トレッキングパンツの到達点、ノースフェイスの「アルパインライトパンツ」「バーブパンツ」の違いを比較レビュー

ノースフェイスの「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」は全アウトドアブランドを代表する超定番ロングセラーのパンツです。

基本はトレッキングパンツですが、その汎用性の高さによって普段使いから仕事、旅行、登山まで全般をカバーしてくれます。

  • 就寝時のパジャマ代わり
  • 街着(ビジネスカジュアルな仕事場を含む)
  • 運動着(ジョギング、ボルダリング)
  • 登山、クライミング
世の中のズボンはこれだけでいい」と言いたくなります。
そこで問題です。「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」のどちらを買ったら良いのか。
結論を先に言うと、「両方とも買えば?」。筆者は2着ずつ所有しています。
長い旅路の果てにたどり着いた両アイテムがどのような特徴をそなえているのか、どう使い分けたらよいのか、違いを比較し、レビューします。
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「アルパインライトパンツ」を買うべきか、「バーブパンツ」を買うべきか。それが問題だ

仕様を比較

アルパインライトパンツの仕様

1年を通して山岳エリアでの行動を支えるパンツ。リサイクルナイロンとポリウレタンの混紡生地は高いストレッチ性を持ち、ニットのような伸縮性と着心地のよさが特徴です。テーパードシルエットでありながら、立体的なパターンでスムーズな脚上げを妨げません。ハーネス使用を想定し、バックルを設けないすっきりした腰周り。フロントのファスナーはダブルスライダー仕様です。静電気の発生を抑える静電ケア設計採用。シンプルなデザインで、クライミングからハイキングまで汎用性の高い1着です。

FabricAPEX Aerobic Light Recycled Nylon(ナイロン92%、ポリウレタン8%)
Functionフロントファスナーはハーネスを考慮したダブルスライダー仕様/ウエストスピンドル仕様/テーパードシルエット
原産国ベトナム
SizeS、M、L、XL、XXL
Weight約385g(Lサイズ)
Colorアスファルトグレー、ケルプタン、ニュートープ、アーバンネイビー、ブラック、スレートブラウン

バーブパンツの仕様

ハイキングから縦走登山、クライミングまでオールラウンドに使用できる、リラックスフィットの定番パンツ。リサイクルナイロンとポリウレタンの混紡生地は高いストレッチ性を持ち、ニットのような伸縮性と着心地のよさが特徴です。ややテーパードのシンプルなデザインで、スッキリした印象に。左右サイドにベンチレーションが付き、衣服内のムレを効率的に排出します。静電気の発生を抑える静電ケア設計を採用しています。

FabricAPEX Aerobic Light Recycled Nylon(ナイロン92%、ポリウレタン8%)
Function太ももサイド部分にファスナー開閉のベンチレーション仕様/両脇ファスナーポケット/右後ろのファスナーポケット/裾アジャスターコード
原産国ベトナム
SizeS、M、L、XL、BM、BL
Weight約450g(Lサイズ)
Colorアスファルトグレー、ブラック2、ケルプタン、ニュートープ、アーバンネイビー、ブラック、スレートブラウン

シルエットを比較

「バーブパンツ」の上に「アルパインライトパンツ」を重ねて置いてみました。「アルパインライトパンツ」をすこし上にずらしています。サイズ感は同じですが、「アルパインライトパンツ」はやや細身で、テーパードシルエットの度合いが強いです。

冬の登山で厚手のタイツを重ね着すると、「アルパインライトパンツ」は締め付け感が強くなります。「バーブパンツ」のほうが当然ゆとりがあります。

が、さらにハードシェルパンツを重ね着することまで考慮すると、細身の「アルパインライトパンツ」のほうが抵抗が少なく、足上げしやすいかもしれません。着る人の体型や、何を重ね着するかによって評価が分かれるでしょう。

公式サイトに掲載されているサイズ寸法(実寸)は以下のとおりです。

「アルパインライトパンツ」のサイズ寸法(実寸)

ウエスト囲ヒップ囲ワタリ股下脇丈裾幅
S729632769917
M75101337810218
L78105358010519
XL81109368210819
XXL84113378411120

「バーブパンツ」のサイズ寸法(実寸)

ウエスト囲ヒップ囲ワタリ股下脇丈裾幅
S7497317410019
M77101337610320
L80105347810620
XL83110368010921
BM83110367610521
BL86114377810822

