〇〇ハックでは読めない登山用レインウェアの選び方

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登山用レインウェアを基本構造で選ぶ

登山用レインウェアは常時着用せず行動中はザックのなかに収納するのが基本です。山に出かけて帰宅するまで、一度も袖を通さないことさえあります。そのため軽量コンパクトさが優先される傾向にあります。内側にたくさん着込むことを想定しないため、シルエットは比較的細身です。

登山用レインウェアをフードの使い勝手で選ぶ

フードをドローコードやベルクロテープで調節して、頭の形にフィットさせやすいか確認しましょう。顔面だけ露出し、隙間から雨粒が侵入しないのが理想です。

雨粒が目に当たると不快なので、製品によってはフードに短いツバが付いています。それでも不十分なら、内側に帽子をかぶって、ツバでひさしを確保することになります。

一般的には、ヘルメットの上からフードを被れるだけの十分な大きさがあることが重要とされています。しかし、フードが十分に大きくなくても悲観する必要はありません。ヘルメットの内側にフードをかぶるという裏技があります。

別記事で掘り下げたのでご参照ください。

登山用レインウェアのフードとヘルメットの相性
一般的には、ヘルメットの上からフードを被れるだけの十分な大きさがあることが重要とされています。ヘルメットを着用する登山では、ヘルメット対応フード(大型+ドローコード調整可)のモデルを選ぶことで、防風性と雨天時の保護性能を両立できます。ただし...

登山用レインウェアを脇下のベンチレーションの有無で選ぶ

脇下のベンチレーション

登山用レインウェアの脇下にピットジップ(ベンチレーション)があると、オーバーヒートや蒸れを効率よく解消できます。脇が屋根となるため、開放したままでも雨が降りこみにくい。ファスナーが増えるぶん嵩張るのと、開閉しにくいのが難点です。

ファイントラックのジャケットのリンクベント

ファイントラックのジャケットのように胸から両腰に向かって、大きく斜めに開く位置にベンチレーション(リンクベント)が付いている製品があります。これは開閉しやすく、かつ内側に着こんだウェアのポケットにアクセスしやすいというメリットがあります。

特に日本では、レインジャケットは軽量コンパクトを旨とするため、ピットジップを備えた製品は少数派です。残雪期のシェルとしても使えそうな、やや重厚な製品で採用されることが多くなります。

「蒸れの解消しやすさ」と「軽量コンパクトさ」の最適解として、両脇ポケットの内側をメッシュとし、「ファスナーを開放すればベンチレーションとして機能する」と主張する製品が多くみられます。

500mlサイズの魔法瓶がはいる大きなポケット

内側はメッシュでベンチレーションとして機能する

登山用レインウェアをポケットの位置で選ぶ

ポケットがバックパックのウエストベルトと干渉しない高い位置にある製品がおすすめです。

ひと昔前のレインジャケット

ひと昔前は、止水ファスナーが存在しませんでした。

登山用レインウェアにポケットを付ける場合、ファスナー部分にフラップをかぶせて雨粒の侵入を防ぐタイプが多かったです。

ポケットの底がジャケットの裾まで達しているため、固いモノを入れると足上げのたびにコツンコツンと当たり不快でした。

ウエストベルトを締めるタイプのザックが普及すると、その不快さは倍増しました。

フラップ付き両脇ハの字ポケット

そこでポケットをやや高い位置に付けるようになりました。

普通タイプのファスナーの場合、雨粒の侵入を防ぐためフラップで覆います。「止水ファスナーは手応えが硬く、耐久性に不安を感じる」という人はこのタイプを選ぶことになります。

フラップの一部をベルクロで留めて、ファスナーを全開にすれば、ベンチレーションとして利用できます。ファスナーが万が一故障した場合のバックアップにもなります。

ただし、ベルクロが自動的に(勝手に)粘着しやすく、ファスナーを開閉するたびに邪魔しがちです。平常時には煩わしいと感じるかもしれません。

両脇ポケットとは別に、ナポレオンポケット(胸ポケット)が追加されたタイプは利便性が高いです。スマホやカメラを素早く出し入れするにはいちばんアクセスしやすい「特等席」です。

ナポレオンポケットは最もアクセスしやすい

両胸にナポレオンポケットが付いたタイプがときどき見られます。「特等席」が2つあるわけで、このタイプがいちばんモノを出し入れしやすいです。容積に注意。大き目のスマホを入れると一杯になってしまう製品から、腰から肩近くまで広大な収容力をもった製品まであります。

登山用レインウェアを袖口(カフ)の調節機構で選ぶ

袖口はベルクロとゴムのシャーリングを併用するタイプが標準的です。軽量化を優先した製品ではゴムのシャーリングだけになります。前者のほうが手首の締め具合を調整しやすく、雨水の侵入を防ぎやすいですが、横殴りの風雨のなかでは五十歩百歩かもしれません。

