優秀だけどオススメしにくいYCMマップコンパス

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時は昭和。大学ワンダーフォーゲル部の先輩がこのコンパス(方位磁石)持っていました。

この先輩、地方の時代錯誤的なワンダーフォーゲル部にコンパクトなガスランタンをもちこんで驚かせた人物です。

ワンダーフォーゲル部にランタンがやってきた
学生時代のワンダーフォーゲル部では、ランタンを使った記憶がありません。先進派の先輩が現役引退後、個人山行でイワタニプリムスの2245ランタンを持ってきたときには一同どよめきました。谷崎潤一郎的な陰翳礼讃の世界に西洋文明がもたらされた瞬間です。

筆者は勝手に「貧乏学生がちょっと奮発して良いモノをもちたいときに選ぶアイテム」と位置付けていました。

国内メーカー「YCMコーポレーション」が製造するオイルコンパスで、ベースプレート型のコンパスからプレート部分だけ取り除いた外観です。

「磁針の精度は高そうだし、コンパクトでいいじゃないか」

と思いがちですが、実は似て非なるモノなんです。

ベースプレート型をきちんと使えない人が手にすると、混乱すること間違いなしです。

YCMコーポレーションのコンパスは陸上自衛隊や南極観測船で採用されている信頼性の高い製品です。詳しく知りたい人はPEAKS 2019年7月号の「野外道具探訪」をご参照ください。

回転盤矢印と進行線が逆転している

YCMマップコンパス(左)とベースプレート型コンパス(右)を並べてみました。

注目すべきは回転盤内の矢印がさしている方位です。ベースプレート型のコンパスでは回転盤矢印は「N」に固定されており、「観念上の磁北を記憶するマーカー」として機能します。

いっぽうYCMマップコンパスでは、回転盤矢印がおさまっている透明なカプセルが空回りし、目盛りのどこでも360度さすことができます。

ベースプレート型コンパスを使い慣れた人は、アクセルとブレーキが反対になったクルマを運転するような戸惑いをおぼえることでしょう。

こう考えてください。

  • YCMマップコンパスの「回転盤矢印」は、ベースプレート型のコンパスにおける進行線として機能する。
  • YCMマップコンパスの「S」から「N」に向かう見えない矢印が、ベースプレート型のコンパスにおける回転盤矢印として機能する。

つまり、回転盤矢印と進行線が逆です。

YCMマップコンパスで山座同定する

ベースプレート型コンパスの使い方について別記事にまとめました。

15分でわかる地図とコンパスの使い方
地図とコンパスの使い方について教科書のように書いたら15分ではすみません。等高線や磁北の話は割愛します。磁北線を引いた地図と、プレートタイプのコンパスがすでに手元にある前提で話を進めます。コンパス(方位磁石)の主要な名称最低限、3つの名称を...

この記事を踏まえて、YCMマップコンパスで「山座同定」する操作方法を説明します。

場所は同じ小梨平キャンプ場です。梓川のほとりに立ち、下流に目をうつすと、こんもりした独立峰があります。あの山の名前は?

  1. 体の正面でコンパスをかまえ、「回転盤矢印」を目標の山に向ける。
  2. 「外枠のN」を「磁北(磁針の赤い先端)」と重なるまで回転させる。

これで「回転盤矢印」と「磁北」の角度を記憶できました。以後、「現実の景色」と「磁針」のことは忘れてください。

1.と2.を逆にしたほうが操作しやすいかもしれません。まず「外枠のN」を「磁北(磁針の赤い先端)」に合わせて、次に回転盤矢印を目標の山に向けます。
  1. 地図にコンパスをのせ、「回転盤矢印」の手前を現在地に当てる。
  2. 現在地を支点として、「外枠のNとSをつなぐ線」が「地図の磁北線…」と平行になるまでコンパス全体を回転させる。 ※磁針の向きは無視する。

すると、「回転盤矢印」の先に目標の山の名前があるはずです。あの山は「焼岳」だと思われます。

「進行方向把握(ホワイトアウトナビゲーション)」、「現在位置特定(クロスベアリング)」についても同様に回転盤矢印と進行線が逆であることを踏まえて操作方法を考えてください。

まとめ(YCMマップコンパスを買うべき人)

こんな人にYCMマップコンパスをおすすめします。

  • コンパクトで、磁針の精度が高いオイルコンパスが欲しい。
  • ベースプレート型コンパスと同じような使い方をしたい。

蓄光型か、レンズ付きかで4種類のなかから選択できます。

標準型

レンズ付き

蓄光型

蓄光型レンズ付き

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