雪山登山、達人が選ぶグローブ

懐かしのハンガロテックス

定番のハンガロテックスのウール製グローブ(Hungarotex Wool Gloves)、持ってました。未脱脂ウールで水を弾きやすい。とうの昔に断捨離しました。

ネットオークションではなかなかのお値段が付いているようです。さして嵩張るものじゃなし、保管しておけばよかった。

未脱脂のウールグローブとオーバー手袋というオーソドックスな組み合わせが、現在はどう置き換わったのか俯瞰します。

手袋を着干しする

雪山の手袋といえば、「単独行」のなかで加藤文太郎が書いています。(正確には、藤木九三による引用)

雪の山で小屋場に着いた時など、そして薪や炭が得られない場合、メタなりアルコールなりを燃やして暖かいものを摂ることの有利なのは解り切っているが、吹雪のはなはだしい夜などチロリチロリと燃える焔を見詰めているだけでもどれだけ気が引き立つか知れない。そして僅かな暖かみを利用して濡れた手袋でも乾かそうと努力することによって、常に生気を取り戻すことが出来る。

これを読んで、雪山ではメインの手袋ひとつを露営中に乾かしながら使うものだと思い込んでいました。いわゆる「着干し」です。

森林限界の上と下とで手袋を使い分ける

バックカントリー穂高さんはYoutube動画「冬山登山 グローブのレイヤーリング方法 厳冬期のアルプスなど高山帯で手を守る」で、1日のなかでも森林限界の上と下とで手袋を使い分けるシステマチックな方法を紹介されています。

樹林帯の登高で濡れた手袋はスペアと交換し、フトコロ(重ね着したアンダーウェアのあいだ)に入れて体温で乾かしながら行動を続けます。濡れては乾かし、濡れては乾かし、とローテーションします。露営中に火であぶるより効率が良さそうです。

達人はどのメーカーのどの製品を使用しているのか、画面で確認できるのはざっと以下のとおりです。(間違いがありましたらすみません)

常用

Gloveland / ウィンドストッパー グローブ

Glovelandの「ウィンドストッパー グローブ」(推定)をはめて、樹林帯を歩き始めます。ウインドストッパーで風を防ぎ、濡れにくく、内側がフリースなので保温性もある。好条件ならこれで稜線上の行動までカバーします。現在、販売終了。

代替として、防水透湿素材としてゴアテックスインフィニアムを内蔵しながらタッチスクリーンに対応したOutdoor Researchの「グリッパー センサー グローブ」をおすすめします。

THE NORTH FACE / L3オーバーグローブ

寒ければノースフェイスの「マウンテンオーバーグローブ」(推定)を上にかぶせます。ペラペラなので少しくらい濡れても乾かしやすく、色々なインナーグローブと組み合わせることができます。現在、販売終了。

後継として、オーバーグローブなのにタッチスクリーンに対応した「L3オーバーグローブ」をおすすめします。

手のひらに山羊革を貼ってモノを掴みやすくした「マウンテンガイドシェルグローブ」もおすすめです。

Black Diamond / ヘビーウェイト スクリーンタップ

フリース製で全ての指がスクリーンタッチ対応。前記の「ウィンドストッパー グローブ」と「マウンテンシェルグローブ」の組み合わせで暑すぎる場合は、内側をコレに交換します。

Bridgedale / メリノグラブ

フリースグローブの予備としてBridgedaleの「メリノグラブ」(推定)を携行します。メリノウール100%なので、少しくらい濡れても冷えにくいです。現在、販売終了。

メリノウール100%の新定番といえばこちら。

もう少し厚手のこちらは手首の折り返しが特徴的です。使い捨てカイロを仕込めるかも?

