
「山において視界を失うことは、すなわち世界を失うことである」
どれほど高機能なハードシェルを纏っていても、足元のアイゼンが鋭く研ぎ澄まされていても、ゴーグルが曇ってしまえば、私たちは雪山の中で無力です。
読者の皆さんも、幾度となく「曇り」と戦ってこられたのではないでしょうか。 バラクラバを鼻まで上げれば温かい代わりに視界が白く染まり、鼻を出せば視界はクリアでも凍てつく風に顔を焼かれる。このジレンマは、登山者につきまとう永遠の課題のようにも思えます。
しかし、その答えは意外な場所にありました。 私たち登山者が黙々と頂を目指している間、隣のゲレンデを滑るスノーボーダーたちの間では、ひとつの「真理」が常識となっていたのです。
この記事では、登山用品店ではあまり見かけない、けれど非常に理にかなったカナダ発のブランド「AIRHOLE(エアホール)」をご紹介します。
「塞ぐ」のではなく「穴を開ける」という逆転の発想
このブランドの思想は、その名の通りシンプルです。口元に計算された完璧な「穴」を開けること。
スノーボードの世界において、AIRHOLEは「ゴーグルが曇らないマスク」の代名詞として確固たる地位を築いています。
「呼吸を制する者は、環境を制する」
彼らが支持する理由は、素材の透湿性だけに頼らない、物理的な解決策にあります。 実際に使用しているユーザーの声を拾ってみると、その信頼の厚さがうかがえます。
- 「これを使ってから、ゴーグルの曇りストレスが嘘のようになくなった」
- 「呼気がスムーズに抜けるので、ハイクアップや春のライディングでも息苦しさがない」
- 「生地が呼気の結露で濡れにくく、凍りつきにくい」
激しい運動量で生じる熱気や呼気を、生地を通さず直接外部へ排出する。 これは、「保温」を最優先するあまり密閉することに慣れてしまった私たち登山者にとって、目からウロコの解決策ではないでしょうか。
一方で、正直な「弱点」についてのクチコミも存在します。
- 「穴から冷たい空気が直接入ってくるので、リフト乗車中などは口元が寒い」
- 「日焼け止めを塗り忘れると、穴の形に日焼けしてしまう」
まさに一長一短。しかし、行動中の「曇り」を何よりも忌避すべき雪山登山において、このメリットは検討に値するはずです。
実物(DRYLITEモデル)
さて、ここで筆者が手に入れた実物をご覧ください。 これはシリーズの中で最も薄手かつ軽量な「DRYLITE(ドライライト)」というモデルです。

全体像

生地が薄い

口元
見ての通り、口元にはしっかりと成形された「穴」があります。 装着してみると、驚くほど呼吸に抵抗がありません。自分の吐いた息がバラクラバ内を逆流してくるあの不快感が皆無なのです。

かぶるとこんな感じ
AIRHOLEの3つのカテゴリー
AIRHOLEには、用途に合わせた明確なカテゴリーが存在します。
- POLAR(ポーラー):厚手のフリース素材。厳冬期の極寒に対応。
- MERINO(メリノ):天然ウール素材。保温と調湿のバランスが良い。
- DRYLITE(ドライライト):速乾・軽量素材。春山や運動量の多いシーン向け。
筆者が手にしたこの「DRYLITE」は、厳冬期の稜線で使うにはあまりに薄すぎました😫。スノーボードの文脈でも、これは春スキーやパークでの激しい運動時に好まれるモデルだったのです。
もし、この記事を読んで雪山登山への導入を検討されるなら、迷わず「MERINO」か「POLAR」をおすすめします。 適材適所。その選択さえ間違わなければ、この「穴」は強力な武器になるはずです。
▼ヒンジ式モデル「AIRHOLE BALACLAVA HINGE POLAR」
▼ワッフルフリースモデル「AIRHOLE BALACLAVA FULL HINGE WAFFLE FLEECE」
まとめ:隣の山に答えを探す
登山用品メーカーのカタログだけが、正解の全てではありません。
時には専門外の分野、特に雪山を遊び場とするスノーボーダーたちの知恵を借りることで、長年の悩みが解決することもあります。
AIRHOLEという概念そのものは、間違いなく「曇り」に対する有効な回答の一つです。
筆者が購入した、この薄手のDRYLITEは、来たるべき残雪期のハイクアップ用として、大切に使っていこうと思います。
バラクラバの選び方やおすすめについて書いた記事はこちらです。



コメント
ファイントラック のバラクラバ、ブレスルーターをぜひ!
ひろ さん、コメントありがとうございます。
ファイントラックのブレスルーター、注目しております。
店頭で見る限りでは、鼻息(笑)の排出は随一だと思います。
口からの呼気を吹き上げて、目元からサングラスやゴーグルを曇らすことはないでしょうか。
ブレスルーター沿いに下向きに排出してくれるでしょうか。