伸縮性、足上げのしやすさを比較

主要な生地の素材は同じAPEX Aerobic Light Recycled Nylonで、全体の厚みがほぼ同じ(「アルパインライトパンツ」のほうが微妙に薄い気がする)。伸縮性については互角です。

「アルパインライトパンツ」は膝周辺が立体的に裁断・縫製されて、着古したジーンズのように膝が出ています。ハードシェルパンツでよく採用される「脚を軽く曲げた状態を基準とすることによって足上げをしやすくする」技術です。一日に何万歩も歩く登山において疲労感の軽減を期待できます。脚を深く曲げ伸ばしする場面が多いクライミングでは言わずもがなです。

「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」を畳んで並べると、「アルパインライトパンツ」のほうが歪みが多いことに気づきます。膝だけでなく、お尻や股下が立体的に裁断・縫製されています。

他方、「バーブパンツ」はノータックのスラックスのような、すっきりとしたシルエット。街着として着回すのに向いています。膝のロゴがなければ、仕事場に着て行ってもバレないかもしれません。

あとは感覚的なちがいをどう評価するか。やや細身の「アルパインライトパンツ」のほうが足の曲げ伸ばしに素早く追従するのは確かですが、脚全体にまとわりつく感覚や、膝周辺の縫い目が肌に擦れる感触を嫌う人がいるかもしれません。やや太い「バーブパンツ」のほうが伸縮性とズリ上がりのコンビネーションによってツッパリ感が少なく、自然体でいられるという見方もできます。

前節「シルエットを比較」で述べたように、タイツやハードシェルパンツと重ね着した場合にはまた評価が分かれることでしょう。

腰回りの調節機構を比較

「アルパインライトパンツ」は腰紐ウエストコードを締めるスピンドル仕様。バックル式のようにパーツが出っ張らず、クライミング用のハーネスと干渉しにくいのがメリットです。ポケットに重いものを入れるとズリ落ちやすいのがデメリットですが、ハーネス装着時には股下から吊り上げる格好になるので、あまり気にならないでしょう。

「バーブパンツ」はウェビングベルトを締めるバックル式。当然ながら調節しやすく利便性が高いです。バンドの幅が広いぶん、あまり強く締めなくても腰回りが安定します。トイレにしゃがむとき、ワンタッチで脱着できるのはやはり有難い。スピンドル仕様だと、チマチマと解いたり結んだりする手間がかかるんですよね。

前立てを比較

全般に「アルパインライトパンツ」が軽快さを、「バーブパンツ」が利便性の高さを志向しています。が、一点だけ「アルパインライトパンツ」特有のギミックがあります。

前立てのファスナーがダブルスライダー仕様で、下から引き開けることが可能。男性がハーネスを装着したまま用を足すことに特化した仕様です。たしかにハーネスを装着していると、おへそ近くのスライダーを探り当てにくいですからね。男性なら共感できるはずですが、皮をはさみにくい😂という利点もありそうです。

女性用モデルは、前立てではなく、左右のポケットのファスナーが下向きに閉まるという謎仕様になっています。

ポケットを比較

「アルパインライトパンツ」「バーブパンツ」の両方とも、ポケットを左右に一つずつ、右後ろに一つを備えており互角です。

「バーブパンツ」の旧モデルでは後ろ側のポケットも左右に一つずつありました。

すべてファスナー付きはアウトドア用ウェアの基本。日常生活とちがって足腰を大きく使う場面が多いので、ファスナーなしだと中身がたちまち押し出されて、脱落・紛失します。

山や海でスマートフォンを紛失しようものなら、帰宅してからの生活の不便さや、おサイフケータイの復旧、二段階認証の再設定をどうするかが気になって、活動を楽しむどころではなくなります。

あえて違いを語るなら、ポケット内部の布地が「アルパインライトパンツ」はメッシュで、「バーブパンツ」は片面がしっかりした生地になっています。

裾を比較

「アルパインライトパンツ」は裾に何もなく、すっきりしています。

「バーブパンツ」は裾アジャスターコードを備えています。特筆すべきは、コードをロックするパーツが、二重になった裾生地の内側に縫い込まれていること。小さな引き手だけが表に出ています。テントであぐらをかいたり、床でストレッチングしたりするとき、肌に当たって痛い思いをしなくてすみます。

