- 登山レインウェアのおすすめを先輩が語る
- 登山レインウェアのおすすめ【レインジャケット編】
- ゴアテックス(GORE-TEX)
- ゴアテックス パックライト(GORE-TEX Paclite)
- ゴアテックス アクティブ(GORE-TEX Active)
- ゴアテックス (GORE WINDSTOPPER)
- ゴアテックス シェイクドライ(GORE-TEX SHAKEDRY)
- ゴアテックス プロ(GORE-TEX PRO)
- パーテックス シールド(Pertex Shield)
- ハイベント(HYVENT)
- ドライQ(Dry.Q)
- ネオシェル(NeoShell)
- イーベント(eVent)
- ドライエッジティフォン50000(DRYEDGE TYPHON 50000)
- ウェザータイト(weathertite)
- エバーブレス(EVERBREATH)
- 登山レインウェアのおすすめ【レインパンツ編】
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登山レインウェアのおすすめを先輩が語る
とある大学ワンダーフォーゲル部の先輩OBと新人が登山用品店を訪れて、レインウェアを選んでいます。新人はGWの新入生強化合宿でゴム引きのカッパを持ってきて、雨のなか蒸れ蒸れになりながら数時間歩きました。
これから登山を本格的にやるなら、ゴム引きのカッパはマズイぞ。
あれ、実家の親父がバイク通勤で使ってたのをくすねてきたんですよ。
俺も昔、ゴム引きのカッパで冬山に登ったなぁ。「理論編」は読んだか?
防水透湿素材の性能のちがいが結局よくわかりませんでした。
まぁ、いまどき登山用品店に並んでいる有名メーカーの製品なら、どれを選んでも大外れすることはないよ。
それを言ったら、話が終わるじゃないですか。先輩ならどの防水透湿素材を選びますか。
登山レインウェアのおすすめ【レインジャケット編】
ゴアテックス(GORE-TEX)
防水透湿性能に定評があって、耐久性も十分。いちばん汎用性が高い。きみはレインウェア以外にもいろいろ揃えなくちゃいけない装備があるだろう。節約したいなら、ひとまずモンベルの「ストームクルーザー」を買っとけば間違いない。登山やアウトドア雑誌のレビュー記事で常連だ。
話を早く終わらせようとしてませんか。えーと、耐水圧50,000㎜以上、透湿性35,000g/㎡/24h……。耐水圧は20,000㎜あれば十分ってことでしたよね。やはり蒸れにくさがいちばん気になります。35,000g/㎡/24hって、高いんですか。
3層構造の防水透湿素材では最高レベルかな。数値上は50,000g/㎡/24hなんて素材も出てきてるけど、「ゴアテックス」の名前を冠した製品はゴアテックス社の厳しいテストをクリアしているので信頼性が高い。いくら素材の元々の性能が高くても、長時間雨に打たれたら水漏れするとか透湿性が損なわれるとか、製品の仕上がりが悪かったら困るだろう。
うーん、モンベルかぁ……。
おいおい、いっぱしブランドを選り好みするのか。ノースフェイスの「クライムライトジャケット」はどうだ。これもレインウェアの定番だ。
あぁ、これね。ノースフェイスの伝統芸と言っていいかもしれない。俺はノースフェイスブランドが好きでさ。インターネット普及前は登山用品店で紙のカタログをもらってきて穴があくほど眺めたもんだけど、スペックがきちんと記載されていないので困ったもんだ。たとえば冬山用のトレッキングパンツを検討したとする。「厚手」「裏起毛」とは書かれているんだけど、重量が書かれていないので、どれくらいのボリュームなのかさっぱりわからない。そのへんは「スペック厨」とも言えるモンベルと対照的かな。まぁ、モンベルだってダウンシュラフでは羽毛量を記載しないとか、突如として秘密主義になるダブルスタンダードはいただけないけど……。
ストームクルーザーと比べると、なかなかお高いですね。これって雪山でも通用しますか。
厳冬期の三千メートル級は厳しいけど、新雪期や残雪期ならそこそこ通用する。兼用するなら、もう少し頑丈な「オールマウンテンジャケット」がおすすめだ。
表生地が70デニールですか。夏は暑そうですね。
脇下にベンチレーション(ピットジップ)があるし、フロントファスナーや両側のポケットのファスナーを開放して、ベルクロだけ留めれば、かなり換気できる。岩稜や雪山でガシガシ使い倒せるが、さすがに重厚すぎるかな。カリマーのレインジャケットはどうだ。
胸ポケットが使いやすそうですね。
ゴアテックス パックライト(GORE-TEX Paclite)
