dナイロン
ポール:ジェラルミン、直径8.8mm

レビュー

  • 安価なダークホース。
    ポールスリーブ式で出入口が長辺にあり、厚めの素材を使用しています。アライテントの「トレックライズ」シリーズと比較すべきモデルです。やや重いですが、旧モデルは実売価格が安価(23,887円+税)でした。2018年モデルは大幅に値上がりした(32,000円+税)のが残念です。今後の値下げに期待しましょう。

別サイズ、別モデル

ひとまわり大きい「アルパインテント2人用」(間口205×奥行120×高さ100cm)は重量1,971gです。

参考リンク

モンベル / クロノスドーム 1型

サイズ 間口220×奥行100×高さ105cm
重量 1,950g(本体+フライシート+ポール) / 2,190g(総重量)
素材 フライシート:75Dポリエステル
本体:78Dナイロン
グランドシート:70Dポリエステル
ポール:7001超々ジュラルミン、直径8.5mm

レビュー

  • 生地が分厚い。
    フライシート、本体、グランドシートともに分厚い。重量がかさむためキャンプ向きと位置付けられていますが、耐風性・耐久性は十分に高い。生地を薄くするなどして1,500g前後まで軽量化したテント(クロノスライト1型?)を3万円以下で販売したらバカ売れするでしょう。
  • 長辺が220cmと長いため、寝袋の頭や足先が内壁に接触しにくいです。
  • 吊り下げ式のため設営・撤収がしやすい。
  • 「バーティカル・クロス・システム」により長辺側の内壁が垂直に近く立ち上がります。
  • フライシートの色はゴールデンオレンジとスカイブルーを選択できます。
    春夏秋が主体なら虫が寄り付きにくいスカイブルー、冬を考慮するなら雪のなかで目立ちやすいゴールデンオレンジがおすすめです。

別サイズ、別モデル

ひとまわり大きい「クロノスドーム 2型」(間口230×奥行130×高さ105cm)は重量2,180gです。

参考リンク

ヒルバーグ / ソウロ

サイズ 間口220×奥行105×高さ95cm
重量 2,000g(本体+フライシート+ポール) / 2,400g(総重量)
素材 アウターは12kg/26.5lbの引裂強度を持つKerlon 1200ファブリック

レビュー

  • 引き裂き強度が高い。
    《一般のテント生地(特にポリウレタンでコーティングされているもの)の引き裂き強度は、2~3kg》とされていますから、その4~6倍の引き裂き強度があります。
  • 3本ポールで前室が自立する一体型吊り下げ式。
    ビッグスカイの「チヌーク2P」と比較すべきモデルです。
  • ポールスリーブと吊り下げ式のハイブリッド方式。
    ポールスリーブが長めで、軽量化と設営のしやすさのバランスが良いです。
  • フライシート天頂部に「小屋根」が付いている。
    フライシートの出入口上部が三角形のベンチレーション(メッシュ)になっています。そこを覆うように「小屋根」状のフラップを取り付けます。三角形のベンチレーションはファスナーで開閉できます(用途不明)。
  • 耐風対策しやすい。
    3本ポールで剛性が高く、張り綱の設置ポイントは各ポール沿いに上下2段付いています。設営方法のインストラクション(Youtube動画)を見ると、上段の張り綱を設置する際、ポールに1回巻きつけて負荷を分散しています(02:17付近)。この小技は他メーカーの一体型吊り下げ式テントで応用できます。

別サイズ、別モデル

ひとまわり大きい「ウナ」(間口230×奥行110×高さ100cm)は重量2,000gです。「ソウロ」と同等の重量ですが、前室はありません

参考リンク

まとめ

ダブルウォールでも1kgを切る製品については別途、こちらの記事で取り上げました。

登山で使える軽量テント おすすめ レビュー【1kg以下】
「軽さ」と「耐久性」のバランスを考慮し、・夏の北アルプスの稜線でなんとか雨風をしのげる。・重量が1kg以下である・本体がメッシュではない(部分的なメッシュはOK)。という条件で軽量テント(シェルター)を選定し、レビューします。

シングルウォールについての記事はこちらをご参照ください。

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簡易テントとしてツェルトを検討するなら、こちらの記事をご参照ください。

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登山用品

コメント

  1. ランボー より:

    素晴らしすぎるレビューでした。テント紹介は、スペック表に書いてあることしか書いてないようなサイトが多い中、「他のテントとどう違うのか?」「使用者(登山者)の目線でみると使い勝手はどうなのか?」部分が詳しくかいてありありがたかったです。

    是非これからも様々なテントの比較レビューをお願いします!楽しみにしています!

    • kamiyama kamiyama より:

      ランボー様、コメントありがとうございます。励みになります。
      いずれ「雪山に限定しない軽量テント」や、総論的な「登山テント論」を書くつもりです。

      • ランボー より:

        >「雪山に限定しない軽量テント」や、総論的な「登山テント論」
        どちらもとても興味があるので楽しみにお待ちしてます!

        私は山岳テントや冬山登山に憧れがあり山グッズを集めているのですが実際のところ登山は一度もやったことがなくキャンプしかしたことがないヘタレです。

        今はNemoのTani2Pを愛用していて、平地でキャンプしております・・・。kamiyamaさんのサイトで勉強して、いつか自分も山にいってみたいです。

        • kamiyama kamiyama より:

          ランボー様、Tani2Pは登山で十分通用する良いテントですね。
          登山口から近い(2~3時間)のテント場にベースを構えて、
          山頂を往復するくらいから始めてみると楽しみが広がると思います。

  2. 通りすがり より:

    所感ですけど、アライのエアライズの良さはオプションが豊富なところだと思うんです。
    山岳地帯以外で使うとき、車やバイク、自転車に乗せるのなら、重さを気にする必要がないからDXフライのほうが広いし、夏の平地ならばカヤライズがいい。
    「もちろん山でも使えます」ってところが憎らしい。
    アウトドアを色々する人はアライに行ってしまいそう。

    山岳限定ならば筆者の言う通り、モンベルのステラリッジが一歩リードですかね。

  3. tomotomo より:

    いつも楽しみにレビュー拝見してます。

    4シーズン通してアライライズ2使用してます。極寒期はもちろん冬用外張り使ってですが。

    あと初冬とGWは透湿性を良くしたライズ1SP かなりの優れものです。

    でも最近、ファイントラックのカミナモノポール1と2は4シーズン使える最強モノではと感じております。

    量販店で実物拝見しましたが案外中は広く感じました。しかしこのご時世では使用レビューが投稿されていないのが残念です。

    • kamiyama kamiyama より:

      tomotomo様、コメントありがとうございます。

      ライズ1SP! ePTFE素材を採用した幻?のモデルですね。
      羨ましいです。再販したら売れると思うんですけどね。

      カミナモノポール、注目しております。
      ファイントラックのサイトを見たら、展示店舗がわかったので、
      不要不急に見学してきます。