グリベルの一番人気アイゼン、エアーテック・ニュークラシック詳細

グリベルの一番人気アイゼン、エアーテック・ニュークラシック詳細

メーカーや輸入代理店がそう発表しているわけではありませんが、店頭の在庫状況を見る限りでは、グリベルの一番人気アイゼンは「エアーテック・ニュークラシック」(Air Tech New Classic)です。

人気の理由は、

  • 縦走から急峻な氷雪壁まで対応できる。
  • バンド式なので、コバがない登山靴にも装着できる。
  • お値段がお手頃である。

といったところでしょうか。

下の図のDEあたりの傾斜で利用することを想定しています。がんばればFまで対応可能です。


※ GRIVEL本家サイトの「range of use」の画像を引用

店頭では「在庫切れ」の札がかかっていることが多い。私は取り寄せてもらいました。

実際に使い始めたのは今シーズン(2017年~2018年)からです。装着方法やメンテナンス方法についてまとめておきます。

箱と取扱説明書


こんな細長い化粧箱に入っていました。外側にはこう記載されています。

GRIVEL MONTBLANC SINCE 1818

TO INCREASE YOUR SECURITY USE THE ANTIBOTT

箱のラベル

取扱説明書

輸入元のマジックマウンテンによる取扱説明書です。

多国語表記の取扱説明書も同梱されていましたが、得られる情報は少ないです。

アイゼン本体


左足用をクローズアップします。

製品名の刻印


フロントのジョイント部に“GRIVEL ~ Air Tech”と刻印されています。

フロント上面

フロント底面

リア上面

リア底面

フロントハーネス

リアハーネス

フロントのアンチボット上面


ジョイントバーを取り外した状態です。

フロントのアンチボット底面

歩行中はこの凸面がペコペコ引っ込んだり戻ったりして、雪が固着するのを防ぎます。単なるプラスチックのプレートより効果的です。“PATENTED”(特許取得)と刻印されているだけあります。

フロント最後部の特徴的なツメ


GRIVELの本家サイトではこう記載されています。

On top of this the last two front points have a double angulation to maintain bite when descending or traversing sideways.

これに加えて、最後列の2つのツメは、横向きに下降するときや横移動するときに食い付きを維持するために二重の角度をもっています。

リア最後部の特徴的なツメ

エアーテックシリーズの特徴

GRIVELの本家サイトでは、ワンタッチ式(CRAMP-O-MATIC)、セミワンタッチ式(NEW MATIC)、バンド式(NEW CLASSIC)を含むエアーテックシリーズの特徴がこう記載されています。

A new generation of crampons. Ten points in contact with ice while you’re walking, 12 that bite into the slope during traverses. This has been made possible because the third pair of points are shorter and wider apart. On top of this the last two front points have a double angulation to maintain bite when descending or traversing sideways.

新世代のクランポン。歩行中には10本のツメが氷と接触し、縦走中には12本のツメが斜面に刺さります。これは、3列目の対となったツメがより短く、より離れているので可能になりました。これに加えて、最後列の2つのツメは、横向きに下降するときや横移動するときに食い付きを維持するために二重の角度をもっています。

※ 「アイゼン」はドイツ語の名称で正確には「シュタイクアイゼン」と呼びます。クランポンは英語の名称です。
※ 「traverses」は「縦走」を意味するのか「横断」を意味するのかよくわかりません。

The crampons points are short and designed for the new requirements of “mixed modern’s” alternating ice and rock. Sharp points are ideal for anchoring on ice “cauliflowers” and when in traction or adherence. Even the soles of the most modern boots are perfectly covered.

クランポンのツメは短く、氷と岩が交錯する「現代的ミックス」という新しい要件に合わせて設計されています。鋭利なツメは、氷の”カリフラワー”に打ち込んだり、牽引力や支持力がほしいときに理想的です。最も近代的なブーツのソールをも完全にカバーしています。

※ 「 ice “cauliflowers”」は「壊れやすい氷の塊」くらいの意味でしょうか。

Semi-rigid model in one adjustable size.
The bar can be regulated by hand, in two different lengths.
These New version has a new binding made in “bi-components” giving greater efficiency and lightness.
It is really an “all seasons” crampon, very light and takes up a minimum of space as it folds up completely on itself.

1つサイズで調整可能な半剛体モデル。
このバーは手動で調整でき、2つの異なる長さをもっています。
これらの新バージョンでは、より効率的で軽量な「バイコンポーネント」が新たに作られました。
それは本当に “オールシーズン”のクランポンで、とても軽く、完全に折り畳むと最小限のスペースしか占めません。

※ 「two different lengths」は後述する「ジョイントバーの裏側の突起による調整」を意味すると思われます。

バンド式のNEW CLASSIC(ニュークラシック)については、さらにこう記載されています。

An evolution of the Classic binding. Both front and rear plastic harnesses are hinged from their respective retention posts and may be “opened” to facilitate attachment to the boot, then closed securely once the boot is inside. The single strap closure system is so simple we may not need to provide instructions; the New Classic is therefore ideal for rental programs and first time users. This system is simple and reliable, quick and easy, but it does take up a bit more space in the rucksack.