「トレントフライヤー ジャケット」はたしかに薄いですが、裏地がツルツルというかザラザラというか……。
「ゴアテックス パックライト」は裏にトリコットやニットを貼り付ける代わりに、特殊なコーティングをして、軽量化と透湿性の向上をはかっている。薄いぶん透湿性が阻害されにくいという理屈だ。耐水圧50,000㎜以上、透湿性44,000g/㎡/24hとされている。しかし、裏地が結露しやすい気がしなくもない。だいいち肌触りが良くない。とにかく軽量化優先だから、雨が降りそうもない登山でザックの底にしのばせるのに向いている。と言いながら、有名メーカーがこぞって採用するのが目につく。一見、主力のラインナップで「ゴアテックス」のタグがぶら下がっている。手に取ってみたら「パックライト」だったということがよくある。
ノースフェイスの「クラウドジャケット」はじつにオーソドックスだ。表生地が50デニールと重厚だから、てっきりスタンダードなゴアテックスかと思ったらパックライトだったという良い例だ。ノースフェイスは海外ブランドだけど、日本で出回っているのは日本企画の製品ばかりだから、昔ながらの日本人体型に合いやすい。
高級志向のマムート製品も「クライメートレインスーツ」ならお手頃だ。これも表生地は50デニールと重厚だ。海外サイズなので要注意。
ゴアテックス アクティブ(GORE-TEX Active)
「アクティブ」ってことは、より活動的で汗をかきやすい場面でも快適だってことですか。
より軽くて薄いメンブレンに裏生地を喰いこむように一体化させているらしい。もちろんメンブレンが薄いってことは耐久性や防水性がある程度落ちることは覚悟しなくちゃいけない。この「パンマージャケット」独自のこだわりとして、従来は裏地として使われていたマイクログリッドバッカーを表に使うことによって、透湿性能を最大限に引き出している。こう言うと、耐久性や防水性は大丈夫なのかと心配になるだろう。種明かしすると、マイクログリッドバッカーはもともとゴアテックスプロ(後述)の裏地として開発された。本来は表地に使う「織物」を裏地に使って耐久性を高める発想だった。その発想をもう一度逆転させて表地に使ったというわけだ。
同じゴアテックス アクティブでも、こちらは脇下のジッパーとか、メッシュの内ポケットとか盛りだくさんだ。
ピットジップについては賛否両論あるが、どんなに優秀な防水透湿素材でもオープンエアにはかなわない。
価格帯が高いですね。
高くて軽い。ウルトラライトと快適性を両立したいセレブ向けかな。
ゴアテックス (GORE WINDSTOPPER)
この「ウインドストッパー」ってのは何ですか。
元々は「ゴアドライロフト」と呼ばれていた。2007年に「ウインドストッパー」と改称され、さらに2018年にゴアテックスシリーズが再編されて「GORE-TEX INFINIUM」という掴みどころのない分類に編入された。やっと落ち着いたかと思いきや、2023年から2024年にかけて、素材がePTFEからePEに置き換わる大きな変革のなかで、再度「WINDSTOPPER」に再編された。その名の通り、ウインドブレイカーやソフトシェル等、防風性を重視する用途に使われる。モンベルの「パーマフロスト ダウンパーカ」のようにダウンジャケットのシェルに使われることもある。透湿性能が高く、防水性がある。何年か前まで「ウインドストッパーにはシームシーリングをほどこしてはならない」という謎の制限があって、それが解禁されてから、「レインウェア」を謳う製品が出てきた。メンブレン自体がスタンダードなゴアテックスとどうちがうのかはよくわからない。ゴアテックス社にはもっと客観的な情報を公開してほしいね。公式サイトを見ても玉虫色の文言が並ぶばかりで具体的なイメージが湧きにくい。
……。
ゴアテックス シェイクドライ(GORE-TEX SHAKEDRY)
GORE-TEX SHAKEDRYは生産終了となりました。
登山用と言うには無理があるけど、「ゴアテックス シェイクドライ」は最高レベルの透湿性80,000g/㎡/24hを誇っている。
革ジャンみたいな手触りですね。
ゴアテックス メンブレンが剥き出しになっている。まぁ、剥き出しと言っても耐久性を高めるために特殊なコーティングをほどこしているらしいが……。テント泊の重装備をかついで長時間行動すると、あっという間に擦れ切れてしまいそうだ。軽荷の日帰りハイキングくらいは大丈夫じゃないかな。
さっきの「パックライト」は裏生地がなくて、「シェイクドライ」は表生地がないってことですよね。同じ2層なのに透湿性が倍くらいちがうのは何故ですか。
