「靴下クライマー」という刺さるフレーズに初めて出会ったのは「ROCK & SNOW 2010夏号 No.48 (別冊山と溪谷) 」を読んでいるときでした。
村岡達哉さんがインタビュー記事のなかで「実際に試すと、よさがわかります。ほんと、メリットしかない」と語っておられます。
- 常に靴がキレイ。汗でベトベトにならない。
- 靴下を脱いだり履いたりしなくていい。
- 冬、暖かい。足入れがいい。
- ヒールが脱げやすくなる。
筆者も試して、すっかり気に入りました。それ以来「靴下クライマー」です。
靴下クライマーの予想外のメリット
村岡氏が挙げた以外にもメリットを発見しました。
新しい靴を買うとき、いつも使う靴下を履いて試着できるので、サイズ選びしやすい。
クライミングシューズの売り場にはたいてい極薄半透明のポリエチレンの小袋(スーパーに置かれているような)が常備されており、衛生面の配慮から、靴を試着するとき素足に履くよう求められます。
これが曲者。ポリ袋を履くと滑りがよくなるため、かなり小さい靴でもスルリと足が入るのです。うっかり小さすぎる靴を買うと、ジムや外岩で足の痛みに悶絶する羽目になります。
皮革製の靴ならある程度伸びるまで我慢しますが、そうでない場合はお蔵入りにするか、誰かに売るか譲るかしかなくなります。
ふだん登るときに履いている靴下をたずさえて売り場に出かければ、サイズ選びで失敗しにくくなります。
左右の足の大きさのちがいを調整しやすい。
ベテランのクライマーは「靴下を履くと足裏感覚が鈍る」と言いがちです。
素足とインソールのあいだに布地が一枚増えるぶん、感覚が伝わりにくくなるのは確かです。
が、しかし……。
- そもそも人間の足は左右で大きさがちがう。
- クライミングシューズ自体にも個体差があり、左右で微妙にちがう。
- その日の体調や、一日のなかでも午前と午後では足の大きさが変わる。
繊細な感覚について語るのであれば、左右の足のちがいや、その時々の足の大きさが気にならなくてはおかしいはずです。
実際は、ほとんどの人(上級者を含めて)がある程度妥協して、自分で考えているほど繊細な感覚にとらわれずに、登っているのではないでしょうか。
もし左右の足がハーフサイズちがう人がいたら、そんな人こそ靴下クライマーに転身するのがお得です。靴下の厚みを左右で変えれば、フィット感を揃えることができます。靴下の厚みがちがうため足裏感覚に差はあるものの、少なくとも片方の足だけ緩くてズレやすいという悩みを解消できます。
戦略的に靴のきつさを調整しやすい。
夏はスラブや垂壁の季節(?)。小川山など花崗岩のエリアで微妙なスメアリングや細かいエッジングを求められます。
季節柄、靴の内側に蓄積した皮脂がヌメりやすく、踏みしめにくくなります。靴紐やベルクロをきつく締めても、足が前後にズレるのを食い止めることはできません。
そんなときは靴下を履けば解決。ふだんから靴下を履いて登っている人は、厚手の靴下に履き替えるとよいでしょう。
靴下クライマーは、ジムでも外岩でも、夏でも冬でも、安定した足裏感覚で登ることができます。
トップクライマーに靴下クライマーはいるのか?
ことほどさようにメリットが多い靴下クライマー。トップクライマーはどうなのかと言うと、残念ながら適当な例が見つかりません。
トップクライマーには一般的な靴下クライマー論があてはまりません。パフォーマンスに直結するクライミングシューズに関して金に糸目を付けず、トップ中のトップになると自分用モデルをメーカーに開発してもらえるくらいです。
YouTube動画「【バース・デイ】スポーツクライミング・楢﨑智亜」にこんな問答があります。
Q.どれぐらいで靴が使えなくなりますか?
A.1か月くらいですかね。いい状態なのは。大会で履ける状態だと。
Q.同じ靴を毎回買うんですか?
