ボルダーを登るような動き
ガイドさんが岩稜の歩き方を講習しているYoutube動画を見ました。
あれ? なんかぎこちないなぁ。と思って見ていたら、えいやっとボルダーを登るような動きをされました。
「ボルダーを登るような動き」とは、手でつかんだホールドを信用して、腕力で身体を引き上げるような動きです。未知の岩稜でこれをやるのは危険です。
そのガイドさんを弁護しますと、講習用の慣れた岩場なのでホールドを熟知しており、さらには講習生に向かって説明しながらなので、やや不注意な動きをされたのでしょう。
手前方向に引くように荷重してはいけない
足へ荷重するのが基本だとは言っても、傾斜が急になり、難度が高くなるほど、腕力で引き上げる度合いが高くなります。
問題はホールドに荷重する方向です。できるだけ鉛直方向(重力方向)に荷重します。
風雪にさらされる稜線では岩の風化が進行しやすく、ガバ(がっちり握ることができるホールド)がそれこそガバッと剥がれ落ちることがあります。つかんだ岩が実は浮石(重力でそこに留まっているだけ)かもしれません。つかんだ瞬間、浮いている感触があったら使わないのが一番ですが、もし使わざるを得ない(動作の途中から引き返すともっと危ない)場合には、そっと真下に押さえ付けるように荷重します。
仰向けに転倒転落すると止めようがない
手前方向に引くように荷重すると、浮石が動いたり、ホールドが欠けやすい。のみならず、もしホールドが動いたり壊れたりした場合、登山者は仰向けに転倒転落するため、体勢を立て直すのは困難です。
鉛直方向に荷重すれば、ホールドが壊れにくく、もし壊れたとしても前のめりになるため転落を食い止める可能性が高くなります。
ハシゴをボルダーのように登ろうとしてハッとした
槍ヶ岳で頂上直下のハシゴを登っていた時のこと。
垂直で露出感があります。落ちたらタダでは済みません。理屈ではわかっていますが、いわゆるガバの連続ですから、気を抜いていました。まるでジムのやさしいボルダーでウォーミングアップするかのようにデッドポイントで登ろうとしている自分がいました。三点支持どころか、瞬間的には一点支持になりかねません。
いかんいかん。ここは三千メートルの岩稜だ。ハッとしてハシゴにしがみついた瞬間、急に怖くなりました。
クライミングジムで鍛錬して自信がある人ほど、やさしい岩稜で気を抜かないように気をつけましょう。
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