特にトレッキングポールを突いて歩く場合、袖口が横から上を向くため、雨水が侵入しやすくなりまりす。岩稜帯で岩をつかむ場合も同様。ジャケットのポケットに「レインカフス」を忍ばせておくと強い味方になります。

登山用レインウェアをフロントファスナーがダブルジッパーかどうかで選ぶ

フロントファスナーのダブルジッパー仕様

登山用レインウェアのフロントファスナーが下側からも開くダブルジッパー仕様だと、なにかと便利です。

  • ハーネス装着時、ビレイループを出しやすい。
    クライミング中にウインドブレイカー代わりに羽織った場合、下側を開いてビレイループを出しやすい。冬季クライミング用の「ビレイパーカ」は100%ダブルジッパー仕様です。
  • ジャケットをはだけることなく換気できる。
    休憩中やテント内ですわってくつろぐときにも、下側を少し開いたほうが腰回りが突っ張らず快適です。
  • 男性諸氏なら、用足しの際にも利便性を享受できる。
    アンダーウェア、トレッキングパンツ、レインパンツ、レインジャケットの裾をかいくぐって、モノを導き出した状態で、「うわっ、飛沫が……」なんてトラブルを回避しやすくなります。

軽量コンパクトを旨とするレインジャケットでは、ダブルジッパーを備えた製品は少数派です。残雪期のシェルとしても使えそうな、やや重厚な製品が多くなります。

登山用レインウェアとしてアノラック(プルオーバー)タイプをあえて選ぶ

前項の「フロントファスナーのダブルジッパー」で、腰回りがダブつかない、ゴロつかない、という長所を取り上げました。同じ効果を「ファスナーをなくす」という逆の発想で得ることができます。どうせザックのウエストベルトや、登攀用具で腰回りがふさがるのであれば、その部分にファスナーがあっても開くことができません。胸元だけ開けば十分です。ファスナーが短いぶん軽量で、かつ雨が侵入しにくくなるので、一石三鳥です。

登山用レインウェアのパンツこそ慎重に選ぶ

レインパンツは頻繁に着脱しづらいので、「着脱のしやすさ」と「着用したままで多様なシチュエーションに対応できること」を重視したいところです。

サイドフルオープンという選択肢

せめて足の付け根くらいまでファスナーが欲しい。いや、そこまで行くなら、いっそのことサイドフルオープンにして欲しい。そうすれば登山靴を履いたまま着るのも脱ぐのも自在です。もし暑ければサイドファスナーの上半分を開放したまま歩けば良い。「どんなに透湿性にすぐれた素材もオープンエアにはかなわない」という金言(自作)を実証する瞬間です。ファスナーが長いぶん重量が増えますが、重量をおぎなって余りある利便性を得ることができます。

軽量コンパクトを旨とするレインパンツでは、サイドフルオープンファスナーを備えた製品は少数派です。残雪期のシェルとしても使えそうな、やや重厚な製品が多くなります。

せっかくサイドフルオープンの製品を買っても、スライダーへの挿入口が裾側にしかないと上半分だけ開放する技が使えません。いわゆる「ダブルジッパー」になっている必要があります。

トレッキングパンツがそのままレインウェアになるという選択肢

2017年春夏シーズン、ミレーが「TYPHON(ティフォン)50000 シリーズ」という高透湿防水ウェアを発表しました。まず素材の透湿性が50,000g/m²・24hrsと優れています。それだけでも大注目ですが、「ティフォン 50000 ストレッチ トレック パンツ」が画期的でした。見かけは普通のトレッキングパンツで、裏地がしなやかなニット地になっています。雨が降ってきてもレインパンツを重ね着する必要がなく、軽快に歩くことができます。

真夏の低山ではさすがに蒸れ蒸れになりそうですが、夏の日本アルプスや、春秋の中級山岳では便利に使えるでしょう。ホーボージュンさんは「山と渓谷 2018年6月号」(p.151)で《僕は山だけでなくこのまま街での生活でも着用し、さらに2晩テント泊したときには、これをはいたままシュラフに入ったが、ぜんぜん問題なかった。こんなことができるレインウェアがあるなんて……。》と書かれています。

レインスパッツと併用する前提で選ぶ

レンパンツの裾を泥や砂で汚さないように、「レインスパッツ」を外側に着用する光景をよく見かけます。しかし雨水が靴の中に侵入するのを防ぎたいなら、内側に着用したほうが効果的です。さもないと、スパッツとレインパンツの隙間から雨水がどんどん伝い落ちてしまい、スパッツを付けた意味があまりなくなります。