A.そうです。毎回僕の場合はそうさしてもらっているので。1回に5足とか4足とか送ってもらって。それを慣らしながら年間通して使っている感じですね。日本一靴を消費してます。
トップクライマーには靴下を履いて大事に使うという発想がありません。靴そのものが靴下みたいなものです。
靴がヘタってから次の新しい靴を慣らすやり方だと、年間を通して開催される試合で安定したパフォーマンスを発揮することができません。
ウォーミングアップで新しい靴を慣らし、本気トライではすでに最高に馴染んでいる靴を履く……というルーチンを繰り返し、何段階かのレベルに慣らした靴が途切れないようにします。
皮脂で滑るほど使ったら惜しげもなく廃棄するだけです。
靴下クライマーにおすすめの5本指ソックス
クライミングシューズとはタイトフィットで履くもの。初心者の頃は足の痛みに悩まされますが、上達するにつれて慣れていきます。
ただし、ある種の痛みから逃れられない場合があります。
筆者は、親指の爪が人差し指に食い込んでタコができる症状に悩まされていました。いったんタコができると余計に食い込むようになります。長時間クライミングシューズを履いていると痛くて仕方がありません。
5本指のソックスにすることで悩みが解消しました。
100均の5本指薄手ソックス
クライミングシューズはぎちぎちにタイトに履くのが当たり前なので、靴下の消耗が激しそうですが、実際には靴の中で動かない(擦れない)ので意外ともつ、というのが筆者の印象です。
コスパ最高! 100均の5本指ソックスを一生愛用しても良いのですが、足首からのぞいて見える濃い色がサラリーマンの会社帰りみたいで、哀愁が漂うのが気になります。
楽天で見つけた5本指ソックス×5足セット
- 五本指ソックスは一本ずつ独立しているため踏ん張りが利き、指がしっかり床を掴むので歩きやすく疲労感を減少。5本の指でしっかり地面をとらえ、蹴りだしの瞬発力や着地の安定性も高く設計されています。スポーツ分野にも愛用者多数!
- 素材に上質のコットンを使用し、速乾メッシュデザインにより不快感を徹底除去! 通気性がよく防臭性に優れた蒸れづらいデザイン。
- 耐久性を高めながら通気性と快適性を追求したくるぶし丈の靴下です。
- 足の甲から土踏まずの部分にかけて強化縫製と滑り止めゴムによりずり下がりを防止。靴の横ズレによる摩擦を軽減。ランニングだけでなく日常生活はもちろん、遠足、登山、ゴルフやトレッキングなど様々なアウトドアスポーツにもご使用いただけます。
- 弾力がある素材を使っており伸縮性が良く、優れた履き心地を実現しております。お得な5足セットで通勤や通学など毎日の履き替えにも対応。
素材の詳細は不明。「上質のコットンを使用」とだけ。ポリエステルやナイロンが混紡されていたとしても比率は低そうです。
コットン主体だと吸湿性が高いので足の皮脂や蒸れをすみやかに吸収します。滑りにくい繊維なので靴の中で足がズレにくい。化繊と比べて速乾性は劣るものの、長時間ジムや外岩で登るなら、5足セットを履き替えれば済む話です。
カカトの出っ張りが立体的に裁断縫製されています。
履いていないときは、子供の靴下みたいに小さいです。
伸縮性が高く、履くとメッシュの網目から肌色が透けて見えます。
クライミングシューズを履くと、履き口が5センチくらい露出します。カカト側がやや長めで、ヒールフックのときアキレス腱を保護してくれます。
まとめ
最後に。外岩で休憩中や待機中、はたまたアプローチシューズを履いて移動する時に厚手のソックスと履き替えるのが面倒ではないか、という疑問にお答えします。
5本指ソックスは、指を1本ずつ入れたり出したり、着脱に手間がかかる。ならば着脱しなければ良いではありませんか。5本指ソックスの上に厚手のソックスを重ねて履き、そしてアプローチシューズを履く。これで何ら問題ありません。この5本指ソックスは薄いので、靴への足入れは変わりませんよ。
世に出回っている「クライミングソックス」は1足で千円超えはザラ。しかも、なぜか5本指でない製品が多いです。
⬇️この安価なソックス、いちどお試しあれ。ジョギングやランニングでも使えますよ。
⬇️クライミングシューズからソックスがはみ出るのがイヤな人はこちらをどうぞ。より薄手です。
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