登山のトレーニング(体験と考察)

登山のトレーニング(体験と考察)

大学時代にワンダーフォーゲル部で登山を始めて以来のトレーニング体験と考察を書いてみます。

登山のトレーニング【大学ワンダーフォーゲル部時代】

ランニングと補強運動「東明カット、諏訪ゴーゴー!」

ワンダーフォーゲル部の練習

大学ワンダーフォーゲル部に入部して最初の練習は坂道のランニングと補強運動でした。木造の部室の前でイッチ・ニッ・サン・シッ、ニー、ニッ、サン、シッという掛け声とともに、準備体操。足を伸ばし、手を回し、2人1組で背中を合わせて腰をそらします。ほどよく温まったところで、トレーナー部員が「東明カット、諏訪ゴーゴー!」と宣言。新入部員には何のことやらわかりません。あとで、東明はランニングコースの折り返し地点にあるホテルの名前で、諏訪は観光名所の神社の名前だと判明しました。本来のランニングコースは周回の途中でホテル東明まで盲腸のように突き出した道を往復する変則的なラインですが、そこを省略して諏訪神社に直行することを「東明カット」と呼びました。しだいに「東明カット」が当たり前となり、今やそれは枕詞と化しています。実際にホテル東明まで走るのは年に1、2回でした。トレーニング量を減らしたのではなく、どうやら諏訪神社での補強運動を増やす方針に変わったらしい。それが「諏訪ゴーゴー」です。「ゴーゴー」とは?

キャンパスの裏門から坂道を駆け上がっていきます。高校時代には帰宅部で、ごく平均的な受験生だった自分には過酷な運動でした。口の中に酸っぱいものがこみ上げてきます。陸上部やサッカー部に所属していた同期たちは平気そう。ときおり部員の誰かが「〇〇ワンゲル~、ファイッ!(Fight!)」と怒鳴ります。それに呼応して全員が「ファイッ!」、最初の部員が「ファイッ!」、全員が「ファイッ!」、最初の部員が「ファイッ!」、全員が「ファイッ!」……この輪唱を5~6回繰り返します。最初の部員が「ファイ~~~」と語尾を伸ばしたら、全員が「ファイ~~~」としたがってお開きとなります。しばらくすると、また別の部員が「〇〇ワンゲル~、ファイッ!」と怒鳴って、以下同文。誰が掛け声を担当するか決まっておらず、阿吽の呼吸でした。息が上がっている最中に怒鳴るのは大変そうですが、そのあいだは不思議とリズミカルに力強く走ることができました。

諏訪神社に着くと、いよいよ補強運動です。七十余段の石段を全力疾走で5回駆け登ります。段を飛ばすのは禁止で、小刻みに足を動かすのがめっぽうキツい。それが終わると、2人1組になって人間歩荷を5回。この諏訪神社でおこなう全力疾走5回、人間歩荷5回が「諏訪ゴーゴー」の正体でした。あとは腹筋とか背筋とか腕立て伏せとか。

補強運動が終わると、大学のキャンパスまでまたランニングで帰るのですが、ひととき神社の石段にひな壇のように腰かけてくつろぐことがありました。地元の人や観光客が階段を登ってきたら、上級生が「お~い、道あけろ~」と指示を出します。汗だくになりながら、若者たちが町並みを見下ろす光景は「俺たちの旅」の一場面のようでもありました。美化しすぎですか。通りかかった人には「なんだこいつら。邪魔だな」としか思われていなかった可能性が大です。

ゴールデンウイークの新入生強化合宿の直前に、帆布のキスリングが支給されました。数泊分の荷物を詰めて背負うと、駅まで歩くだけで大変でした。こんなんで山に登れるんかいな。案の定、山の中で太ももが痙攣を起こして、先輩にテーピングしてもらいながら、なんとか乗り切りました。

金毘羅歩荷(こんぴらぼっか)

