対決!ジオグラフィカ vs 地図とコンパス

登山地図アプリ代表格のなかで、ジオグラフィカは現地でのナビゲーション機能がいちばん優れています。マーカー機能や音声案内がよく取り上げられますが、私が秘かに注目しているのは「ヘディングアップ」表示です。

カーナビで車の向き(進行方向)に合わせて地図が自動的に回転するのと同じように、ジオグラフィカの地図も自動的に回転させることができます。コンパスの磁針を地図の北(磁北)に合わせる作業をしなくても、現実世界に合わせて地図が回転してくれます。この機能はもっと注目されていいと思います。

ヘディングアップ表示の操作

高尾山ケーブルカー清滝駅前

高尾山ケーブルカー清滝駅前で操作する例で説明します。

ベンチで駅方向(おおよそ西)に向けてスマホを置きます。現実世界と地図は向きが一致しません。

ジオグラフィカのノースアップ表示とヘディングアップ表示

ジオグラフィカ画面の右側上から2番目のアイコンで地図の表示モードを切り替えます。オレンジ色の矢羽アイコン(オレンジ)をタップすると、位置情報(GPS)の取得がON矢羽アイコン(緑)になり、現在位置が赤く表示されます。この時点では標準的なノースアップ(画面の上が北)表示です。もう一度タップすると、コンパスアイコンになり、ヘディングアップ(地図が回転)表示となります。

ジオグラフィカの右上隅に表示されるコンパスマークは飾りではありません。そのサイズ感から言ってもジッパーコンパスくらいの精度を期待できます。

ノースアップ(画面の上が北)表示では、スマホの向きを変えて、赤い磁針に合わせることによって、現実世界と地図の向きを一致させます。ところがヘディングアップ(地図が回転)表示だと、何もしなくても地図のほうが自動的に回転してくれます。

ヘディングアップ表示ならコンパスを合わせる必要がない

高尾山大見晴園地のテーブルと古いコンパス

「地図が回転すると、文字も回転して読みにくい」と思われるかもしれません。

そのデメリットを差し引いてもヘディングアップ表示が便利なのは、コンパスの磁針を地図の北に合わせる作業が不要で、四方八方どこを向いても、勝手に地図が追従してくれるところです。

紙の地図とコンパス、そしてスマホとジオグラフィカ

高尾山の頂上から富士山の方角を特定する例で説明します。まあ、晴れて空気が澄んでいれば、富士山のきれいな円錐形の山影は一目瞭然なのですが、ガスや靄で見通せないことがままあります。そんなときは、せめて「この方角に富士山が見えるはずだ」と自分に言いきかせて納得しましょう。

従来型の紙の地図とコンパスだとこうします。

  • 地図に磁北線を引いておく。
  • プレートコンパスを高尾山から富士山の方向に合わせて置く。
  • プレートコンパスと地図をくっつけたまま、磁針と磁北線が重なるように回転させる。

この作業を「整置」と呼びます。地図を「整置」すると、プレートコンパスの方角に富士山が存在するとわかります。

上の写真の紙地図はヤマケイオンラインの地図サービス磁北線付きで印刷したものです。コンパスの回転盤については何もしていません。

さて、ジオグラフィカではどうするか。何もする必要がありません。何もしなくても、現実世界に合わせて地図が回転します。富士山をロックオンして、現在地と線で結ぶと、より一層わかりやすいです。

晴れていればこの方角に富士山が見える

晴れていればこの方角に富士山が見えます。

ジオグラフィカで見えない富士山をロックオンしたパノラマ写真

ジオグラフィカで見えない富士山をロックオンして角度を変えるとしっかり追従します。

悪天時にはさらにちがいが際立ちます。紙の地図とコンパスだと、風で地図がバタつくなか、コンパスをくっつけて、磁針と磁北線が重なるように回転させる作業がとても面倒くさい。地図を確認するのが億劫なことが、道迷い遭難の誘因となりかねません。

スマホなら多少の風ではバタつきませんし、さらにジオグラフィカのヘディングアップ表示なら地図が自動的に回転します。スマホだけで完結します。

コンパスの精度を三角点で確認する

コンパスの精度を三角点で確認する

ノースアップ表示にしろヘディングアップ表示にしろ、ジオグラフィカのミニコンパスを当てにするなら、スマホが内蔵する電子コンパスの精度に気を配る必要があります。

豆知識として、三角点の標柱は原則として、南面に「三角点」と刻印されていることは知っておいて損はありません。ガスで見通しが利かない山頂で、コンパスがなくても、三角点で方角を知ることができます。

高尾山頂上の三角点とコンパスを比較してみました。

  • プレートコンパスの場合
    赤い磁針がやや左にズレています。関東周辺では磁北は7度程度ズレているので、それを忠実にあらわしています。
  • 電子コンパスアプリの場合
    プレートコンパスと同様、左にズレて見えます。ただし、このアプリの赤い磁針が真北を指すのか、磁北を指すのかは不明です。
  • ジオグラフィカの場合
    ジオグラフィカの赤い磁針は真北を指すように磁北偏差が補正されています。ほぼ三角点の標柱の向きと一致しています。

Youtube動画「ジオグラフィカのヘディングアップモードで360度回転してみた」

文字と静止画だけでは、ヘディングアップモードの動作を説明しにくいので、Youtube動画(約18秒)にしてみました。富士山をロックオンした線が回転するのがわかると思います。

まとめ

ジオグラフィカのヘディングアップ表示を利用すれば、「地図とコンパス」より大幅にナビゲーションの手間を省くことができます。

もちろん紙の地図とコンパスを持たなくてよいわけではありません。必ず併せ持ちます。スマホはバッテリー切れや不測の故障でいきなり使えなくなる可能性があります。

そうしたリスクを考慮しても、「紙の地図とコンパス」と「登山地図アプリ」の主従関係は、逆転しつつある、いや、もはや逆転しているのかもしれません。「紙の地図」で広域の地理を把握し、「コンパス」でスマホの電子コンパスの精度をチェックする。そして、行動中は「登山地図アプリ」を小まめに確認するのがいちばん賢いと言えそうです。

ジオグラフィカの使い方については、こちらの記事をご参照ください。

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