登攀するボヘミアンに捧げるレインウェア

登山歴、クライミング歴、ン10年。

色々な人達と出会いました。登攀するボヘミアン、刺青を掘った若者、前衛的な女性画家……。彼・彼女らにこんなレインウェアを捧げます。

登攀するボヘミアン

営業職を辞してインドを放浪した。タイも好きだ。いまのカミさんは女性的すぎないざっくばらんさに居心地の良さを感じた。阿蘇の草千里タンデム走行した日のことが忘れられない。長髪をうしろでまとめて、牛乳瓶の底のような丸眼鏡をかけて、短いアゴ髭を生やしている。いまは失業保険で食いつないでおり、働いているカミさんに頭が上がらない……。

彼の古いワンボックスに乗せてもらい、あちこちの岩場に出かけました。車中、IT業界への転職をすすめました。「配送がモノの物流なら、ネットワークは情報の物流だ。絶対になくならないし、ツブシがきくよ」

疎遠になり、数年ぶりにバッタリ遭遇した彼は、御岳のロッキーボルダーで「in Tokyo!」に打ち込んでいました。羽振りが良くなったのか、パリッとしたジャケットを羽織っています。

一見、革ジャンのような風合い。防水透湿メンブレンが露出しており、優れた撥水性が持続します。透湿性能は限定的ながら、天下の「ゴアテックス シェイクドライ」と同じ原理です。タウンユースや軽いアウトドア活動なら、バサバサと水滴を払い落としやすい快適さがモノを言います。

大学ワンダーフォーゲル部の新入生

新入生はたくさん装備を買いそろえなくてはなりません。金欠気味です。初めての長期縦走ではゴム引きのレインウェア……と言うよりはカッパで蒸れ蒸れになりながら歩きました。

後輩にアドバイスするなら「定番で価格がリーズナブルなモンベルのストームクルーザーを買っとけ」と言いたいところですが、もっと安価な選択肢があります。

オーソドックスなゴアテックス素材。上下セットで定価は2万円台後半。実売価格は2万円台前半という、なんだか1980年代に戻ったような時代錯誤な価格です。ストームクルーザーのジャケットを買うくらいの価格で買えて、しかも「全身モンベル」のそしりを免れることができます。

表生地は50デニールで耐久性高し雪山入門のハードシェルとして通用します。

女子短大ワンダーフォーゲル部の才媛

行きつけの登山用品店で、交流のある女子短大ワンダーフォーゲル部の才媛とばったり。

先日、〇〇駅に合宿の見送りに行ったとき、彼女らのザックを片手でひょいひょい網棚に乗せたらビックリされました。なんか頼もしいと思われたみたい。

「レインウェアを買おうと思うんですけど……」と相談をもちかけられたら、モンベルとかプロモンテとか実直すぎるブランドはすすめにくい。ハイブランド、かつ価格のリーズナブルさを忘れない堅実さで、さらにポイントを稼ぎたいところです。

軽快なパーテックスシールド素材。男子目線だと、色はwhiteやoceanあたりがお洒落だと感じます。

登山を再開したワンダーフォーゲル部OB

大学時代にゼミの教授であり、ワンダーフォーゲル部の顧問でもあった教授が亡くなりました。

弔問の帰り、長らく没交渉になっていた先輩OBと「最後にいっしょに山登ったのはいつでしたっけ」なんて話に。先輩が「久しぶりに山に登りたいな」とボソリ。

おぉ、行こうじゃありませんか。えっ、レインウェアを断捨離した? お金はあるでしょ。

防水透湿素材はオーソドックスなゴアテックスだけれど、胸ポケットの利便性が高く、両脇ポケットは高い位置にあってウエストベルトと干渉しません。

煙草はいまも「ホープ」ですか。胸ポケットに入れましょう。「雨の中で吸う煙草は美味く、風の中で吸う煙草は不味い」ってのが持論でしたね。

若き刺青のボルダラー

もともと登山をやっておらず、ボルダリングやクライミングを始めたのがキッカケで山深いエリアに出かけるようになった若い男子。脇腹に「」の刺青あり。「海老?」と呼ぶと怒られます。

カサメリ沢にいっしょにリードクライミングに出かけたとき、急な土砂降りに見舞われました。私はばっちりゴアテックスの雨具と、おまけに折り畳み傘までさして下山。彼は着の身着のままでズブ濡れに。あとで「傘くらい貸してくれればいいのに」と恨まれました。

ちょっと変わったモノを持ちたがる彼にはコレかな。

アノラックと言うのか、プルオーバーと言うのか、昔風にヤッケと言うのか、いずれにしてもクラシカルな雰囲気に惹かれます。

とにかく汗っかきな先輩

その先輩は、人の部屋に遊びに来ると、すぐに丸めた靴下をそのへんに転がします。とくに手汗がひどくて、何も持っていない手のひらを握りしめて、しばらくすると水が出現するという手品を得意としていました。

いっしょにボルダリングジムに通ったこともあるのですが、「俺には向かないな」とあきらめ気味でした。山で雨に降られてもレインウェアを着たがりません。

これくらい薄手で透湿性が高ければ(50,000g/㎡・24h)、気軽に羽織れるでしょう。裏地にはシャリ感があって貼り付きにくく、しっかり両脇ポケットを備えた堅実なデザインです。

前衛的な女性画家

独身。数年に一度、個展の開催を告げる葉書が届きます。このあいだはコンセプトの標題が「方舟の重石」だったので一瞬、宗教の勧誘かと思いました。

雪山登山からボルダリングまで心のおもむくままに楽しんでいます。持ち物にワンポイント、クレイジーカラーを入れないと気がすみません。チョークバッグのブランドは当然「オーガニック」です。

SNS発信に積極的ではありませんが、誰かが撮った写真にクレイジーカラーが映り込むことで、一部のコアなファンに消息が知れ渡ります。

クレイジーカラーの良いところは、ときどき恐ろしくお手頃な価格でセール品が出回るところ。そして二度と同じモデルは発売されないので、他人とかぶらないところです。

まとめ

レインウェアの理論編についてはこちらの記事をご参照ください。

レインウェアについて語るときに僕の語ること【理論編】
レインウェアは常時着用せず、行動中はザックのなかに収納する。山に出かけて帰宅するまで、一回も使わないことさえあります。そのため軽量コンパクトさが優先される傾向にあります。内側にたくさん着込むことを想定しないため、シルエットは比較的細身です。

レインウェア談義についてはこちらの記事をご参照ください。

レインウェアについて語るときに我々の語ること【対話編】
とある大学ワンダーフォーゲル部の先輩OBと新人が登山用品店を訪れて、レインウェアを選んでいます。新人はGWの新入生強化合宿でゴム引きのカッパを持ってきて、雨のなか蒸れ蒸れになりながら数時間歩きました。

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