旧モデルでは大きめのコードロックが露出していました。

コードロックの抵抗は強めです。絞るときも緩めるときも、片方の手でロックをつまみながら、もう一方の手でコードを引っ張ったり裾を引っ張ったりする必要があります。

この裾アジャスターコードを、足首で絞ってバタつきやズリ上がりを抑えたり、寒気の流入を防いだりするほか、膝回りで絞ってハーフパンツのように履くという応用が可能です。

激しい動きをともなうボルダリングでは、パンツの伸縮性が高いがゆえに裾がズリ上がらず、ヒールフックの邪魔になる(クライミングシューズのカカトで踏んでしまう)ことが稀にあります。そんなときこそアジャスターコードを活用しましょう。

ベンチレーションを比較

「バーブパンツ」は両太腿の外側にあるコンシールファスナーを開けて、蒸れを排出できます。登りハイクアップでオーバーヒートしたときに有難い機能です。

「アルパインライトパンツ」にはこうしたギミックがありません。

重量を比較

カタログスペックとほぼ同じでした。

実測重量
アルパインライトパンツ386g(Lサイズ)
バーブパンツ449g(Lサイズ)

この重量差は次の点に由来します。

  • 「アルパインライトパンツ」は細身なぶん全体の生地の面積が少ない。
  • 「アルパインライトパンツ」は微妙に生地が薄い感じがする。
  • 「バーブパンツ」のポケットの裏地ははっきりと厚い。
  • 「バーブパンツ」はバックル式のベルト、太もも横のコンシールファスナー、裾のアジャスターコードのぶん重い。

他社製品との比較

ここまで「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」を比較するという観点で書いてきました。他社製品とのちがいにも触れておきます。

トレッキングパンツの素材として、化学繊維では「ポリエステル主体」と「ナイロン主体」が双璧です。

「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」は「ナイロン主体」。ナイロンはポリエステルと比較すると、耐摩耗性に優れ、撥水性が高いとされています。

筆者は他社の「ナイロン主体」のトレッキングパンツも所有していますが、「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」は生地の質感がひときわシャキッとして硬い印象を受けます。硬いけれど伸縮性は申し分ない。微妙にソフトシェル寄りだと言えます。

長雨に耐えるほどの撥水性はないものの、冬山の良く踏まれた雪道のアプローチ(八ヶ岳・赤岳鉱泉とか)ならアウターシェルなしで過ごせるでしょう。

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「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」コーディネート

色の組み合わせ

筆者は両方とも2着ずつ買いました。

アルパインライトパンツアスファルトグレー
■ブラック
バーブパンツニュートープ
■ブラック

下半身ボトムスの3色を上半身トップスと組み合わせます。

  • 黒Tシャツにブラックを合わせると重すぎるので、アスファルトグレーまたはニュートープを合わせる。
  • 白Tシャツにブラックを合わせるとコントラストが強すぎるので、アスファルトグレーまたはニュートープを合わせる。
  • 色物のTシャツにはブラックまたはアスファルトグレーを合わせる。ニュートープだと色同士が喧嘩するか、逆に入り混じってメリハリがなくなることがある。

活動場面における使い分け

全般に「アルパインライトパンツ」が軽快さを、「バーブパンツ」が利便性の高さを志向している、とは既に述べました。

  • アルパインクライミングやボルダリングで運動性能を追求するなら「アルパインライトパンツ」をおすすめします。
  • 一般的な登山やクライミングで使いたい、日常生活で着回したい、リラックスして着たい、という人には「バーブパンツ」をおすすめします。
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「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」まとめ

筆者は登山・クライミングの分野において、ワンダーフォーゲル部時代のジャージニッカボッカに始まり、クライミング熱中期のフリースタイツチノパンをへて、いつしかトレッキングパンツばかりを着るようになりました。色々なタイプ、様々なメーカーのトレッキングパンツを履きつぶしてきました。

「アルパインライトパンツ」と「バーブパンツ」はトレッキングパンツのひとつの到達点だと主張したい。

もちろん上を見ればキリがなく、もっと耐久性や機能性を高め、軽快さを追求した製品があることは承知しています。が、アマチュアの登山・クライミング愛好家にとって価格妥当性というやつを度外視できません。手が届きやすいミドルハイブランド?として、ノースフェイスの製品をこよなく愛する所以ゆえんであります。

予算に余裕があれば1着ずつ揃えて、使い勝手を比較するのが吉。この両アイテムを所有すれば、トレッキングパンツの全て……とまでは行かずとも、80パーセントくらいを理解し、蘊蓄うんちくを語る資格があります(独断)。

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