古典的なバインディングの進化。前部および後部のプラスチック製ハーネスは、それぞれの保持ポストからヒンジ止めされており、ブーツへの取り付けを容易にするために「開ける」ことができ、ブーツを内側にすると確実に閉じることができます。シングルストラップのクロージャーシステムはとてもシンプルなので、説明を与える必要はありません。 New Classicはレンタルプログラムや初心者にとって理想的です。このシステムはシンプルで信頼性が高く、素早く簡単ですが、リュックサックのスペースをもう少しふさぐだけです。

※ 直訳と意訳をないまぜにした拙訳です。誤訳がありましたら申し訳ありません。

長さの調整方法


リアの金属プレートを指で引き上げると、ジョイントバーをスライドできます。


お手持ちの登山靴の長さに合わせて、適当な穴にボルトを差し込みます。


ジョイントバーは完全に引き抜くことができます。


裏返すと、突起があります。


突起のクローズアップです。


この突起は、サイズが小さい登山靴にアイゼンをあわせるために利用します。


左右のジョイントバーを入れ替えて、裏返して突起を上に向けます。


ジョイントバーを本体に差し込むと、突起が引っかかるので、サイズが小さい登山靴に適合します。

こちらの動画が参考になります。

Grivel crampons regulation bar for small size boots.

ストラップ(バンド、テープ)の装着方法(締め方)

登山靴をアイゼンにセットする

フロントのハーネスにストラップを通す


私が購入した登山用品店では、「上から下に通したほうがハーネスを押さえつける力が働くので緩みにくいですよ」と教えられました。まぁ、これはあまりこだわらなくてもいいでしょう。

リアのハーネスにストラップを通す

バックルを通して折り返す


ストラップを足首の前に回して、外側のバックル(金属の輪)に通します。


2枚の輪の間からストラツプを折り返します。

GRIVEL本家が公開している動画

Grivel's New Classic Crampon Binding

末端処理


ストラップの余った部分がブラブラしないように、適当な場所に結びましょう。1回結ぶだけだと、ストラップの先端が何かにぶつかるたびに結び目がゆるんでしまいます。


フロントのハーネスに差し込んで折り返すとよいでしょう。


なおも余ったストラップはさっき作った結び目に通すとよいでしょう。

末端処理は必要か?

そもそも末端処理は必要なのでしょうか。

あまりに末端処理に手間をかけると、ハーネス式の簡便さをスポイルする気がします。

輸入元であるマジックマウンテンの取扱説明書(前掲)にはこう記載されています。

バックルを締めて約10~15cmベルトを残し余分なベルトを切り落とします。

一方、「バックカントリー穂高」さんは、「雪山で手がかじかんでいたり、厚い手袋をしている状況で、手に巻き付けて締めあげることができるように末端は長めに残しておいたほうが良い」旨、主張されています。

失敗するな!アイゼンのベルトをカットする前に BC穂高

もし切り過ぎてしまったら、ストラップだけ買い直しましょう。

完成図

外側

内側


この写真では、つま先やかかとが浮き上がっています。もっと強く締めあげたほうが良いですが、やり過ぎると足を締め付けて血行を阻害するおそれがあります。ジョイントバーはある程度しなるので、実際の歩行で体重がかかると靴底の曲線になじみます。

より厳しい氷雪壁でわずかな緩みがスリップにつながる登攀では、ソールをがっちりくわえ込むワンタッチ式を使うべきです。

ストラップをゆるめる

プルタブを後方に引くと、ストラップを簡単にゆるめることができます。

アコーディオンは装着しなくても大丈夫


ジョイントバーに雪や氷が付着しないように、「アコーディオン」と呼ばれる雪除け用のプラスチック器具が付属しています。

私は装着していません。登山用品店のスタッフさんも「アイゼンを短く収納できるように付けない人が多い」とおっしゃっていました。いまのところ、ここに雪が付着して困ったことはありません。


LOWAの登山靴チェベダーレ(US8.5)に合わせた長さです。


アコーディオンがなければ、こんなに短く収納できます。

この記事を書いたあと、残雪の白馬岳(3月下旬、快晴、気温0℃前後)に登ったら、見事に高下駄が出来ました。土踏まずのみならず、爪先側、かかと側にも雪が付きやすかったです。

