登山者、クライマー、ボルダラーにおすすめの体重体組成計

スポーツと体重管理は切っても切り離せません。

登山やクライミングをスポーツに分類することに異論はあるかもしれませんが、運動能力を客観的に評価するうえで体重を無視することはできません。

ボルダラーやフリークライマーなら指先の負担を減らすために体重を減らしたほうが有利です。アルパインクライマーは活動フィールド(山奥の岩壁)までたどり着かないと話が始まらないため、足腰に強靭な筋肉をまとわざるを得ません。ヒマラヤ登山家はさらに……と思いきや、筋肉量が多いと酸素消費量が増えて高山病になりやすいという落とし穴があります。かのラインホルト・メスナーは普段のトレーニングで特殊な走法により上半身の筋肉をむだに増やさないようにしたと「第7級 極限の登攀 」のなかで書いています。

ともあれ、体重を管理するうえで必須なのが体重計です。体重管理の第一歩は計測すること。体重を減らしたいのであれば、ときどき体重計に乗って一喜一憂するのではなく、毎日測定することによって、運動量や食事量を意識し、不摂生しないように心理的な歯止めをかけることが重要です。

登山の体重管理(体重計/体組成計遍歴)

個人所有の体重体組成計による体重管理歴は30年以上。筆者自身の体重計/体組成計の遍歴を記せば、それが自ずとおすすめ製品となります。

タニタ アナログヘルスメーター THA-528

アナログ式/シンプル/電池不要/学習コスト0

ホームセンターなどでよく見かける製品です。子供のとき実家の風呂場の前に置かれていました。社会人になると自分で購入しました。目盛りの近くに「BMI標準体重表」が記載されています。

ワンダーフォーゲル部で歩荷トレーニングに励み、太腿の筋肉が隆々と盛り上がっていた頃、体重は63~64kgでした。真夏の炎天下でランニングすると、簡単に2kgくらい減る(主として発汗による脱水)ことを知りました。

雪山登山から遠ざかり、クライミングが主体になると、体重が増えやすくなりました。足腰系の激しいトレーニングをやめたからです。食べる量は減っておらず、仕事のストレスで食べ過ぎることがありました。

週に2回のジムダリング(ジムでのボルダリング)と週末の外岩クライミングだけだと運動量が足りません。「なんか調子悪いな」と思って体重計に乗ると、67~68kgに増えていました。

自分の限界付近のクライミングでは体重が1kg増えただけで、核心のワンムーブをこなせるかこなせないか、完登できるか失敗するかが決まることがあります。

体重のわずかな変化に敏感になり、毎日記録を取るようになりました。その際、アナログ体重計で困るのは、目盛りを見る角度によって、100gくらい誤差が生じることです。そこに「体重が減っていてほしい」という願望が加わると、いっそう視覚を歪めます。

なるべく真正面から見ようと努力しなくてはなりません。毎回そうして神経を使うのが苦痛になりました。

スマホ連携なんか面倒くさい。その都度、体重を目視確認できれば十分、という人に最適です。

オムロン 体重体組成計 カラダスキャン HBF-362

デジタル式/多機能/電池もち良好/記録の手間がかかる

デジタル体重体組成計を購入し、視差や願望に左右されない客観的な数値が読めるようになりました。

毎日3回、紙のノートに記録します。

  • ①夜、就寝する直前
  • ②朝、起きた直後
  • ③朝、トイレを済ませた直後

夜と朝の差で、就寝中の不感蒸泄を計測するという念の入れようです。前夜、湯船でどれくらい発汗したか、就寝前に水分をどれくらいとったかによって、「①夜、就寝する直前」と「②朝、起きた直後」の体重は変動が大きく、あまりアテにならないとわかりました。

水分が不足していると、トイレであまり尿が出ません。水分を摂りすぎていたら、たくさん尿が出ます。水分と汗と尿は必ずしもイコールではないですが、一定の相関関係があることは間違いありません。

その意味では「③朝、トイレを済ませた直後」の体重こそが、人間のホメオスタシスによって調整済みの、定点観測に適した数値だと言えます。やがて「③朝、トイレを済ませた直後」だけ記録するようになりました。

