ポールスリーブ式の宿命
テント設営でいちばん手間がかかるのはポールのスリーブ通しです。
複数人のパーティーだと、一人がポールを押し込み、別の一人がテントを押さえたりポールスリーブをずらしたり、共同で効率よく設営できますが、単独だとそうはいきません。
途中でひっかかったり、継ぎ目がはずれると、テントの周囲を迂回して(雪山ではアイゼンで踏み付けないように)手直ししなくてはなりません。
風が強いと、ポールを通している最中にブワーッと吹き上げられたりして、テントを押さえつけるのに苦労します。
吊り下げ式だと楽なのですが、機種がかなり限定されます。希望のスペックに見合う製品が見つかるとは限りません。手持ちのテントをもっと快適に使えないでしょうか。
うーむ……。
いくら考えてもポールスリーブ式である限りは、ポールスリーブ式の宿命から逃れるすべはありません。
しかし、ふと閃きました。諸悪の根源は、ポール通しがスムーズでないことです。だとしたら、ポール通しをスムーズにすれば良い。
改善の材料:シリコンスプレーとテーピングテープ
すでに手元にある材料だけでポール通しを改善できました。
シリコンスプレーは敷居の滑りを良くしたり、傘の撥水性を向上させたり、自転車の駆動部を滑らかにするためにもともと持っていました。どこのホームセンターにでも置いてある汎用品で、300~400円と安価です。
テーピングテープはクライマー御用達です。今回の用途には19ミリ幅くらいが適しています。こちらも用途は広く安価です。
施工方法
テントポールの先端40cmくらいにテープを貼る
ポールスリーブの狭い隙間からシリコンスプレーを吹き付けても最奥まではとても届きません。細長い棒に布切れを巻き付けて、シリコンスプレーを浸み込ませて、挿入する必要があります。細長い棒は「テントポール」そのものを使えばいいですし、布切れは「布地で粘着性があるテーピングテープ」が最適です。
先端で折り返す
テープをポールの周囲になじませる
テープにシリコンスプレーをたっぷり吹き付ける
必ず屋外で。私はベランダで吹き付けましたが、足元に飛散したらしいシリコンが靴下に付着して滑りやすくなりました。
ポールスリーブの内側に擦り付ける
塗布したシリコンがすこし表に透けて見えます。テント本体に付着すると、その部分の透湿性が失われそうですので注意しましょう。
劇的、と言っていいほどに快適になった
ポールを快適に抜き差しできるようになりました。挿入するときはもちろんですが、引き抜くとき継ぎ目がはずれにくくなりました。
当初、2本のポールスリーブの片側だけシリコンを塗布して、「施工前」と「施工後」との比較動画を撮る計画でした。ところが、ポール自体に付着したシリコンによって、「施工後」「施工前」の差がわからないくらいスムーズにポール通しできるようになりました。その一方、末端をアイレットに挿入する際に手の中で滑りやすい状態がしばらく続きました。もしまた施工するなら、適当な別の棒を利用するつもりです。
私のゴアライトテント、20年くらい前に買ったときはもっとスムーズにポール通しできていたような気がします。今となっては確かめることができません。が、今回改善したので、まだまだ快適に使えそうです。
後日談
このノウハウ、独自に思いついたつもりでしたが、のちにアライテントのライズ1を購入したとき付属のパンフレットで言及されていました。「フレームにスプレーする」と書かれていますが、前述したように末端が滑りやすくなると、アイレットへ挿入する際に力が入りにくくなります。末端の節にはスプレーしないほうが良いでしょう。
コメント
いつも楽しませていただいております。
シリコンの個人的な経験からですが・・・・
スプレー式シリコン潤滑剤は布への攻撃性が高いので注意が必要です。
溶剤が完全に揮発するタイプか溶剤無しのシリコン液がいいかと思います。
液だとフライフィッシングのラインに塗布するタイプがあります。
またシリコンはさまざまなモノに付着していくので
注意しないとテント内もいつの間にかツルツルしてしまい
マットなどが落ち着かなくなります。
また同じ潤滑剤でもクレ556はゴムなどを激しく劣化させるので注意が必要です。
ファスナーはファスナー専用潤滑剤や
ロウソクを擦りつけるほうが安心かと思います。
kawazuさん、コメントありがとうございます。
ポールスリーブ内部に塗るのにポールそのものを使ったら、確かにしばらくはポールが滑って扱い辛かったです。
さいわいテント内部への影響はありませんでした。
別の棒を使って塗り、ポールスリーブ内部がよく乾くまで時間を置いた方が良いですね。