登山サンダルのおすすめとクロックスが苦手な話

登山歴のなかで一番印象に残っているサンダル

長谷川ピーク付近を更新するキスリング部隊

昔々、白馬岳から穂高まで2週間ほどかけて縦走し、上高地に下山してきました。登山にサンダルを携行する習慣はありませんでしたが、そのときばかりは欲しくなりました。

小梨平キャンプ場の売店で500円で売っていた茶色のサンダル。いや、ゴムゾウリ?を履いて、憧憬の地でリゾートタイムを過ごしました。

売店には米も肉も売られていました。ジンギスカンの羊肉の美味かったこと。一人で7~8合の飯をぺろりとたいらげて、それが胃袋のなかでシュワ~ッと溶けてしまうので、たてつづけに炊飯しました。大正池まで散策し、ボートを漕ぎました。大正池の立ち枯れの樹がまだまだ多かった時代の話です。

椎名誠さんがキャンプ三種の神器?として、ビーチサンダルガムテープを挙げていましたっけ。(もう一つは何だったのか、そもそも三種だったか記憶があいまいです)

以来、サンダルと昵懇になり、ワンダーフォーゲル部時代を過ごすことになりました。

耐寒訓練のお供、真冬に裸足でサンダル

真冬、耐寒訓練と称して、下宿からワンダーフォーゲル部の部室まで小一時間、裸足にサンダルで歩きました。上半身は綿Tシャツと薄い長袖シャツの2枚。長袖は腕をまくっています。

キャンパスに着く頃には手が完全にかじかんで、学食でメシを喰おうとしたらハシを持てなくて困りました。

うだうだと過ごしたあとは歩荷訓練です。もちろん歩荷訓練ではサンダルからジョギングシューズに履き替えましたよ。

クロックスが苦手だ

クロックスもどきの全体像

よほど丸っこい足でないとフィットしない

そんなサンダルマスターが言いたいことがある。いや、言わねばならぬ。

「クロックスって歩きにくいよね」

クロックス社は2002年創業ですから、ワンダーフォーゲル部時代にはもちろん存在しません。いまやサンダルの代名詞として定着し、愛用する方が多いですが、私はどうにも苦手です。

足幅が広すぎてガバガバ。甲のおさえがないから、爪先が先端に当たってしまう。踏みしめることができず、ロボットみたいな歩き方になる。玄関で履いて歩き始めたものの、「やっぱり無理」と思い直して、100均サンダルに履き替えてしまいます。せいぜい玄関を出て、ゴミ置き場を往復するくらいしか使ったことがありません。

私が持っているのはクロックスのコピー品ですが、本物のクロックスはもっとフィット感が良いのでしょうか。サイズ感(足幅ガバガバ)に関するかぎり、本物もコピー品も変わりばえしません。よほど丸っこい足でないとフィットしないはずです。

クライミングシューズのオーバーシューズとして

クライミングシューズのオーバーシューズとして

ただし、ボルダリングの岩場でクロックスの有効な使い方を見たことがあります。

クライミングシューズのソールが汚れないようにクロックスを上から履いて岩に近づき、クロックスを脱ぎ捨てて、課題に取り付くのです。足幅ガバガバのクロックスだからこそできる技ですね。

クロックスは、ボルダリングの気軽な雰囲気にもマッチしているのかもしれません。が、私はやはり、大きなクラッシュパッドを背負って、クロックスで長く歩くのは御免こうむりたいです。

もちろん、ここで「クロックス」と呼んでいるのは「クロッグ」と呼ばれるタイプです。

同じ「クロックス」でもスリムなタイプは当てはまりません。

サンダルは足に悪い?

ところで、サンダルは人間の足にとって良いのでしょうか。悪いのでしょうか。

マラソンの瀬古利彦さんが著書のなかで「日常的にサンダルを履いていると歩き方がおかしくなる。バッグを片側で持つと体の左右のバランスが崩れる」という趣旨のことを書かれていました。走る修行僧とも呼ばれた氏ならではのストイックな姿勢を垣間見ることができます。

一方、「ワラーチ」と呼ばれるサンダル状の履物で山岳地を走る民族がいます。

タラウマラ族がレースに参加し、最初はスポンサーから与えられたランニングシューズを履いていますが、途中で「ええい、邪魔くさい」とばかりに脱ぎ捨てて、ワラーチに履き替える場面があります。単にいつも履きなれているワラーチが良かったのか、それとも山岳地帯にはワラーチのほうが適しているのか、興味深いところです。

Youtubeで「Tarahumara」を検索すると、実際に走る様子を見ることができます。

市販のランニング用サンダルはなかなか高価です。作りがシンプルなのでワラーチを自作する人もいます。

100均のサンダル

かくいう私は現在、100均のサンダルを愛用しています。普段履きとして使うほか、夏場の登山で携行します。コストパフォーマンスで言ったら、これにかなうモノは他にありません。