数年この習慣を続けるうち、だんだん不満な点が出てきました。側面の電源スイッチをつま先で押して、起動するまでの待ち時間がわずらわしい。読み取った数値を記憶して、紙に書きつける作業が面倒くさい。

朝の忙しい時間帯、何か別のことをしているあいだに数値を忘れることがありました。すでに朝一番の水分摂取(コップ一杯のミネラルウォーター)を終えて、体重が増えています。仕方なくもう一度測り直して、200gくらい差し引いた数値を記録することがありました。

過去の記録(直前、1日前、7日前、30日前、90日前)を参照する機能があるのですが、操作がわかりにくいので利用しませんでした。

「そんな断片的な記録じゃなくて、継続的に記録してくれよ」

人間とは贅沢で、楽をしたがる生き物です。

内臓脂肪や筋肉量をできるだけ精密に計測したいなら、やはり手でバーを引っ張り上げるタイプのほうが良いです。

オムロン 体重体組成計 カラダスキャン HBF-252F

デジタル式/スマホ連携/電池もち良好/NFC通信は今となってはマイナー

2015年2月に購入。またオムロンの製品です。特にメーカーにこだわりはないのですが、フィギュアスケートの浅田真央さんがCMキャラクターに起用されていたことが大きいです。

体重さえわかればよいと割り切り「乗るだけ」のタイプにしました。

この製品は電源スイッチを押さなくても、両足で乗ると計測を開始します。本体内に30日分の数値を記憶します。スマホのNFC通信機能を利用してデータを読み取り、アプリでグラフ表示できるのみならず、そのデータをオムロンのサーバに自動的に転送(バックアップ)できます。データを他で利用したければ、CSV形式でダウンロードできます。

これで記録忘れがなくなりました。……と言いたいところですが、いやはや人間というやつは慣れると堕落するものらしく、定期的(30日以内)にスマホを体重計にかざす作業さえ怠りがちになりました。しかもスマホをZenfone2からMate 10 Pro(Huawei)に替えたら、NFCの位置や相性の問題なのか、転送に失敗することが増えました。ついつい面倒になり、データの一部を期限切れで失ったことがあります。

NFC接続は近距離接続のため、待機電力が最小で済みました。現在はNFC接続の機種は姿を消しました。

オムロン 体重体組成計 カラダスキャン HBF-230T

デジタル式/スマホ連携/ユーザ囲い込みに好き嫌いが分かれる

2021年に購入を検討。時代はBluetooth。NFCみたいにスマホを体重計にピンポイントで当てなくても良い。スマホが数メート以内にあれば良い。

自分は最先端の体重管理をしているつもりでしたが、いつの間にか浦島太郎になっていました。

「よし、こいつに買い替えよう」と思っていた矢先、オムロンよりこんなメールが届きました。

この度、「WM(わたしムーヴ)」アプリは、2022年3月31日(木)をもちまして、サービス提供を終了させていただくことになりました。
現在の利用状況を鑑み、また当社の事業戦略として「WM(わたしムーヴ)」サービスを終了し、今後は「dヘルスケア」アプリを中心に、お客様の健康習慣に貢献するヘルスケアサービスの提供を行っていきます。

なぜ余計なドコモのサービスと連携しなくちゃならないの? わずらわしい。

オムロンの大きなサービス変更は初めてではありません。5年前にはこんなことがありました。

 2017年12月をもちましてウェルネスリンクサービスとしてご提供しておりますスマートフォン向けアプリおよびパソコン向けサービスを終了させていただくご案内をいたしておりましたが、以下の通り終了日を決定いたしましたのでご案内いたします。

ウェルネスリンクサービスでは体重データ等をCSV形式でダウンロードできました。それが封じられ、今度はワケのわからないサービスと強制的に連携させられるなんて……。愛想が尽きて、別のメーカーに乗り換えることにしました。