新入生強化合宿が終わると、夏合宿に向けて、本格的なトレーニングが始まります。キスリングに砂袋を詰めて、35~40kgの重さに調整。それを背負って、裏山に登ります。山の名前は、どの地方、どの町にもある「金毘羅山(こんぴらさん)」でした。「金毘羅歩荷(こんぴらぼっか)」こそが、我がワンダーフォーゲル部の最高峰のトレーニングでした。

登山のトレーニングとして、どれか一つだけ選べと言われたら、歩荷にまさるものはないでしょう。登山では足腰だけでなく、肩に食い込むザックの重さに耐える力が必要です。15kgくらいまでは普段とくに歩荷トレーニングをしなくても対応可能ですが、それを超えるとザックを背負い慣れているかどうかが疲労感に大きく影響します。背中の荷重はもちろん足腰にとっても大いに負荷となります。夏合宿を終えて、実家に帰省し、短パンでくつろいでいるとき、自分の太ももがわずか数か月で巨大に発達したことを発見してギョッとした記憶があります。

足腰の強さは、重荷を背負って長大な稜線を歩く場面で役立つだけではありません。岩稜歩きに安定感をもたらします。入部二年目の夏、白馬岳から槍・穂高まで縦走したのですが、途中の不帰の剣、八峰キレット、大キレットなどは岩場としての印象は薄く、全員が平然とスタスタ歩いていました。地方のとりたてて先鋭的でもないワンダーフォーゲル部が年に一度、日本アルプスまで遠征して、ぶっつけ本番で名だたる岩稜を歩いたにしては上出来だったと思います。それもこれも、ちょっとバランスを崩したり、スリップしたくらいではビクともしない足腰の強さがあったおかげです。

大キレットをゆくキスリング部隊

階段歩荷(かいだんぼっか)

雨の日は「金毘羅歩荷」をお休みし、5階建ての校舎の階段を1階から屋上の塔屋まで昇り降りしました。特に梅雨の蒸し暑い時期、風通しが悪い屋内を、むさ苦しい男たちの集団がハアハアゼエゼエ喘ぎながら往来するのですから、ほかの学生や教授陣にはいい迷惑だったにちがいありません。滴り落ちる汗、汗、汗。不用意に踏んでスリップしないように気をつけなくてはなりません。

プロレス漫画で、プロレスラーがスクワットトレーニングする話を読んで震撼したことがあります。足元を枠で囲み、そこに汗が何センチか溜まるまで続けるという世にも恐ろしいトレーニングです。「階段歩荷」のことを思い出すたび、その漫画とイメージがだぶります。

「階段歩荷」の良いところは、往復回数やペース配分を調整しやすいところです。山道だと、それがたとえ人里近い裏山であっても、追い込みすぎて失神するとか、転倒・負傷して動けなくなると困るので、自然とセーブする気持ちが働きます。特に単独でトレーニングするときはそうです。「階段歩荷」の悪いところは、あえて言えば足首の角度が実際の登山とはちがうところです。山道は階段状に整備されているとは限りません。傾斜した地面を踏みしめて押し出すとき、ふくらはぎの筋肉をより酷使します。まぁ、平地でジョギングするよりはるかに実践的なトレーニングであることは間違いありませんが……。

スクワット

四年生になると、ワンダーフォーゲル部では「引退」扱いで、現役部員の活動計画に気が向けば参加するオブザーバーの立場となります。私は「引退」する気はさらさらなく、現役部員以上にトレーニングに励みました。現役部員は夏の遠征前のプレ合宿として、校内の宿舎に寝泊まりしながら集中的にトレーニングします。校内合宿の締めは、山奥の水源地ダムまで周回する長いコースの競走です。毎年、体力自慢のトレーナー部員が一位を獲得して実力を見せつける伝統がありましたが、私は四年生ながら異例の参加で一位を奪取するという挙を成し遂げました。

