逆もまた真なり、ボルダーを岩稜のように登るべからず

「岩稜をボルダーのように登るべからず」と書きましたが、その逆「ボルダーを岩稜のように登るべからず」は真でしょうか。

前傾が強く、ホールドが悪い課題ほど「真」

……と私は考えています。

  • 三点支持で登る
  • 傾斜を殺すために壁に重心を近づける
  • ホールドを真下に加重して保持する

など、岩稜や、やさしい課題で云われるコツがしばしば通用しなくなります。むしろコツが逆になります。

あくまでも整備された(脆いホールドが撤去された)ボルダーや室内のボルダーの話です。

三点支持で登ってはいけない

三点支持だと遠いホールドをダイナミックにとる動きはできません。

壁に重心を近づけてはいけない

とりにいく先のホールドが外傾している場合、壁に沿って飛び出すと、背後への慣性が働きホールドから掃き出されてしまいます。

壁から腰を離した体勢から、壁に向かって腰を入れると同時にホールドをつかんだほうが掃き出されにくい。

次のホールドを保持した瞬間には壁に重心が近づきますが、その前段階ではあえて壁から重心を外すわけです。

ホールドを真下に加重したままではいけない

これはあまり言われていないことではないでしょうか。以下で掘り下げてみます。

「ホールドを引き抜き方向に保持する」

難しい課題をこなすには、しばしば「ホールドを引き抜き方向に保持する」ことが重要になります。岩稜では避けるべき登り方がボルダーでは威力を発揮します。

アンダーホールドは上に向かって加重しますが、「ホールドを引き抜き方向に保持する」のが重要なのは同じです。サイドホールドだともっとわかりやすいでしょう。真上でもなく真下でもなく、引き抜き方向に保持する度合いが強くなります。

「ホールドを真下に加重して保持する」だけではムーブを起こせない

悪いホールドを真下(または真上)に加重し、壁にピタリと寄り添って傾斜を殺し、ぎりぎりで留まっている体勢からだと、ムーブを起こした瞬間に指がホールドから掃き出されるか、指が開くかして、落ちてしまいます。

ホールドを引き抜き方向に保持できるほどムーブを起こしやすい

よく難しい課題を練習するときに、悪いホールドの代わりに、近くにある「持ちやすいホールド」で代用してムーブを試すことがあります。「持ちやすいホールド」が元のホールドより下にあったとしても、遠いホールドを簡単にとることができたりします。

それは何故かと言うと、「持ちやすいホールド」はたいてい引き抜き方向に保持しやすいので、壁から体を離して、腰の位置が高い体勢からムーブを起こせるからです。より高い位置のフットホールドを使える場合もあります。

引き抜き方向の保持について、さらに付け加えると、初動負荷と終動負荷を意識する必要があります。

引き抜き方向の初動負荷

ふくらんだ壁の奥にあるホールドをとりにいく場合、引き抜き方向に加重することによって、奥に向かって勢いをつけます。ホールドを真下に引いて、真上に動くだけだと、どうあがいても奥にあるホールドをとることはできません。

引き抜き方向の終動負荷

のけぞってホールドをとりにいく場合、下側の手指で最後までしっかり引き抜き方向に保持しないといけません。慣性に耐えられず手指が開いてしまえば振られ落ちします。

「保持力が強い」を「引き抜き方向に保持できる」に言い換えてみる

強いクライマーが難しい課題を簡単に登るのを見ると、それは「保持力が強い」からだと考えがちです。それは50㌫正しいのですが、もう一歩進めて、「引き抜き方向に保持できる」からだと言い換えてみてはどうでしょうか。

自分もホールドの持ち方を工夫して、引き抜き方向に保持することを意識すると、登れてしまうかもしれません。

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