筆者は職業柄、データの可搬性を重視します。そうしたこだわりがなく、国産メーカーの信頼性に身をゆだねるならオムロンやタニタがおすすめです。

その後、オムロンもGoogle Fitにデータ連携できるようになったそうです。

Xiaomi Mi Smart Scale 2

デジタル式/スマホ→Google Fit連携/Bluetooth待機電力のため電池もちは今ひとつ

2022年3月に利用開始。毀誉褒貶かまびすしい中華製品ではありますが、当時コストパフォーマンスは随一でした。(三千円くらいで購入)

すでに同社のスマートウォッチを購入し、スマホに管理アプリを導入していたので敷居は低かったです。

Xiaomi Mi Smart Band 4はトレーニング登山に最適です
通い慣れた登山道で毎回、スマホの登山アプリでGPSログをとろうとは思いません。むしろトレーニング効果を検証するために心拍数をモニタリングしたい。手持ちのスマホにスマートバンドをちょい足しすれば、高価なスマートウォッチに近いことができるようになります。

特筆すべきは、Zepp Life(旧Mi Fit)アプリを経由して、Google Fitにデータ連携できるところ。もし将来、他のメーカーに乗り換えたとしても、Googleアカウント上に連携されたデータを持ち続けることができます。

別途、解説記事を書くつもりで、先延ばしするうちに、なんだか調子が悪くなりました。2024年8~9月、電池(単4乾電池×4本)を交換して1週間くらいで「Lo」(Low Buttery)表示が出る現象が5回くらい立て続けに起こりました。

朝の忙しい時間帯に電池交換するのは面倒です。

「たまたま電池の品質が悪かったのかな」と思い、電池の種類やメーカーを変えてみましたが、事態は改善しませんでした。「Bluetoothまわりが劣化し、待機電力を無駄遣いするようになったのではないか」と推測。もともとBluetoothがつながりにくいときがありました。

現行モデルは低消費電力化が進んでいるようです。

Anker Eufy (ユーフィ) Smart Scale A1

デジタル式/スマホ→ヘルスコネクト→Google Fit連携/単4乾電池×3

いまここ。

スマホ連携できる体重体組成計はいまや百花繚乱。今回は、モバイルバッテリーで定評のあるAnkerが展開するEufyブランドを選択しました。

ひとつ懸念事項がありました。2025年6月にGoogle Fit APIが廃止され、「ヘルスコネクト」がとって変わることが宣言されています。機種によっては「Google Fitとの連携は未定」といった文言が見受けられました。

Eufyの対応状況はどうなのか、公式サイトを見てもよくわかりませんでした。

※Googleより2025年6月30日をもって、サードパーティーアプリによるGoogle Fitとの連携サービスが終了することが発表されました。今後Google Fitに接続するにはヘルスコネクトアプリを使用する必要があります。

だからGoogle Fitとデータ連携できるのかできないのか、どっちだよ……。😩

Eufy Lifeアプリをスマホにインストールして確認したところ、「サードパーティサービス」というメニューが存在し、「Google Fitに接続」を選択すると、「ヘルスコネクトを使ってみる」という画面が出ます(あらかじめ「ヘルスコネクト」をインストールしておくこと!)。「使ってみる」と応答すると、無事にGoogle Fitにデータ連携できました。

乾電池式の体重体組成計は4台目ですが、単四乾電池×3本という仕様は初めて。登山向けヘッドランプもこの本数が多数派ですし、まさしく登山者、クライマー、ボルダラーにおすすめの体重体組成計ではないでしょうか(こじつけ)。

長期使用の評価はこれから。円安による輸入製品の高価格化が進むなか、2,690円と安価なのが嬉しい。アプリのファーストビューが、いちばん知りたい「体重」になっているあたり、わかってらっしゃる

まとめ

黒戸尾根・刃渡りでの自撮り

登山の体重管理について、最後によもやま話をひとつ。

登山で体重が減るとは限りません。

下山して体重を測ったら、むしろ増えていた

というのは登山あるあるです。

激しい登山や長期間の登山のあとで結果的に(一時的に)減ることはありますが、体重を減らすこと自体を目的として山に登るのは危険です。登山中はエネルギー切れを起こさないように、渇きや飢えが進行しないうちに積極的に飲み食いしましょう。

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