夏合宿が終わると、現役部員たちは歩荷をほとんどやらず、ランニングと補強運動を中心としたトレーニングに戻ります。私は個人で歩荷を続けました。雨が降ると「階段歩荷」ですが、日曜日だと校舎が閉ざされているので、仕方なく部室でスクワットをしました。30分くらいかけて1000回が標準です。最高で2000回までやりました。スクワットは登山のトレーニングとして有効だとよく言われます。自分でやっておいてなんですが、持久力養成トレーニングとしては積極的におすすめしません。左右交互の動きをともなわないので、身体の負担が大きいわりに実践的ではない。どうも身体のバランスを崩す側面があるようで、たくさんスクワットした翌日にランニングすると、上半身と下半身の動きがバラバラで、ぎくしゃくした動きになります。もちろん何もしないよりは絶対に有効なので、ほかに代替手段がないときにやるといいのではないかと思います。その場合も、持久力を養成するというよりは、負荷をかけて20回とか30回とか、筋力アップに焦点を絞るほうが賢明です。ワンダーフォーゲル部の練習では、人間を肩車してスクワットするメニューがときどき組み込まれました。

人間歩荷(にんげんぼっか)

四月に新入生を勧誘して頭数が揃うと、金毘羅山ハイキングに連れ出し、下山するとその足で地獄の新入生歓迎コンパに突入します(諸事情により詳細は割愛)。さて、金毘羅山の頂上にて、ハイキングに参加した留年OBの方がふざけて「俺を背負って下ろしたら1万円やるぞ~ッ」と宣言しました。私は「えっ、ほんと? ラッキ~♪」とばかりに背負って下ろしました。OB苦笑い。

遭難救助などで人間を背負って運ぶ話をときどき聞きます。体重60kgくらいの人間は相当な荷重ですが、意識のある人間が背中に抱きついた状態というのはけっこう歩きやすいものです。これが意識のない人間だと突如として「子泣き爺」のように重くなります。50kgのキスリングを歩荷すると、地面に置いた状態から背中に乗せて立ち上がるだけでひと苦労。踏み出す一歩一歩が地面にめり込みそうです。

山小屋の歩荷さんが100kg担ぐなんて話を聞くと驚くほかありません。先頃、舟生大悟さんが51kgのザックを背負って厳冬期の北アルプスを日本海から穂高まで縦走したという記録に接したときにはひたすら感嘆しました。

ちなみに「人間歩荷」という字面は「人間椅子」に似ていますが、江戸川乱歩とは何の関係もありません。

トレイルランニング

1980年代に盛んに山に登っていた人のなかには、超人メスナーのトレーニングを意識した人が多かったのではないでしょうか。「挑戦―二人で8000メートル峰へ」のなかでメスナーはこう書いています。

ヒドゥン・ピークに出発する直前にフィルネスと、ボルツァーノ・エネージェン間のトレーニングコースを走ってみて満足すべき結果を得た。標高差約1000mを所要時間35分。自信がわいてきた。

丹沢の大倉尾根で比較すると、登山口から花立山荘までがおおよそ標高差千メートル。ここを35分で駆け登れるでしょうか。トレイルランニングをやっている人でもかなり厳しいでしょう。

日本ではヨーロッパの高原のように千メートルひたすら登る「鉄砲登り」を探すのは難しい。大倉尾根だって、「バカ尾根」と言われながらも、ところどころに長く平坦な区間があり、しばらく下る区間さえあるので、同じ標高差千メートルと言っても比較しづらい。あえて探すなら、富士山の五合目から山頂までの標高差1,300~1,400メートルでしょうか。ヒマラヤを目指す登山家は、五合目から頂上まで一日に2回往復したりするそうです。

ワンダーフォーゲル部の先輩から聞いた話では、さらに先輩のある方が久住山で奇抜なトレーニングを敢行しました。坊がつるから三俣山へ直登する標高差約500メートルで、ストップウォッチを握りしめた後輩を山頂に待機させてタイムトライアルしたというのです。スタートの合図はトランシーバーだったのか、時刻を示し合わせたのか、詳細は不明(当時、携帯電話など存在しない)。たしかにあの直登コースなら中だるみがありません。「いやそれは絶対メスナーを意識してるだろ」と思いました。タイムはどれくらいだったのか、卒業後もその方が登山を続けたのかどうかは知りません。

