ナルゲンの「カラーボトル 広口0.5L トライタンボトル」を購入しました。
ナルゲン製品は旧モデルの1.0リットルサイズを所有しています。最近では見かけない角型も所有しています。
わざわざ0.5リットルを手に入れたのは、モンベルの「アルパインサーモボトル0.5リットル」と併用するためです。
登山用魔法瓶のデファクトスタンダードとなる製品を販売していたThermos社のドイツ語読みが呼称として定着しました。英語読みだと「サーモス」です。1988年に登場したチタン製の魔法瓶(480mlサイズで260グラム)に憧れましたが、高価で手が出ませんでした。現在ではステンレス製でも同等の重量で、保温性も申し分ありません。初冬の西穂高岳で朝6時にモンベルのアルパインサーモボトル0.5リットルにポッカレモンを詰めて現地で2杯飲みました。自宅に戻った夜10時頃、残りを飲んでみたら、もちろん熱々とはいかないものの、風雪のなかで飲んだらきっと嬉しいくらいの温かさを保持していました。
テルモス0.5リットルでは足りない
テルモスを手にした昔の写真
テルモスを手にした昔の写真が一枚だけありました。場所は八ヶ岳の中山峠です。
このテルモスの内側はガラス製で、カップには取っ手が付いていました。朝、テントで詰めた熱いポッカレモンを休憩のたびにチビチビ飲むわけですが、0.5リットルのサイズだと少なめに注いでも4回分でした。あとはポリタンクから冷たい水を飲んでいたと思います。
トモ・チェセンは3本のテルモスにコーヒーを詰めてローツェ南壁を目指した
疑惑の登攀として有名になった「ローツェ南壁」(1990年)で、トモ・チェセンは炊事用具を持たず、3本のテルモス(各1㍑)にコーヒーを詰めてアタックしました。
コーヒーは毛細血管を収縮させる作用があるので、高所アタック用の飲料には向かない気がしますが、おそらく好物だったのでしょう。これ大事。
単にお湯を持ち運ぶ
バックカントリー穂高さんはYoutube動画「保温ボトルと熱湯」のなかで、冬山で1リットルのお湯をテルモス(0.5㍑)×2本で持ち運ぶことを推奨されています。
容量と重量の関係で言うと、大きめのボトル(0.9㍑など)で持ち運ぶほうが熱保存の効率が良いと考えがちですが、行動中に何度も栓を開けると温度が下がりやすいため、2本に分けたほうが良いとされています。
ウーリー・シュテックは普通のボトルをウエアの下に忍ばせた
ヨーロッパ・アルプスのスピード・クライミングで有名なウーリー・シュテック(故)は“テルモスも持たず、このウエアの下に普通のボトルを入れていきました。”(ROCK&SNOW 071号「現代クライミングの到達点 Interview Ueli Steck」)と語っています。
大場満朗さんは南極でペットボトルを利用した
大場満朗さんは「南極大陸単独横断行」のなかでこう書かれています。
寒冷地のパーカーの生地はゴアテックスなどが多いが、私のパーカーは東レが開発した新素材の「ダーミーザクス」という生地でできている。その最大の特長は、「時速四〇キロで転んでも破れない」ということである。(中略)さらに裏地にも大きなポケットを一つ。ここにペットボトルに入れた水を収納する。肌に近いところだから、重い水筒を入れなくても水を凍らせてしまうことはない。(p.107~108)
ウーリー・シュテックと同じ考え方です。
シビンとしても利用しました。
【11月15日】テントの中でも気温はマイナス一八度だ。寝ているときにシュラフで身体を横にしてペットボトルに小便をする。し終えるとペットボトルをそのまま寝袋に入れて寝る。テントの中でも凍ってしまって、ストーブで暖めないと捨てられないのだ。(p.94)
「テルモス×2」と「テルモス+ナルゲンボトル」を天秤にかける
極寒地で1リットル程度の飲料(お湯、またはポッカレモン等)を持ち運ぶとして、先達のノウハウを参考にしながら、少しでも軽量化、効率化できないだろうかと思案しました。
テルモスとナルゲンボトルを組み合わせてみましょう。
製品名 | 重量(g) | 個数 | 合計重量(g) |
---|---|---|---|
mont-bell アルパインサーモボトル0.5L | 265 | 2 | 530 |
mont-bell アルパインサーモボトル0.9L | 380 | 1 | 380 |
TERMOS ステンレスボトル0.5L | 280 | 2 | 560 |
TERMOS ステンレスボトル0.9L | 390 | 1 | 390 |
NALGENE Tritan 500ml | 90 | 1 | 90 |
テルモスを2つ持つと当然重くなります。たとえばモンベルのアルパインサーモボトル0.5リットルの重量は265グラムです。これを2つ持つと、530グラムです。1リットルのお湯を持ち運ぼうとすると、その50パーセントくらい余分な重量を担ぐことになります。