「シェイクドライ」は表側にナイロン繊維がないだろう。雨に打たれ続けても保水しない。撥水性が持続するから、透湿性が損なわれにくい。
撥水性と透湿性って、どう関連するんですか。
表生地の撥水性がなくなると、ナイロン繊維が保水して、水の膜に覆われる。すると、せっかくメンブレンを通過してきた水蒸気がそこで堰き止められてしまうんだ。
ポケットは左胸にひとつだけですか……。
こっちは一見、両胸ポケットに見えるが、ただのベンチレーションだぞ。ハハハ。インナーに胸ポケットがあれば、ここから手を突っ込んでアクセスしやすいとも言える。まぁ、トレイルランニング用だから、ポケットにあれこれモノを入れて活動することは想定していない。あと、ゴアテックスではないが、シェイクドライと同じ発想で「アウトドライEX」というメンブレンを剥き出しにした製品がコロンビアから出ている。
ゴアテックス プロ(GORE-TEX PRO)
これは「プロ」と付いているくらいだからエキスパート向きですね。
レインウェアと言うよりは雪山(冬山)用のシェルだよ。はっきり言って、無雪期にはオーバースペック。防水性は申し分ないけど、問題は表生地だ。雪山で転倒、滑落したときに雪面を滑りにくいようにアンチグリース加工がほどこされている。と言うことは、雨粒だってまとわりついて保水しやすいはずだ。
黄色と黒のツートンカラー、かっこいいなぁ。
ノースフェイスと言えば、この配色とデザインを思い浮かべる。昔々、おれは高価なシェルに手が届かないもんだから、似たデザインのレインウェアを買って、雪山でも使ってたよ。
パーテックス シールド(Pertex Shield)
「パーテックスシールド(Pertex Shield)」は大まかに「Pertex Shield」「Pertex Shield Pro」「Pertex Shield air」の3種類に分かれている。「Pertex Shield」は親水性無孔質で耐水圧:20,000㎜、透湿性:20,000g/㎡/24hとされている。「Pertex Shield Pro」は防水透湿性は同等だが、疎水性多孔質によって通気性を確保している。最新の「Pertex Shield air」はナノファイバーを積層させた素材らしく、より高い通気性を謳っている。
- pertex shield : 親水性無孔質
- pertex shield pro : 疎水性多孔質
「親水性無孔質」と「疎水性多孔質」はどうちがうんですか。
「親水性無孔質」はその名のとおり穴が開いておらず、メンブレンにいったん水分を吸着してから排出する。「疎水性多孔質」は水を含まず、微細な孔から水蒸気をダイレクトに排出する。
どちらが快適なんですか。
「親水性無孔質」は水蒸気が飽和しないと透湿しない。「疎水性多孔質」は水蒸気が飽和する前にダイレクトに透湿する。蒸れを感じる前に透湿するという意味では「疎水性多孔質」のほうが快適なはずだ。こう言うと「親水性無孔質」の分が悪いみたいだが、孔がないぶんメンブレンを薄くしやすく、軽量コンパクトな製品ができる。
ハイベント(HYVENT)
「オプティミストジャケット」はウインドブレイカーかと思ったら、レインウェアですか。
表生地が6デニールと薄い。「ハイベント」はノースフェイスの独自素材だ。俺はこの手の防水透湿素材を「なんちゃらテックス」と揶揄しているんだが、これは防水透湿性能は耐水圧20,000㎜、透湿20,000g/㎡/24hと登山用レインウェアとして十分なスペックだ。袖口がベルクロ留めじゃなくて、スナップボタンになっていて保水しにくい。(☞ Youtube動画「Superhike OPTIMIST JACKET」)
「スパイラルジャケット」は耐水圧3,000㎜、透湿 30,000g/㎡/24hとなってますよ。透湿性が高い。耐水圧3,000㎜ってずいぶん低いんじゃないですか。
この耐水圧は誤記じゃないかとさえ思うね。商品タグに記載しているから間違いないんだろう。
スマホで公式サイトを見ましたが、防水透湿性能のスペックが記載されていませんよ。
これまたノースフェイスの伝統芸だな。こっちの「ストライクトレイルフーディ」は耐水圧20,000㎜、透湿性40,000g/㎡/24hとしっかり記載されている。
同じハイベントでもえらくスペックがちがいますね。
ハイベントは過去に東レのエントラント技術を採用していたらしい(☞ PEAKS 2015年4月号p.88「エントラント開発、36年の軌跡」)。東レはメーカーの要望に応じて調整した素材をOEM提供している。ただし、現在のハイベントがそうかどうかはわからない。
エントラント?