坊がつるで憩う背後に三俣山直登

登山のトレーニング【社会人時代】(現在進行形)

Long Slow Distance

東京に住んだら、しょっちゅう北アルプスに行けるぞ、と心躍らせながら上京しました。が、現実は厳しく、仕事と生活に追われます。トレーニングと言えば、街中のランニング(ジョギング)ばかり。中野の線路際のアパートから、雑踏を抜け、排気ガスと信号待ちをかいくぐり、やっと善福寺川沿いや妙正寺川沿いまで出て、比較的すっきりした道を走ることができました。「ランナーズ」誌で習い覚えた「Long Slow Distance」(長くゆっくり距離を走る)を実践し、90分くらいを目標に走りました。長いときは2時間、気分が乗らないときは60分程度。「ゆっくり」と言いながら、息せき切っていた気がしますが、ランニング専門の人から見るときわめて「ゆっくり」です。平均して1キロ6分を切ることはなかったはず。雨の日は中野体育館の地下トレーニング室の外側にあるスペースをぐるぐる延々と走ったりしました。当時は打ちっぱなしのコンクリート床でしたが、現在の写真を見るとフローリング化され、何故かひとつサンドバッグがぶら下がっています。温水シャワー室があるので、しっかり洗髪までして銭湯代を節約しました。

学生時代は「山と渓谷」誌の年1回の付録「登山手帳」にトレーニング記録を付けていましたが、やがて「ランナーズ」誌の付録「RUNNERS DIARY」に書き込むようになりました。さらに「SYSTEM DIARY」、時代の潮流に乗ってバイブルサイズのシステム手帳へと進化し、ふと我に返って「能率手帳」に回帰したかと思えば、スマホ全盛の現在ではGoogleカレンダーに記録するという節操のなさです。紙時代の記録はスキャナで読み取って電子化し、オンラインで閲覧できるようにしてあります。

ときどき高尾山や丹沢で歩荷

正直言って、街中を走るのはツマラナイ。海や山を眺めながら駆けずり回っていた日々がナツカシイ。ずいぶん太ももが痩せ細ったなぁ。これじゃいかん! と一念発起して、ときどき高尾山や丹沢へ歩荷トレーニングに出かけました。渋谷の東急ハンズに出かけて、園芸用品コーナーで化粧砂20kg×2袋を入手。いっぽうの袋を5kg×4袋に小分けします。すると基本が20kgで、5kg単位で重量を調整する仕組みができあがります。

トレーニング記録を読み返してみると、高尾山の稲荷山尾根では35kgの砂袋を背負って43分50秒というのが最高記録だったようです。空身で早足で登っても、ちょっと気を抜くと、これくらいのタイムになるので、なかなか追い込んでいたようです。丹沢の大倉尾根に行った回数は少ないですが、35kgの砂袋を背負って2時間42分22秒という記録が残っています。「大倉尾根はワンピッチで登る」という謎のオキテがあるので、まるでヒマラヤ登山(行ったことないけど)のような足取りで山頂にたどり着いた記憶があります。

丹沢で歩荷、と言えば「丹沢ボッカ駅伝競争大会」。体力に自信がある人はメンバーを集めて参加してみると良いのではないでしょうか。「丹沢のチャンプ」も有名ですね。歩荷トレーニングの何が大変かって、第一に重いザックを登山口まで運ぶのが辛い。くたくたになって下りてきたら、また家まで背負って帰らなくてはなりません。自家用車で行って来れるならだいぶ楽ですが。隣の尾根の鍋割山荘では登山口にペットボトルや丸太を用意して、歩荷のボランティアを募っているので、大きなザックを用意していけば、気軽に(?)歩荷トレーニングできます。

