モンベルのサイドポケットが優秀な件【アイゼンケース代用】

登山用のザック(リュックサック、バックパック)にはサイドポケットがあるほうが断然便利です。

ここで言うサイドポケットとは、フタもファスナーもないポケットのことではありません。今風のザックにはよくそんなポケット(メッシュ製だったり、マチ付きだったり)を備えていますが、それはワンドポケット(wand=杖の意)と呼ぶほうがふさわしいです。

ザックのサイドポケットの役割

ある登山ガイドさんがこんなエピソードを書かれていました。岩稜帯をガイドしていたとき、お客さんがフタのないサイドポケットに水筒を突っ込んでいた。それは危ないと指摘したところ、客は「これで百名山を登ってきた」と言って聞き入れてくれない。ところが、歩いているうちにサイドポケットの底を岩で突き上げて、水筒を落としてしまった……。

私はザックの外側に極力モノを付けません。ドーム型テントのポール袋をサイドに差すことはまずありません。外側に付けるのは、ピッケル、ワカン、スノーシュー、トレッキングポールくらいです。ヘルメットも出来るだけザック本体に収納。「2気室のザックなんて小賢しい」とばかりに1気室をメインに使ってきました。すると、休憩のたびに水筒を出し入れするだけでも面倒くさい。えっ、「雨蓋に入れればいいだろう」って? うーん、それだとタプタプと揺れて重心を崩しやすい気がしますし、冬場にテルモスを横倒しにすると保温性が落ちるんですよ。フロントポケットを備えたザックならそこに入れればいいですが、重心が背中から離れて後ろに引っ張られる気がします。また、ザックを地面におろした拍子に割れそう……って、これは昔のガラス製のテルモスの感覚が染みついているせいです。重心の点で言うと、本体がベスト、サイドポケットがベターです。

このたびサイドポケット(もちろんファスナー付き)を後付けしてみることにしました。

サイドポケット遍歴

キスリング時代

帆布製のキスリングを使っていた頃は、サイドポケットの心配はありませんでした。なにせ大容量のサイドポケットが左右に作り付けになっています。慌ただしい登山前の準備で、次から次へと思い出す不足品を片っ端から放り込んでも、余裕で飲み込んでくれました。まぁ、その代わりに本体の上部にはテント袋を載せて、細引きで念入りに縛るので、行動中に本体へアクセスするのは大仕事でした。

ちなみに上の写真は中国地方の山を登り歩いたときのひとコマ。鳥取砂丘で観光したあと鳥取駅のホームで蕎麦をかきこむの図です。

キスリングの横長の形状は、岩稜帯を通過するときに引っ掛けやすくて危険です。サイドポケットをガムテープでつぶしました。

上の写真は不帰ノ嶮(Ⅱ峰のトラバース?)を通過中の写真です。本体にモノが増えた分、縦長になって天辺のハトメまで見えています。

アタックザック時代

鈍重なキスリングから卒業すべく、アタックザックを購入しました。「アタックザック」とは本来、ベースキャンプから山頂を往復するときに使うスリムなザックを指すのでしょうが、地方のワンダーフォーゲル部では「キスリング」の対義語として使われていました。

最初に買ったのは1980年代、石井スポーツの店頭に平積みにされていたオリジナル製品のアウトレット。容量は50リットルくらい。雨蓋を閉めるバックルがワンタッチではなく、開閉の都度「目」の字バックルの隙間にストラップを通して折り返す必要がありました。ワンタッチバックルのパーツを買ってきて継ぎ足しました。そうしてスマートな登山者に進化したつもりでしたが、いかんせん削り足りない装備群が入りきらず、キスリング時代と同じようにザックの上部に縛り付けたり、サイドポケットを後付けしたりしました。

その後、石井スポーツのガッシャブルムを使ったり、ドイターのパッドが厚めでモノがあまり入らないザックを使ったりしましたが、フリークライミングやボルダリングに傾倒するようになると断捨離しました。ときどき登山が懐かしくなって買い直したのがモンベル(ZERO POINT)の旧型アルパインパック(60㍑)です。

