モンベルのU.L.ドームシェルターで過ごした悲惨な夜

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2月17日、入山

厳冬期の甲斐駒ヶ岳を目指して、黒戸尾根を登りました。

登山口の橋には雪がありません。しばらくは夏道歩きか?

と思いきや、橋を渡ると、雪があらわれ、階段状の踏み跡はアイスバーン化しています。ここでロングスパッツとアイゼンを装着しました。

日当たりの良い場所は夏道が露出して、アイゼンの歯に枯葉がたまります。

雪山装備の重さにあえぎながら。

自宅で淹れてきたホットレモンで一息。

笹の平あたりで防寒テムレスを投入しました。

昨日入山して登頂されたらしい方達とすれちがいました。

刃渡りあたりで横殴りの吹雪になりました。防寒テムレスの手首をしぼるような改造はしていないため、雪が吹き込みます。が、あとワンピッチなのでそのまま我慢しました。

出発が遅かったので、今日は五合目に泊まります。

温度計はマイナス15℃を示しています。

五合目をベースとするデメリットとメリット

雪の黒戸尾根を登るのは初めてではありません。前回は1994年4月初旬、やはり五合目にテント泊して、山頂を往復しました。七合目と比較すると、デメリットとメリットは以下の通りです。

デメリット
  • ワンピッチ分、山頂が遠くなる。
メリット
  • 五合目は森林限界よりずっと高度が低いため、「安全圏」という印象がある。(あくまでも印象)
  • 五合目から七合目までの難所を山頂アタック用の比較的軽い荷物で通過できる。

第1の誤算:物凄い風

tenki.jpの予報では、山頂の風速が最大で秒速37メートル。最大瞬間風速は秒速40メートルを越えるでしょう。五合目の地形はコル状になっているため風が集中しやすく、山頂に匹敵する風が吹いたと思われます。前回の「安全圏」という印象はくつがえされました。

第2の誤算:ペグが刺さらない

五合目小屋跡から南側へ少し下った小広く平たい場所にモンベルのドームシェルターを設営しました。雪が浅いためすぐに凍った地面に突き当たりました。イーストン・ゴールド24″ペグが刺さりません。

雪山テント泊でバチ効きするスノーペグ、Easton Gold 24″ / イーストン・ゴールド24″ ペグ
雪が深く、ある程度締まっている場合にバチ効きするのは間違いありません。雪に刺してすぐ安定してくれるとは限りません。「刺しやすい」ということは「抜けやすい」ということです。周囲の雪がペグに粘着し硬化するまでに時間を要します。過信は禁物です。

ペグをスノーアンカーとして埋めても、突風で簡単に抜けます。風船のように舞い上がろうとするテントを必死で押さえつけました。

かなりヤバい状況です。テント設営をあきらめて、下山してしまおうかと思いました。が、この時間から下山し始めると、刀利天狗や刃渡りの難所を通過する頃には暗くなりそうです。ライフシステムの「サバイバルシェルター2」をかぶって一晩しのごうかと思ったくらいです。

風上側の張り綱を、雪面に打ち込んだピッケル、雪面から露出した倒木の枝の2箇所からとり、なんとか吹き飛ばされないようにしました。設営を終えた頃には身体が冷え切ってブルブル震えがきました。

第3の誤算:テントのなかに雪が吹き込む


モンベルのドームシェルターはメッシュの換気口を閉じることができません。強風下では、風上側の換気口(天井付近)から粉雪が吹き込んできます。内部は雪まみれになりました。テントにもぐりこみさえすれば人心地、というテント泊の安堵感を味わうことはできませんでした。