1979年に登場した防水透湿素材だよ。ゴアテックスの対抗馬とされたが、登山用品店の店員さんは「いやー、あれはゴム引きと変わりませんよ」なんて言ってた。俺はエントラントのシュラフカバーを使ったことがある。たしかに朝起きたらびっしょりと結露して辟易したもんだ。「エントラント」を前面に押し出した製品は登山用品店では影を潜めたけど、その技術は影の立役者として活躍しているんだな。着々と進化し、2017年に「エントラント高通気タイプ」が発表された。《2019年春夏からは多くのブランドで使われるようになるだろう》(☞ PEAKS 2018年4月号 p.190「エントラント高通気タイプをホーボージュンが徹底検証」)と言われていたんだけど、いっこうに登場しないね。そうこうしているうちに2019年春、プロモンテのテント「VB-20」で採用された。
ドライQ(Dry.Q)
この「コヒージョンジャケット」に使われている「ドライQ」も「なんちゃらテックス」の類ですか。
「ドライQ」をフィーチャーしたYoutube動画を見ても、透湿性能の具体的な数値とか、素材のデモンストレーションがないんだよなぁ。伸縮性を謳っているから、ポリウレタン系の素材だと思うけど。
ポリウレタン系?
防水透湿素材はePTFE系とポリウレタン系に大別される。最初に見たゴアテックスはePTFE系だ。
商品タグを見ても、ePTFE系かポリウレタン系か表示されていませんね。
ゴアテックスの場合は決まった商品タグがあるけど、それ以外は明示されないことがほとんどだ。製品の説明書きで「伸縮性」とか「ストレッチ」とかいう言葉が見つかったら、ほぼポリウレタン系だ。ePTFE系はほとんど伸縮しないからね。「ゴアテックス」は昔「ゴワテックス」と揶揄されたくらいだ。
伸縮性はあったほうがいいでしょう。
ポリウレタン系は経年劣化しやすいのが弱点だ。伸縮するってことはいわばナマモノだろ。ナマモノは賞味期限が短いんだよ。同じ「ドライQ」でも、こちらの「ドライステインジャケット」は「ドライQエリート」というePTFE系の素材を使っているらしい。
このジャケット、ずいぶんがっしりしてますね。
レインウェアと言うよりは、冬山でも通用するハードシェルだね。このジャケットは何と言っても両胸ナポレオンポケットがすごい。何がすごいって容量だ。身頃の切り返し部分から肩口まで広大で、テルモスの900㎖くらい楽勝で入る。両胸ナポレオンポケット界のキング・オブ・キングだ。
ポケットにテルモスなんて入れて行動しますか?