0.9リットルのボトルを使えば、重量は380グラムと緩和されます。それでもいいのですが、あと0.5リットルはナルゲンボトルに入れて持ち運んでもいいのではないかと思うようになりました。
mont-bell アルパインサーモボトル0.5L(265g)とナルゲンボトル500ml(90g)を合計すると355gです。こんな細かすぎる計算をしても仕方がないのですが、少しでも荷物を軽量コンパクト化したい場面では有効です。
普通のボトルをジャケットのポケットに入れて持ち運ぶ
テントで沸かした熱いポッカレモンを普通のボトルに詰めてジャケットのポケットに入れて持ち運び、行動の前半はその0.5リットルを飲むというのはどうでしょうか。体温が伝わるので温度が下がりにくい。むしろ朝の一番寒い時間帯にふところから身体を暖めるという積極的な役割を期待できます。テント撤収や身支度で凍てついた手をボトルで暖めてから歩き出すのも良い。数ピッチ行動するあいだに冷めますが、ぬるま湯くらいの温度では飲めるでしょう。この0.5リットルを飲み尽くしたら、テルモスの0.5リットルを飲むという作戦です。
湯たんぽとしても利用可能できます。
この手のビニールやプラスチックっぽい容器に熱湯を入れたら溶けちゃうよ、という古い先入観をもっていたのですが、よくよく品質表示を見れば、90℃のお湯までOKらしい。「すぐに冷めてしまうから燃料の無駄遣いだ」ではなく、「ぬるま湯で飲めれば儲けもの。凍り付くのを遅くできる。メリットが大きい」へと発想を転換しました。
耐熱温度
ペットボトル
私は入山時に0.9リットルくらいのペットボトル入り果汁飲料を持っていきます。
入山初日の水分補給をそれで済ませます。雪山でもアプローチの樹林帯などではさほど寒くないので、凍り付いてしまうことはありません。
初日に余って、次の日の前半くらいはそれで済ませることもあります。ビタミンやミネラルが不足しがちな登山で効率よくそれらを摂取できますし、プラティパスやテルモスが万が一こわれたときのバックアップとして利用できます。
このペットボトルを熱湯容器として使えるといいのですが、残念ながら耐熱温度は限定的です。
- 通常のボトル:50℃
- 耐熱タイプのボトル:85℃
すこし冷ましたお湯なら大丈夫かもしれませんが、どれくらい冷ましたらいいのか加減が難しそうです。
ナルゲンボトル
ここは定評のあるナルゲンボトルでしょう。
- 耐熱温度 本体/100℃、キャップ/120℃
- 耐冷温度 本体/-20℃、キャップ/0℃
ナルゲンボトルの写真
ナルゲンボトル正面
ナルゲンボトル別面
ナルゲンボトルのキャップ
ナルゲンボトルの品質表示
伏兵:100均のボトルの写真
ナルゲンボトルを買って満足していたのですが、100均(キャンドウ)でこんなボトルを見かけました。
100均ボトル正面
透明なボトルもありましたが、あえて見分けやすいオレンジ色を購入しました。
100均ボトルのキャップ
なんと中フタ付きです。広い口から飲料がドバッと口元にこぼれないようにする効果があります。ナルゲンボトルだと別売で400円くらいします。
100均ボトルの品質表示
- 耐熱温度 本体/100℃、フタ・中フタ/120℃
- 耐冷温度 本体/-20℃、フタ・中フタ/-20℃
なんと耐熱温度はナルゲンボトルと同等。耐冷温度はナルゲンボトルより優秀です。
ナルゲンボトルと並べてみると、やや細身で高身長です。ジャケットの縦長のポケットに入れやすそうです。安価で中フタ付き、耐冷温度がより低い、といいことずくめ。うーむ。スペックどおりに優秀なのか、これは試してみるしかありません。もし今一つだったとしてもフードコンテナとして使えるでしょう。ドライフルーツやナッツ、フルグラとか詰めると良さそうです。
テルモスに詰める飲料
テルモスの中に詰めるのはポッカレモンと決めていました。「ポッカレモン」は特定メーカーの商品名です。レモンエキスや砂糖の粉末をスティック状のパックに小分けした定番商品でしたが、最近は液状タイプしか見かけなくなりました。スーパーに行けば他メーカーの粉末タイプの商品があるので、適当に購入します。たいてい120ccくらいのお湯に1袋を溶かします。0.5リットルのボトルであれば熱湯を満たしたあと、3袋を投入するだけです。水分、ビタミンC(クエン酸)、糖分をいちどきに摂取できる雪山向きの飲み物です。コーヒーは好きですが、行動中の水分補給、糖分補給として飲むことはありません。
ポッカレモンの残り香
雪山から帰ったあと、いくら洗ってもレモンの匂いがとれなかったりしますが、その匂いを嗅ぐとそこはかとなく雪山への郷愁を感じます。
匂いをしっかり除去するには、パッキンのゴムを外して、細かい凹部の裏側までしっかり洗って、乾燥させる必要があります。
どうしても匂いがとれず気になるようになったら、別売のパッキンを購入して交換しましょう。
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