あるときハタと思いつきました。山まで出かけなくても、街中でザックを背負ってランニングすればいいのではないか。一度やってみましたが、走る爽快感がなく、走り切った達成感も乏しく、なんと言っても気恥ずかしさをぬぐえません。デイパックで荷重を5kgくらいに抑えれば、普通のランニングと同じ感覚で走れて、それなりに効果があるでしょう。

ちなみに、かの三浦雄一郎さんは86歳の現在(2019年)でも20kgのザックを背負って街中を歩いているそうです。トレイルランナーの望月省吾さんは東京マラソン2015に出場し、40ポンド(18.1kg)背負って3時間6分16秒という驚異的なタイムを叩き出しています。18.1kgといったらアナタ、標準的な2~3泊分のテント泊装備の重量ですよ。

クライミング(岩壁登攀)

日和田山のトップロープ

雪山登山から足が遠のき、しだいにクライミングに軸足を移しました。日和田山にはずいぶん通ったものです。岩場のヌシ、裸足のクライマーY田さんの知己を得て、「日和田倶楽部というのを作りたいと思ってるんだけど、まとめ役やってみない?」なんて打診されたことがあります。谷川岳や剣岳へ出かけてオンサイトフリーソロを敢行し、えらい目にあいました。その先はありがちな成り行きで、フリークライミングに傾倒していきます。

初めてクライミング(ボルダリング)ジムの門を叩いたときには目から鱗が落ちる思いがしました。こと岩を攀じる能力に関しては、同じ日数を費やすならば、日和田山に通う10倍の速さで向上します。日和田山では二十年一日のごとく、休日ともなればトップロープのすだれがかかり、前時代的なクライミングが展開されていますが、そこにいらっしゃる方々には「基本的なロープワークを習得したあとは、ジムトレーニングの比率を増やす」ことをおすすめしたい。室内でロープさえ使わない「ボルダリング」に熱中するのがおそらく最強のトレーニングです。

ボルダリングの良いところは、義務感がなく、楽しくて、気づいたらいつの間にか上半身がムキムキになっているところです。学生時代には腕立て伏せやら懸垂やらしんどい思いをしたわりには、ちっとも身になりませんでしたが、ボルダリングだと遊んでいるだけで逆三角形の上半身が手に入ります。ボルダリングの悪いところは、わずか数メートルの困難を克服する行為に魅了されて没頭し、登山から足を洗う羽目になることです。アウトドアの本物の岩、いわゆる「外岩」に通うぶんには、アプローチでそれなりに足腰を使いますが、晴れた週末でも何やかやと理由をつけてインドアのボルダリングに通いはじめたら要注意。いざ登山を再開したときには、すっかり弱体化した足腰に愕然とするでしょう。

ある山岳会では年に1本は5.13(フリークライミングの難易度)のルートを完登しないと降格されるとか。実際、先鋭的なアルパインクライマーのフリークライミング能力は高い。フリークライミングを中心に活動している仲間といっしょに岩場を訪れて、仲間がトライしているルートを便乗トライし、さらっと先に完登して「ゴメン」とあやまっている姿を目撃したことがあります。カッコイイ。もし登山界にアントニオ猪木がいたら、「アルパインクライミングこそ最強である」と唱えるかもしれません。

ジョギング、エアロバイク

フリークライミングに傾倒しているあいだ、足腰がなまり切ってしまわぬよう定期的にジョギングするよう心がけました。心がけました、というくらいなので、毎日ではなく、やったりやらなかったりです。もはや気持ち的に「ランニング」というのはおこがましい。体調を整えるための「ジョギング」です。

夜、仕事から帰宅して、外では雨が降りしきっている。そんなときカッパを着てまでジョギングするのは億劫です。そこでエアロバイクを購入しました。へへっ、テレビを見ながらトレーニングできるぜ。最長で小一時間くらいは漕ぎましたが、大方の予想通り、いつしか埃をかぶるようになり、断捨離の対象となりました。少々の雨なら外で走ったほうがいい。さいわい現在の自宅周辺は閑静な住宅街で、すっきりした周回コース(ちょうど1kmくらい)を設定できます。雨に濡れてもすぐ自宅のシャワーに飛び込むことができます。