キャンドゥで同じモノを何度か買いました。(現行品とはデザインが若干異なります)

キャンドウの普通タイプのサンダル

キャンドゥの普通タイプのサンダル

仕事場でデスクワークをするとき、足元はこれに履き替えます。机の下専用です。ビジネスカジュアルOKの仕事場ですが、サンダルでフロアを歩き回ってはいけないタテマエになっています。

キャンドウの軽量タイプのサンダル

キャンドゥの軽量タイプのサンダル

こちらはウレタンフォームっぽい素材です。足の甲がペラペラの布地で、ぺしゃんこに潰れます。より荷物を軽量化、小型化したいときはこちらを選択します。

サイズ感と重量(両足)を比較

サイズ感と重量(両足)を比較

100均のサンダルはとにかく軽くてコンパクトなのがメリットです。テント周辺を歩き回るとか、帰りの電車で足先の蒸れを開放するくらいの使い方なら十分です。

機能的なサンダル

ランニング用とまでは行かなくても、足にフィットして踏破力が高いサンダルが欲しければ、KEEN、TEVA、モンベルをおさえておけばハズレありません。

KEEN / スポーツサンダル

アウトドア用のサンダルと言えば、このデザインを思い浮かべる人が多いはず。夏の小川山でマラ岩に行くときなんか最高です。渡渉もヘッチャラ。飛び石しなくても、堰堤の浅い水流をザブザブ渡れます。多少の山道はガシガシ歩けます。岩場に着くころにはあらかた乾きます。頻繁にクライミングシューズと履き替えるクライマーにとっては、ワンタッチで着脱できるシューレースが嬉しい。講習生を引き連れたプロクライマーが履いているのをよく見かけます。

TEVA / HURRICANE XLT 2

KEENのスポーツサンダルほどゴツくなく、ぺしゃんこにして収納しやすいタイプです。

モンベルの各種サンダル

登山用品のラインナップを自社ブランドで塗りつぶすモンベルらしく、サンダルについてもよりどりみどり。微妙な好みや用途のちがいに応じて選択できます。

ソックオンサンダル

厚いソックスを着用したままでも履くことができます。爪先近くと足首近くの2箇所で甲をおさえるのでカカトが浮きにくいです。ゴムのストラップをぺしゃんこに潰せるので、ザック内にコンパクトに収納できます。

ソックオンサンダル コンフォート

「ソックオンサンダル」のフットベッドを立体的にし、フィット感を高めたモデルです。アウトソールのグリップ力と耐久性も優れています。

ロックオンサンダル

「ソックオンサンダル」に踵を固定するベルトを追加し、フィット感を高めたモデルです。

ロックオンサンダル コンフォート

「ロックオンサンダル」のフットベッドを立体的にし、フィット感を高めたモデルです。アウトソールのグリップ力と耐久性も優れています。

アクアグリッパー サンダル

水中の岩肌に対してグリップ力を高めたモデルです。「ロックオンサンダル コンフォート」とはベルトとゴムの使い方が逆になっているところが面白い。

キャニオンサンダル

一見、クロックスの「クロッグ」に似ていますが、ベルクロで甲を締めて、フィット感を高めることができます。これなら私にも履けるかも?と思うのですが、「クロッグ」と比べるとやけに重いのが難点です。

登山帰りの電車で

登山靴をサンダルに履き替える

特に夏場の山帰りには足先の蒸れを開放したいので、サンダルが必須です。脱いだ登山靴は忘れないように足の間に置きます。

左右の登山靴は靴紐を結び合わせておきます。電車の乗り換え時には手にぶら下げて持ち歩きます。

電車で居眠りする仲間の登山靴を左右結び合わせておくと、起きて歩き出そうとしたときビックリするというイタズラがありますが、サンダルに履き替えておけばその被害に合わなくてすむかもしれません。

2022年現在、サンダルをめったに携行しなくなりました。

登山靴の靴紐を甲の部分だけ結び、余った靴紐を足首に緩く回して、蝶結びにします。これで靴紐をさわる必要がない「スリップオン」モードになります。

テント場でトイレを往復するくらいならこれで十分。サンダルだとトイレ床から湿気やら雑菌やらソックスに付着しないか心配ですが、登山靴の「スリップオン」モードなら問題ありません。行き帰りの電車やバスで乗り換えたり、食堂に立ち寄ったりするときもこれで歩き回ります。

登山靴が型崩れしやすくなるのでほどほどに。

電車では四人掛けの席が空いていても、扉近くの二人掛けにすわります。横向きになり、登山靴から足を抜きシートにのせてリラックスします。電車が混んできたら、足をおろして、横に1人ぶんのスペースを空けますが、よほどギュウギュウ詰めでない限り、横にすわってくる人はいません。頃合いを見て、また足をシートにのせます。下山後、充実感に包まれながら、この体勢でポチポチSNSに投稿したり、居眠りしたりするのが愉しみです。

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