登山ピッケル~銘品ラプラード・デメゾンで命拾いした話

 

古い登山愛好家にとっては英雄だったルネ・デメゾンの名前を冠した銘品ラプラード・デメゾン(LAPRADE R.DESMAISON )のピッケル。

インターネットを検索しても日本語ではごくわずかな情報しか出てきません。

社会人になって初めて買ったピッケルがこいつです。なんとシャフト全体がゴムで覆われた変わり種です。シャフトの長さは65cm。重量は800gほどあります。アイゼンの底にダンゴになった雪をカンカン叩いて落とすものだから、ゴムはあちこちササくれています。この鉄の塊は「そんな時代もあったね」と昔を振り返る、ゴツくて場所ふさぎな記念品にすぎませんでした。

2017年12月に雪山に復帰したとき、押入れの奥からゴソゴソと引っ張り出しました。よもや再び、氷雪に突き刺すために手に取ろうとは思いませんでした。無機質な素材ですから、経年劣化は特に感じられません。全身にうっすらと積もった埃を拭き取りながら、楽しかったことやら辛かったことやら脳裏によみがえりました。

写真

全体


カバーやリーシュをつけた状態です。


リーシュは固く結ばれているので簡単には外せなくなっていました。

ヘッド部

ピック


「LAPRADE R.DESMAISON」と刻印されています。

シャフト


全体を覆うゴムに「R.DESMAISON LAPRADE」と刻印されています。


ヘッド近くに「LAPRADE R.DESMAISON」と書いたシールが貼られています。

ブレード(アッズ)

表面の黒い塗装が剥がれかかっています。

スピッツェ(石突き)

2018年1月に八ヶ岳の阿弥陀岳北稜を登ったとき、スピッツェ近くのゴムが裂けました。

『ターミネーター』の外装が剥がれた感じで、これはこれでカッコいい。

リーシュ


たしかICI石井スポーツで買ったリーシュです。ピッケルの重量を計るために外そうとしたのですが、固く結ばれており、素手では解くことができませんでした。

ピックとブレード、スピッツェのカバー

「T.KAJITA」と刻印されています。最近では見かけない分厚いプラスチック製です。

別にピッケルとセットの品ではありませんが、銘品ラプラード・デメゾンにぴったり適合します。ン十年の組み合わせで、もはや一心同体。もし紛失したら悲しむと思います。

命拾い

こいつを見ると真っ先に思い出すのは、厳冬期の北アルプス、赤岩岳の雪壁トラバースです。右手にはこいつ、左手には即席のアイスアックスを握っていました。

足元が崩れて、左手の切っ先も外れて、壁に打ち込んだピッケル1本でぶら下がりました。まあ、墜ちたとしても吹き溜まりの急斜面で止まったでしょうが、そこから這い出してルートに戻るには絶大な労力を費やしただろうと思います。

即席のアイスアックス


ピッケルとは別物ですが、上の写真が「即席のアイスアックス」です。

通称「イボイボ」。昔はいろいろなメーカーが作っていたようですが、現在はコングの製品くらいしかお目にかかりません。

カラビナは新しいモノに交換してあります。元々使っていた現物は、どこかの終了点に残置しました。細引きで作ったリーシュはオリジナルのままです。

ICI石井スポーツの値札付き。すっかり色褪せて、値段を読めません。


カラビナといっしょに握りしめて、短剣のように雪壁に突き刺しました。

このやり方は長谷川恒男さんの本で読んだとばかり思っていましたが、「岩壁よおはよう」や「北壁に舞う」を読み返しても、その箇所を見つけることができませんでした。

そろそろ引退か

縦走用のピッケルは、ピックの角度やシャフトの湾曲などにこだわる要素が少なく、買い替える積極的な理由が見つからないまま、使い続けることになります。

当分は盟友ラプラード・デメゾンに現役でいてもらうつもりでしたが、雪山登山を繰り返すうちに、軽量化への欲求が高まりました。

2017年12月にクライミングテクノロジーの「アルパインツアー」を購入しました。

2018年3月にペツルの「ガリー」を購入しました。

そして、まだ記事にしていませんが、軽量な縦走用ピッケルが手元にあります。

盟友ラプラード・デメゾンが引退する日が近づいています。

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