マウンテンハードウェアのアドバイザーだったウーリー・ステックは《テルモスも持たず、このウエアの下に普通のボトルを入れていきました》と語っている(☞ ROCK&SNOW 071 春号)。巨大な氷雪壁を軽装備で行動し続けるスタイルだから、軽量化しつつ体温で氷結を防ぐという一石二鳥のノウハウだ。
ネオシェル(NeoShell)
「ネオシェル」ってポーラテックの会社が作っているんですね。
ポーラテックはフリースのイメージが強いね。ソフトシェル素材も作っていて、その最先端が「ネオシェル」だ。水の中に泡をボコボコ噴き出す動画には驚く。ポリウレタン系で伸縮性に富むから、メーカーによっては「ソフトシェル」に分類するけど、防水性はしっかり確保されている。「ハードシェル」寄りの「ソフトシェル」と言っていいかもしれない。
「ハードシェル」と「ソフトシェル」のちがいが今一つわからないんですが。
厳密な定義はない。特に「ソフトシェル」については定義が曖昧だ。「ハードシェル」は原則として完全防水だが、だからと言って「レインウェア」を「ハードシェル」とは呼ばない。雪山(冬山)縦走や岩壁登攀で酷使してもへこたれない頑丈さ、耐摩耗性を含んでいると思う。「ハードシェル」は完全防風で伸縮性に乏しく、「ソフトシェル」は通気性を確保して伸縮性に富むとも言える。防水透湿素材(メンブレン)をサンドイッチしていれば「ハードシェル」で、サンドイッチしていなければ「ソフトシェル」と分類してもいい。ただし、防水透湿素材を使っていても、縫い目を目止めしていなければ、完全防水ではなく、縫い目からかなり通気するから「ソフトシェル」に分類される。
この「ツルギライトジャケット」はアノラックと言うんですか、プルオーバータイプは着脱が面倒じゃありませんか。
どうせ行動中はザックのウエストベルトでふさがったり、登攀用のギアをぶらさげるからファスナーを全開する場面は少ない。そう割り切るなら大いにアリだよ。前屈したり座ったりしたときに腹の前がゴロつかない。軽量化できて、防水性も高まる。一石三鳥だ。
やはりこっちのジャケットタイプが使いやすそうだなぁ。
イーベント(eVent)
「イーベント」は「ネオシェル」ほどではないけど通気性が高い(☞ Youtube動画「Gore-Tex Pro Shell vs. Active Shell, eVENT & NeoShell」)。「イーベント」は「ゴアテックス」と同じePTFE素材だけど、内側に疎水性のコーティングをほどこしていないぶん通気性が確保されて、逆に耐水圧は低くなる。両胸ナポレオンポケットはモノを出し入れしやすい。
これ、妙に腕が長いですね。
サムホールに親指を通して、手の甲まで覆うタイプだ。違和感はあるけど、雨水の侵入を防ぐには効果的だろう。日本人がこのタイプを好まないのは何故だろうね。家の玄関で土足を脱いで畳で暮らす日本人と、部屋まで土足で踏み込んでそのままベッドに身を投げ出す西欧人とのちがいだろうか。日本人は手首から先を不浄のものとして区別したいんだと思う。
……。
「イーベント」で注意したいのは「隠れイーベント」だ。さっきの「ドライQエリート」は「イーベント」のライセンス供与を受けているらしい。ちなみにモンベルが2018年シーズンにスリーピングバッグカバー(シュラフカバー)でひっそりと採用を始めた「ブリーズドライテック プラス」にも「PTFE」という記載が見える。耐水圧20,000㎜以上、透湿性35,000g/㎡/24hと若干耐水圧が低いあたりが「イーベント」を想起させる。2019年シーズンには「マイティドーム」シリーズのテントで採用した。
ドライエッジティフォン50000(DRYEDGE TYPHON 50000)
これ、耐水圧20,000㎜以上、透湿性50,000g/㎡/24hですって。凄くないですか。
「ドライエッジティフォン50000」はミレーが2017年に発表した独自素材だ。もともとミレーには同じスペックで「ドライエッジ W7 50000」という独自素材があった。「W7」は防水透湿メンブレンが7ミクロン、裏地が7デニールであることに由来する。優れた性能をアピールするには複雑でわかりにくい名称だった。フランス語で台風を意味する「TYPHON」と、高い透湿性をあらわす「50000」にフォーカスしたことで注目度が上がったんじゃないかな。軽くしなやかで、伸縮性が高く、肌触りが良い。フロントファスナーのダブルジッパーがうれしいね。春や秋に街中で羽織っても良さそうだ。オールシーズン、オールシチュエーションで使い倒せるだろう。