登山靴の内部は晴天時でも蒸れやすく、その湿気は登山靴の足首周辺から徐々に排出されます。足首まわりの通気に留意しましょう。スパッツの上部を緩めたほうが湿気が抜けやすくなります。もちろんスパッツ自体の透湿性が高いに越したことはありません。

テーパードが強い(足首に向かって細くなった)レインパンツは足元が見やすい代わりに、裾から空気が循環しにくくなります。雨の侵入を防ぐために細いほうが良いのか、換気しやすいように太めが良いのか、選択が難しいところです。

登山用レインウェアを防水透湿メンブレンで選ぶ

登山用レインウェアを耐水圧と透湿性で選ぶ

「外部からの水の侵入を許さない防水性」≒「耐水圧」については、登山用品店に並んでいるレインウェアならば五十歩百歩……と言ったら言い過ぎかもしれませんが、よほど長時間、強い雨に打たれ続けるのでなければ差を感じにくい部分です。

本格的な登山では耐水圧20,000mm以上、透湿性能20,000g/m²・24hrs以上の製品をおすすめします。

別記事で掘り下げました。

登山用レインウェアにおける防水透湿素材の独自研究
登山用レインウェアに必要な耐水圧と透湿性「外部からの水の侵入を許さない防水性」≒「耐水圧」については、登山用品店に並んでいるレインウェアならば五十歩百歩……と言ったら言い過ぎかもしれませんが、よほど長時間、強い雨に打たれ続けるのでなければ差...

登山用レインウェアの撥水性が運命を左右する?

登山用レインウェアの撥水性は、防水透湿性能を最大限に発揮するために欠かせない要素です。防水透湿メンブレンが健全であっても、表地の撥水性が低下すると、生地表面が水で覆われ、透湿性が低下し、内部の湿気がこもりやすくなります。これにより、蒸れやすくなり、快適性が損なわれるだけでなく、体温調節が難しくなる可能性があります。

撥水性の低下を防ぐためには、定期的なメンテナンスが重要です。使用後は、専用の洗剤で洗濯し、汚れを落とした後、乾燥機やアイロンで熱を加えることで、撥水性能を回復させることができます。シャワーをかけたら、ポロポロと水玉が転げ落ちていく状態を維持しましょう。

別記事にて掘り下げました。

登山用レインウェアの撥水性が運命を左右する
レインウェア表面の撥水性が失われて、表地が保水したり、水の膜ができたりすると、どんなに透湿性・通気性が高いメンブレンを採用していても、たちまち蒸れて内側から濡れてしまいます。撥水性は、防水透湿メンブレンではなく、表地の性能に依存します。各社...

登山用レインウェアを3層か2~2.5層かで選ぶ

3層の特徴

メンブレン(防水透湿素材)は単体だと破損しやすい。また、汚れや皮脂が固着すると、保水したり、透湿性を阻害したりする。そのため、標準的なレインウェアでは表地と裏地でサンドイッチされています。

2層あるいは2.5層(裏地なし)の特徴

ゴアテックス パックライトなど2層あるいは2.5層の素材は、「裏地がない」もしくは「特殊なコーティングで代用する」ことによって、生地全体を薄くしています。

  • 薄いぶん透湿性能が向上する。
  • 製品が軽量コンパクトに仕上がる。

と、いいことづくめのようですが、

  • 夏場Tシャツの上に直接羽織るような状況では肌に貼り付いて不快である。
  • 裏地が滑らかだと結露しやすい。
  • 生地が薄いと、外側との温度差が大きく、結露しやすい。

という懸念があります。

裏地がトリコットやニットになっているほうが、生地が厚いぶん外側との温度差が小さく、結露しにくい。加えて、裏地が湿気をいったん吸着して徐々に透湿する、いわば緩衝地帯として機能するため、快適さが増します。

一方、裏地までびしょ濡れになる過酷な状況では、2~2.5層のほうが保水しにくく、速やかに乾くとも言えます。どちらが良いか一概には言えません。

2層あるいは2.5層(表地なし)の特徴

ゴアテックス シェイクドライは、パックライトとは逆に表地をなくした2層です。剥き出しのメンブレンは撥水性が高く、保水しないため、透湿性を阻害する要因が最小限となります。ただし耐摩耗性や耐候性が課題で、重いザックを背負って長時間歩く登山には向きません。現状、軽荷のハイキングやトレイルランニングを想定しています。

シェイクドライと同じ発想で、コロンビアが「アウトドライ エクストリーム」を使用した製品を出しています。透湿性能は未知数(限定的?)です。

両タイプを所有し、山行によって選択する

3層と2~2.5層の両タイプを所有し、

  • 雨が降りそうにない≒たぶん使わないから、軽量コンパクトさを優先して2~2.5層を携行する。
  • 気温が低めで、ウインドブレイカー代わりに多用しそうなら、肌触りが良い3層を携行する。

という選び方が考えられます。

登山用品
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