Black Diamond / スーパーライトミット

中綿はプリマロフト。最高に温かい。稜線専用として、濡らさないように温存します。

参考

常用はされていないようですが、以下の製品も画面に登場します。

Black Diamond/ ソロイスト

中綿はプリマロフト。手のひらは山羊皮で補強。登攀要素が強いルート向き。

Black Diamond / ガイド フィンガー

保温性と操作性を両立する3本指タイプ。厳冬期の登山やバックカントリースキーに適しています。

2019-2020シーズン追加

THE NORTH FACE / L2インサレーショングローブ

バックカントリー穂高さんが別の動画で紹介されているのがこちら。

中綿入りなのにタッチスクリーンに対応。よほど悪条件でなければ、これで雪稜を行動できて、タッチスクリーンが可能です。2022年現在、販売終了。

後継として、「L2インサレーショングローブ」を検討したい。

モンベルの値頃品で揃える

私は値頃品で揃えました。結果的に全てモンベル製品です。

モンベルの小物のなかでも手袋は驚くほどバリエーションが豊富で、モンベルショップに行けば全ラインナップを見て触れるので、自分なりのシステムを構築しやすいです。

mont-bell /トリガーフィンガーオーバーミトン ロング

いわゆる「オーバー手袋」。深雪のラッセルを想定し、肘の近くまで長さがあるものが欲しい。

mont-bell / ウインドシェルグローブ

薄いナイロンの表地、起毛の裏地でコンパクトです。最低限の重量で、防風性と保温性を確保しています。細かい作業をするときに便利だろうと考えて購入しました。

mont-bell / ウール マウンテングローブ

ざっくり編みの手袋です。ハンガロテックスの代わりですが、もちろん未脱脂ではありませんし、厚みも物足りません。私はたいていの着用品はLサイズですが、この製品はきつめに感じたので、XLサイズを選択しました。

mont-bell / シャミースインナーグローブ

薄手のフリースながら手首部分が長めで保温性が高い。「ウインドシェルグローブ」より暖かく感じるくらいです。私は冬場のジョギングや自転車でも普段使いしています。嵩張らないのでダウンジャケットのポケットに突っこんでおいても邪魔になりません。タッチパネル対応。お値段お手頃。これは良い買い物でした。(2020年春夏にスクリーンタッチ素材が刺繍糸に変更されました)


以上、保温性はかなり控え目です。山行を重ねながらバージョンアップしていきます。

軍手も捨てたもんじゃない

綿製の軍手は濡れると乾きにくいので、雪山に適さないと言われがちですが、私はひとつ携行するようにしていました。

  • 熱い鍋を持つ
  • 熱い鍋や食器を床に置くとき敷物にする
  • 雪を融かす鍋底についた水滴を吸わせる
  • 床にこぼれた水をぬぐう。

ほとんどフキン扱いです。

綿100%だと熱で溶けにくい。煮込み料理などで過熱した鍋の取っ手をつかむ機能においては、並みいる高機能・高価格の手袋をしりぞけて、軍手の独壇場です。ただし、濡れた軍手で過熱した鍋を持つのはご用心。一瞬にして、熱を吸収して、穴があくことがあります(経験者談)。

安価なので手荒に扱えて、汚れたら惜しげもなく捨てることができます。と言いながら、少々の汚れは洗濯で落とせるため、意外と一双を長いこと使うものです。黄ばみやシミに妙に愛着が湧いたりして。

ノーメックスのグローブは370度以上の温度でも融解せず、断熱性すなわち保温性もあるという高級軍手です。昔はもてはやされましたが、現在ではひっそりと?取り扱われています。

いかにも軍手な見た目を避けたい人はこちらをどうぞ。

鍋置き用の敷物としては、テントの床に銀マットを敷き詰めれば、床全体がその役割を果たしますし、水滴をぬぐうならキッチン用のスポンジのほうが吸水、脱水とも優れています。

100均の手袋こそ侮れない

100均の手袋こそ侮れない

軍手と同じ価格帯では、100均の手袋こそ侮れません。たいていポリエステルやアクリル素材なので濡れても乾きやすい。かなり分厚いモノもあります。登山用品店に並んでいる10倍~20倍の価格のモノと比べて、10倍~20倍の性能差があるのだろうかと思います。

予備として、はたまた手袋を忘れたり、濡らしてしまった仲間に貸し出す用途に向いています。山岳ガイドの方は、自分で使う以外にも「お客さんが手袋を忘れることがよくあるので、余分に携行しておき貸してあげる」とのこと。

伏兵、「防寒テムレス」

知る人ぞ知る、雪山フリーク御用達アイテムです。

一見、ただのゴム手袋ですが、透湿性と防水性を兼ね備えたポリウレタンを採用し、内側はボアタイプの起毛を施しています。それこそ土木作業的な、雪洞を掘るような場面で大活躍します。手首が広めなので、深雪をかきわけたり、風雪のなかで着用しつづけたりすると雪が侵入しやすい。愛用者は手首を絞るための布地やバンドを縫い付けて利用されています。

2018年12月に待望の黒い防寒テムレスが登場しました。さらに2019年9月には登山での利用を想定したカフ付きモデルが登場しました。

防寒テムレスの黒(TEMRES 02winter/カフ付きモデル)を入手しました
2019年9月13日に発売を開始した防寒テムレスの黒(TEMRES 02winter/カフ付きモデル)を入手しました。ショーワグローブ(Showaglove)防寒テムレスロング TEMRES 02Winter☞ 公式サイト ☞ Google...

2021年には裏ボアなしモデルが追加されて、手持ちのグローブと組み合わせやすくなりました。

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