ストラップ先端のほつれを補修する

ストラップの先端がほつれると、ハーネスやバックルに通しにくくなります。

ほつれてきたら、ライターの火であぶったり、接着剤を塗ったりして固めましょう。


ただし、固め過ぎは禁物です。先端の三角形をアロンアルフアで固めたら……。


ストラップを引き抜くときなど、むだに引っかかりやすくなりました。

先端の切り口に沿った2~3ミリだけを固めたほうがよいでしょう。

補修がきかないほどボロボロになったら、ストラップだけ買い直すという手があります。

グリベルのアイゼンの選び方

グリベル社は「エアーテック・ニュークラシック」以外にも多くのアイゼンを製造しています。

MAGIC MOUNTAIN社のサイトで日本語カタログ(PDF)が公開されています。

選び方については、バックカントリー穂高さんのYoutube動画「冬山登山 アイゼンの選び方」がとても参考になります。

おおまかに用途や特性を分類してみました。

厳冬期の高山帯(スタンダード)

「エアーテック」シリーズが含まれます。日本限定仕様の「J」シリーズが2017-2018年シーズンより追加されました。

エアーテック・ニュークラシック

ベルト固定式。前コバ、後コバがあろうがなかろうが、固い登山靴だろうがソフトブーツだろうが、装着できます。登山ガイドさんはあえてこのタイプを選び、お客さんがアイゼンを落としたり故障したりしたとき貸し出せるよう備えるそうです。

エアーテック・Jクラシック

ベルト固定式。爪先側のベイルがナイロンベルトなので、より多くの登山靴に適合しやすく、痛み具合を目視しやすいです。(2017-2018シーズンに登場)

エアーテック・ニューマチック

セミワンタッチ式。前コバなし、後コバありの登山靴に適合します。

エアーテック・Jマチック

セミワンタッチ式。前コバなし、後コバありの登山靴に適合します。爪先側のベイルを「クランプオーマチックベイルハンガー」と交換すれば、ワンタッチアイゼン(エアーテック・オーマチックSP)に変身します。(2017-2018シーズンに登場)

エアーテック・オーマチックSP

ワンタッチ式。前コバあり、後コバありの登山靴に適合します。

厳冬期の高山帯(エキスパート)

「G12」シリーズが含まれます。「エアーテック」シリーズと基本構造は同じです。名前の「G12」を「エアーテック」と読み替えれば、ほぼ同じ説明文となります。

パッと見てすぐにわかるちがいは躯体が黒いところです。爪が長く、氷雪により深く刺さるように設計されています。爪が長い分、パンツの裾や岩角に引っ掛けやすいので慣れが必要です。摩耗した爪を研ぎながら、長く愛用できます。

G12 New Classic

G12・Jクラシック

G12 New Matic

G12・Jマチック

G12・オーマチックSP

低山~中級山岳の雪山入門

「G10」シリーズが含まれます。爪の数が少ないだけでなく、爪の先端があまり鋭くありません。厳冬期の高山にステップアップするつもりなら、値段も重量もあまり変わらない12本爪(エアーテックシリーズ、G12シリーズ)を最初から買うことをおすすめします。

G10・ニュークラシック

ベルト固定式。ジョイントバーが柔らかく、ソフトブーツに適合します。

G10 Wide

ベルト固定式。ジョイントバーが柔らかく、爪先が幅広のソフトブーツに適合します。

G10 New Matic

セミワンタッチ式。ジョイントバーが固く、底が固い登山靴に適合します。

アイスクライミング向き

G14・オーマチックSP

ワンタッチ式の先鋭モデル。ピッケルの先端のような前爪は、蹴りこんだとき氷が割れにくいように設計されています。

G14・ニューマチック

セミワンタッチ式。前コバがない厳冬期用登山靴に適合します。アイスクライミングを志向するなら、登山靴のソールをがっちりくわえこむ「G14・オーマチックSP」をおすすめします。

スキーツアー向き

「エアーテックライト」シリーズが含まれます。アルミ製なので摩耗しやすく、耐久性に劣ります。「スキーツアーで部分的な難所で使うかもしれない」とか「ヒマラヤ登山で軽量化を追求したい」といった場面を想定しています。

エアーテックライト・オーマチック

ワンタッチ式。ジョイントバーが固く、プラスチックブーツに適合します。

エアーテックライト・ニューマチック

セミワンタッチ式。ジョイントバーが固く、前コバがない厳冬期用登山靴に適合します。

エアーテックライト・ワイドニュークラシック

ベルト固定式。爪先が広めで、ジョイントバーが柔らかく、ソフトブーツに適合します。

変更履歴

  • 初公開(2018年3月25日)
  • 「グリベルのアイゼンの選び方」を追加しました。(2019年1月9日)
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