先年、本格的な登山を再開したとき、すこし強度を上げたほうがいいかなと思い、つま先立ちで走ってみました。かねてより「ベアフットランニング」の効能を聞き及んでおり、流行に敏感なフリークライミング仲間が「ビブラム ファイブフィンガー」を購入したと聞いて興味深々でした。いきなり裸足で走るところまでコミットせずとも、普通のジョギングシューズでつま先立ちで走ったら効果が高いにちがいありません。かの超人メスナーも「第7級 極限の登攀」でふくらはぎを鍛えるためにつま先立ちで走ったと書いています。たった2~3kmですが、実際に走ってみて後悔しました。非常に強度が高いトレーニングで、以後数週間、ふくらはぎの芯の痛みがとれませんでした。もし本格的にやるのであれば慎重にすこしずつ距離を増やす必要があります。アイゼンの前爪を酷使するアイスクライミングを志向する人がやれば役に立つにちがいありません。

意外や意外、踏み台昇降

エアロバイクを断捨離して以後、雨の日に室内でやる足腰の運動といえば、原点回帰のスクワットです。回数は数十回にとどめます。前日たくさん運動した、もしくは翌日たくさん運動する予定なら、雨の日は躍起になってトレーニングしなくなりました。メリハリをつけるってやつです。トレーニングの習慣を途絶えさせないために申し訳程度でいいから体を動かします。

「登山の体力作り」的な本や雑誌記事を読むと、そこには運動不足のオトーサンやオカーサンが筋肉痛防止のためにやる気休め程度の運動が並んでいて、正直なところ真面目に読んだことがありません。「踏み台昇降」はバカにしていた運動のひとつです。ところがごく最近、やってみて驚きました。30回くらい昇降したら、翌日足腰がバキバキになりました。長年バカにしてまことに申し訳なかった。私は自宅にあるパイプ椅子を利用しました。プロレスラーが場外乱闘で使うようなやつです。一歩の高さはなかなかのもの。実際の登山道で高い段差を乗り越える場面をイメージしながら、ぐいっと乗り上がり、足を揃える、下りる。それを繰り返します。

気を付けたいのは、乗り上がり方が中途半端にならないことです。回数をこなすことや、速くおこなうことに気を取られると、重心が上がり切らないうちに下りてしまいます。それだと効果が薄れる。上へ上へと登り続けるイメージを固持します。後ろ向きに下りると、実際の登山とは筋肉の使い方が異なるので、前向きに下りて、振り返り、また上がるようにすればなお良し。階下にミシミシ響かないように、膝のクッションをきかせて、静かに下りるように心がけると、より筋トレ効果が高い。登山者にとってスクワットよりも実践的なトレーニングです。

まとめ【登山自体が登山の最も良いトレーニングである】

ロッキーロードを登る

自分のトレーニング体験を振り返ると、いちばん激しくトレーニングしていた時期でさえ、はたして登山のトレーニングとして実践的だったかどうか疑問です。ややもするとトレーニングのためのトレーニングと化して、たとえば歩荷のタイムトライアルに血道をあげるキライがありました。たしかにタイムを短縮すれば、体力が向上したと言えますが、標高差300~400メートルを一気呵成に登り降りするだけでは、持久力の面で物足りません。過去の登山では二十代三十代の旺盛な回復力のおかげで、なんとか長丁場を乗り切れていたようです。

「登山自体が登山の最も良いトレーニングである」とはよく言われる真理です。日常的にどうトレーニングの時間を捻出するか、どうトレーニングするかを悩むよりも、そのエネルギーを一日でも多く実際の登山に出かけることに振り向けたほうが得策です。

まぁ、そうは言っても、浮世のしがらみでしょっちゅう遠い山に出かけることはできません。近郊の低山でできる実践的なトレーニングを試行錯誤しています。それについてはまたいずれ記事にできるかもしれません。

四方山話
神山オンライン

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