雪山登山を再開して最初に使いましたが、1気室で、サイドポケットはもちろん、フロントポケットもありません。本体にアクセスするファスナーもありません。モノの出し入れがなんと面倒くさいことか。レインウェアを出すのが面倒くさくて濡れそぼったことさえあります。

モンベルのサイドポケットM

満を持して、モンベルストアにて「サイドポケット M」を購入しました。

重量は、公式には185g(2個)とされていますが、実測は94g(1個)でした。

取扱説明書

サイドポケットの両面

2個セットで、側面のファスナーの長さは奥と手前で非対称になっています。大きく開く側が手前(背中側)になるようにザックに取り付けると良いでしょう。

ザックのサイドストラップを通すテープ(ループ)はラダー状になっており、モンベル以外のザックにも流用できます。こうして汎用化されたのは2019 Gear Catalogで登場したモデルからです。公式サイトの説明書きはこのメリットに言及していないため、知らない人が多いのではないでしょうか。

私のザックはモンベルの旧型でサイドストラップは3本。現行の2本とは当然ながら位置が異なります。旧モデルのサイドポケットが適合せず、諦めていました。

参考までに旧モデルのリンクはこちら。

ラダーの間隔

ラダーの間隔は4~5cm。モンベル以外でも適合するザックが多いはずです。

内側

内側にループの縫い目が露出しています。生地のボリューム感は厚からず薄からず、軽量さと丈夫さの最適解といったところです。

3段のサイドベルトに取り付けた

3段のサイドベルトに取り付けてみました。ザックの色味と合っています。片方に水筒やテルモス、もう片方にアイゼン、と使い分けても良さそうです。モノをいっぱい詰めると横に膨らんで、子供が遠足で使うリュックサック風味が出てくるのは仕方がありません。

ちなみにフロントポケットとしては「ワカンスタッフバッグ」が便利です。

容量

500mlの魔法瓶(モンベルのアルパインサーモボトル 0.5L)と900mlのペットボトルが余裕で入ります。

サイドポケットの応用

モンベルのサイドポケットは汎用のスタッフバッグとして流用できます。

ジェットボイルとガスカートリッジがほどよく収まります。

アイゼンが余裕で入ります。あまり生地は厚くありませんが、爪を向かい合わせにしておけば突き通すことはことはありません。ゲイター(ロングスパッツ)もいっしょに入りそうです。

その他の製品

お近くにモンベルがない場合は、似た仕様のRipen(アライテント)のサイドポケットをどうぞ。

グラナイトギアの「パックポーチ」も魅力的です。この製品もラダー状のテープが2列並んでおり、汎用性があります。

1個で3,000円以上の価格に二の足を踏みます。2個で6,000円以上なら、いっそのこと新しくサイドポケット付きのザック(カリマーとかミレーとかドイターとか)を買ったほうがいいのではないかと。

この製品の長所は、D字型で、角が出っ張らず、スマートなこと。子供が遠足で使うリュックサックみたいになりにくい。スタイリッシュさを重視する人におすすめします。

まとめ

今回の延命措置によって、旧型のザックをもうしばらく使うことになりそうです。

このザックは色褪せて、ところどころ小さな穴があいています。雨蓋のファスナーは今風の止水ファナーではなく、昔ながらのフラップと普通のファスナーです。サイドの作り付けポケットは浅くマチがなく、ピッケルやトレッキングポールの先を差しにくい。登山への行き帰り、公共交通機関で缶コーヒーを飲んでも、空き缶を突っ込む隙間がありませんでした。

これからはもう少し余裕をもった使い回しができそうです。


その後もサイドポケットへの愛は止まず、サイドポケットを備えたバックパックを購入しました。

モンベルのサイドポケットは出番がなくなるかと思いきや、ボトムストラップに括り付ければ、おあつらえ向きの拡張ポケットとなります。

ノードカム解体新書「ANTARES 50L+10L」レビュー
主として「雪山登山で通用するか?」という観点でレビューします。結論を先に言うと、雪山登山で十分に通用します。ただし、雪山登山にターゲットを絞ったバックパックではないため、ある程度の割り切りや使いこなしの工夫が必要です。
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