昔、槍・穂高にはこんなキャンプ指定地があった

古~い槍・穂高の地図を発掘した

書棚をゴソゴソひっかき回していたら、1976年発行の「エアリアマップ」が出てきました。

「エアリアマップ」とは昭文社の「山と高原地図」の愛称(?)です。昔は「山と高原地図」という名称よりも前面に打ち出されていました。古い登山愛好家にとっては「エアリアマップ」と呼ぶほうが馴染みがあります。

自分の登山歴のリアルタイムで買った地図ではありません。早稲田の古書店でたまたま見つけました。付箋紙に30円で買ったとメモしてあります(定価450円)。


前の持ち主が地図の要所要所に通過時刻を記入しています。小冊子の表紙には槍ヶ岳山荘のスタンプが押されています。

ユポ紙は普通の紙よりも経年劣化が早いらしい


山と高原地図と言えば、丈夫なユポ紙に印刷されているため、多少雨に濡れたり風に吹かれたりしても破れないのがウリです。ところが、1976年版をン十年ぶりに開いてみると、折り目のあたりがポロポロと崩れます。一方、普通紙の小冊子は古書でいうところの「良」状態です。この現象は、登山靴のポリウレタン素材は劣化が早く、皮革製のほうが長持ちしやすいのと似ています。

地図を開くと、ユポ紙の細片がポロポロと落ちます。

私は山行記録のノートとしてユポ紙の「ライフ アウトドアノート B6」を愛用しているのですが、スキャナで電子化するなど早めに対策する必要があるかもしれません。

唯一無二の耐水防水ノート「ライフ アウトドアノート B6」を登山で使う
山行ノートの理想形のひとつ 「ライフ アウトドアノート B6」は、山行ノートの理想形のひとつです。 私が山行ノートに求める条件  耐水紙(ユポ紙) 風雨雪のなかで筆記することがあるので、水濡れに強く、丈夫であって...

新旧4冊の山と高原地図「槍穂高」


私が現在所持している山と高原地図「槍ヶ岳・穂高岳」は上記の1976年版、1987年版、2004年版、2017年版の4冊です。

消えたテントマーク

テント泊縦走派にとって気になるキャンプ指定地の変遷が興味深いです。

天狗原


1976年版では天狗原にテントマークがあります。小冊子にはこう記載されています。

池の周辺はすばらしいキャンプ場にもなっているので、テントの撤収の際はゴミを散乱させないように気をつけて、いつも自然の姿を守ってもらいたいものである。

1987年版の地図ではテントマークが消えたものの、小冊子には同じ記載が残っています。南岳からの下降点の道標が「最近新しく建て替えられた」と改訂されているので、改訂漏れというわけではなさそうです。大っぴらにキャンプ指定地として表記できないものの、あまりうるさく言われていないグレーな時期だったのではないかと想像します。

奥又白池、ヒョウタン池


1976年版と1987年版では奥又白池とヒョウタン池にテントマークがあります。2004年版では消えました。一般の登山者は行かない場所なので、現在でもひっそりと利用されているようです。


1986年の夏に奥又白池をわざわざ見に行きました。テント泊されている方がいました。池のほとりに立っているダケカンバの木は「宝の木」と呼ばれています。どこで読んだか忘れましたが、長年雪崩に折られずに残っているので、昔の岳人は冬季に前穂の東壁を目指す際、この木のそばにテントを設営したそうです(昨今は前穂北尾根の5・6のコルに泊まるのが一般的らしい)。

一ノ俣小屋


1976年版では「無人小屋」が残っていたらしくテントマークがあります。1987年版では「一ノ俣小屋跡」となり、テントマークが消えました。

硫黄乗越


1976年版では双六小屋から近い硫黄乗越にテントマークがあります。こんな場所に? 「(水)旱天時なし」の注意書きが見えます。源頭の水場でしょうか。1987年版ではテントマークが消えました。

岳沢ヒュッテ下部2キロ周辺


1976年版では岳沢ヒュッテ下部にテントマークがあります。水場は豊富そうです。1987年版ではテントマークが消えました。

地図の裏面はよりビジュアル化された

裏面の情報の変遷も興味深いです。折り目で囲まれた1区画を単位として、どの情報にどれだけ区画を使用しているか調べてみました。

1976年版と1987年版

地図の表面、裏面ともほぼ同じビジュアルです。地図の表面の色合いはが基調となっています。

裏面は以下のように構成されています。

  • 登山装備表(1区画)
  • 上高地周辺略図(2区画)
  • 槍ヶ岳からの展望図 ※180度の丸い図(1.5区画)
  • 北アルプス周辺図(4.5区画)
  • 涸沢・岳沢略図(2区画)
  • 山小屋・旅館一覧(4.5区画)
  • キャンプ場(1.5区画)
  • 名所・旧跡(2.5区画)

2004年版

表面の地図が刷新されました。文字が読みやすくなりました。色合いは茶色っぽくなりました。

裏面は以下のように構成されています。

  • 登山装備表(1区画)
  • 周辺図(9区画)
  • 槍・穂高詳細図(9区画)
  • 宿泊施設(1区画)
  • キャンプ場(0.7区画)
  • 交通機関(0.5区画)
  • 問い合わせ(0.3区画)

上高地周辺略図、涸沢・岳沢略図、旅館や名所・旧跡の情報がなくなりました。周辺図と槍・穂高詳細図が広くなり、オーソドックスな地図の原点に立ち返った印象です。

2017年版

表面の地図は2004年版とほぼ同じです。

裏面は以下のように構成されています。

  • 周辺図(4区画)
  • 槍・穂高詳細図+槍ヶ岳山荘~槍ヶ岳詳細図(9区画)
  • 槍ヶ岳山頂からの展望(4区画)
  • バス・鉄道アクセス案内(2区画)
  • マイカー案内(2区画)
  • 宿泊施設(1区画)
  • キャンプ場(1区画)
  • 交通機関(0.7区画)
  • 問い合わせ(0.3区画)

登山装備表がなくなりました。周辺図が小さくなり、代わりに、バス・鉄道アクセス案内、槍ヶ岳山荘~槍ヶ岳詳細図(登りルートと下りルートを図示)、槍ヶ岳山頂からの展望(パノラマ写真のような絵)など、よりビジュアル化された情報が増えました。文章や地図を読み解かなくても、より直観的に把握できる方向に進化しています。登山者層の広がりを反映しているのでしょうか。

 

四方山話
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