雪を溶かして水を作ると、メッシュが結露して、一時的に雪が吹き込まなくなりました。風下側(出入口側)のメッシュはやや低い位置にあるので、換気は確保されています。

ガスカートリッジ(PRIMUS ULTRA GAS 250U)には氷の膜が張りました。が、特に手当てすることなく燃え続けてくれました。

長く眠れない夜

シュラフにもぐりこんで長く眠れない夜を過ごしました。ファスナーを開くと、雪景色を望むことがてきます。

今回は使い捨てカイロの「ヒートチャージャー」を足裏に配置したので足元は暖かいです。

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トイレを我慢

トイレを我慢しました。人間が外に出たら、テントが吹き飛ばされそうです。いや、人間が中にいてもテントごと吹き飛ばされそうでした。雪まみれのテント内では、外に出るため身支度を整える余裕がありません。着替えるそばからウェアが濡れるでしょう。よほどションポリを発動しようかと思いました。ションポリ候補は100均のボトルです。

雪山登山でテルモスとナルゲンボトルを使いこなす
登山用魔法瓶のデファクトスタンダードとなる製品を販売していたThermos社のドイツ語読みが呼称として定着しました。英語読みだと「サーモス」です。1988年に登場したチタン製の魔法瓶に憧れましたが、高価で手が出ませんでした。現在ではステンレス製でも同等の重量で、保温性も申し分ありません。

ブキを忘れた

幸か不幸か、あまり炊事する気になれず、水分は夕食のラーメンしか摂っていません。ガマンガマン。

ブキ(ハシ、スプーン、フォークの類)を忘れたので、伝家の宝刀ハーケンを利用しました。

テントのなかでシェルターをかぶる

朝4時半になりました。ホットレモン0.5リットルをテルモスに詰めて、撤収を始めました。山頂を目指す気はさらさらありません。身支度をしている最中にウェアが濡れないように、「サバイバルシェルター2」をかぶりました。この装備を初めて使うのがテントのなかだとは思いませんでした。

就寝専用のウェア(上下ダウン)を脱ぎ、行動用のウェアに着替えます。フリースはシュラフの足元をくるんでいました。足元が暖かくなるのは良いのですが、結露していました。シュラフカバーの上にかぶせておいたアウター(マーモットのザイオンジャケット)は雪まみれでした。登山靴を履き、ロングスパッツを装着し、完全武装したら、ザックに荷物を詰めていきます。荷物についた雪は雪ブラシで払います。

雪山登山用ブラシは100均のコレで決まり
100均のV-CUT(山切りカット)ブラシは、登山靴の狭い溝の掻き出し、ザックの襞の履き出し、岩のポケットからスローパーのクリーニングまで利用範囲が広いです。

あとはテントをたたんで詰めるだけ、という体勢になったら外に飛び出します。さいわい風は小康状態。明るくなっていたので、ヘッドランプを消しました。

ドームシェルター本体とポールをつなぐベルクロを脱ずす細かい作業が辛い。凍えた手をときどきカイロで温めました。

新雪のラッセルを予想し、防寒テムレスではなく、フリースの手袋とオーバーミトンを装着しました。

2月18日、下山

トレースは新雪に埋もれています。踏み外すと、股から腰くらいまでもぐりました。笹の平あたりでは表面がクラストしたモナカ雪になっていました。足元で崩れたそばからザザーッと斜面を流れ落ちていきます。

無雪期でもいい加減長い下り。膝の調子が悪いので、さくさく下ることができません。時間が長くかかるぶん肩が痛くなります。ようやく登山口の橋のたもとに着いて、アイゼンやロングスパッツを外しました。ちょうど七合目から下りてきた2人パーティの方と言葉を交わしました。山頂をあきらめて下山してこられたようです。

甲斐駒ヶ岳 七丈小屋のブログ – 「風の強い一日」より引用。

昨日の午後から吹雪となり、夕方には第1小屋と第2小屋の間、40mを移動するのにも、身の危険を感じるほどでした。

山麓から見上げる甲斐駒ヶ岳は晴れ渡っています。でも、きっと強風が吹いているのでしょう。

また来ます。

2018年の記事の写真をリニューアルしました。
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