ウェザータイト(weathertite)
こっちは耐水圧15,000㎜以上、透湿性50,000g/㎡/24h。また凄い奴ですよ。
エバーブレス(EVERBREATH)
これは耐水圧20,000㎜以上、透湿性10,000g/㎡/24hですか。透湿性が今一つですね。
ファイントラックの独自素材「エバーブレス」はA-1法による数値を公開している。水蒸気の透過量をはかる、より肌感覚に近いテスト方法だ。他で使われているB-2法より原理的に低い数値になる。A-1法で達成できる最大値は12,000g程度といわれている(☞PEAKS 2015年4月号p.90「エントラント開発、36年の軌跡」)。
理論値の上限に近いんですね。おっ、伸縮性が高い。でも、伸縮性が高いと経年劣化しやすいんですよね。
そこも抜かりない。ポリカーボネート系ポリウレタンを採用し、加水分解による劣化スピードが極めて遅いという触れ込みだ。
両脇のファスナーはポケットかと思ったら、ベンチレーションですか。うっかりモノを入れようとして落としそう。
下に着たウェアに両脇ポケットがあれば、ここからアクセスしやすいとも言える。ちなみに、右胸内側にもポケットがあるぞ。
登山レインウェアのおすすめ【レインパンツ編】
レインパンツはたいていジャケットと対になった製品があるから、それを買っておけば大外れすることはない。
疲れてきたから話を早く終わらせようとしていませんか。
あえて言えば、レインジャケットよりも伸縮性を優先したい。さらにサイドフルオープンファスナーが付いていればゴツい登山靴を履いたまま着脱しやすくて、換気しやすい。
「換気」って、横を開け放したまま歩くんですか。
腰から膝くらいまで開け放すと、足腰まわりの蒸れを解消しやすい。裾にホックがあれば留めて、膝下も開放する。はた目にはだらしなく映るだろうね。
雨がやんだら脱げばいいじゃないですか。
やんだと思ったらまた降ってくるんだよ。そのたんびに脱いだり履いたりしていられない。
具体的な製品は……。
モンベルの「ストームクルーザー フルジップパンツ」はサイズ展開が豊富で選びやすい。しかしゴアテックスは伸縮性に乏しいのが難点だ。伸縮性を優先するなら、透湿性は落ちるけど「ストレッチレイン フルジップパンツ」かな。ただし、この2つはダブルジッパーではないので、上側だけ解放することができず、ベンチレーションとして利用しにくいという落とし穴がある。サイドフルオープンにこだわらなければ、他メーカーの製品がよりどりみどりだ。いくつか見繕ってみよう。
ノースフェイスの「オールマウンテンパンツ」は信頼のゴアテックス製。裾から腰あたりまでファスナーが付いて、ダブルジッパーで太ももの横を開放できる。
マウンテンハードウェアの「コヒージョンパンツ」も同様だ。伸縮性が高いドライQを使用し、比較的安価だ。
ファイントラックの「フォトンパンツ」は伸縮性の高さでは随一だ。裾から腰あたりまでファスナーが付いて、ダブルジッパーで太ももの横を開放できる。ロング丈、ショート丈モデルが用意されているからサイズを合わせやすい。
思い出した。先輩のレインパンツに同じロゴが付いてた。雨が降ってきたら登山靴のままさっと履いて、ときどき太ももの横をあけてましたよね。僕は汗で蒸れ蒸れになりながら、じと~ッと見てました。
あれは雪山用に買った「アルマパンツ」(廃番)だ。厚すぎないからレインウェアとして通用する。ファイントラックのラインナップからサイドフルオープンタイプが消えたのは残念だ。
対話は堂々巡りし、結局この日は決められないまま帰ったのでありました……。
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〇〇ハックでは読めない登山用レインウェアの選び方
レインウェアは常時着用せず、行動中はザックのなかに収納する。山に出かけて帰宅するまで、一回も使わないことさえあります。そのため軽量コンパクトさが優先される傾向にあります。内側にたくさん着込むことを想定しないため、シルエットは比較的細身です。
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