ワンダーフォーゲル部にランタンがやってきた

ランタン。テント泊における夜の友。

きわめて原始的な「火」から、近代的な「ガス」、最新の「LEDライト」まで、ひととおり使ってきました。

登山ランタン「火の時代」

ワンダーフォーゲル部時代のキャンプファイヤー、ふんどしパフォーマンス

カメヤマローソク

学生時代のワンダーフォーゲル部では、ランタンを使った記憶がありません。そんな贅沢品?はそもそも装備の候補にあがりません。存在を知らなかったと言っても過言ではない。なにせ火器(この言い方もかなり特殊ですが)として、「ラジウス」とか「マナスル」とか呼ばれる灯油ストーブを使っていました。当時すでに時代錯誤の趣がありました。

テント泊の明かりは、ゴーゴーと燃える灯油ストーブの炎と、その青い収納缶におっ立てた蝋燭の炎です。登山用品店で売られているような太いやつではなく、なぜか神仏用のカメヤマローソクでした。

灯油ストーブの青い収納缶はゆったりサイズの灰皿としても機能しました。酔いどれた先輩がおぼつかない手元でタバコの穂先をトントンと打ち付けた拍子にロウソクが倒れると、すかさず後輩が蝋を垂らして立て直しました。

イワタニプリムス「2245ランタン」

先進派の先輩が現役引退後、個人山行でイワタニプリムスの2245ランタンを持ってきたときには一同どよめきました。谷崎潤一郎的な陰翳礼讃の世界に西洋文明がもたらされた瞬間です。

私は当初、冷めた目で眺めていましたが、やがてその優秀さを認めざるを得ませんでした。単独行だと荷重になるので悩むところですが、パーティー登山ならこれをひとつ荷物に加えれば一気にテント泊が快適になります。

  1. 単に明かりとしてだけでなく、暖房効果がある。
  2. 炊事用で火力の弱まったガスカートリッジを使い回すことができる。

特に後者の「ガスカートリッジを使い回す」あたり、システマチックな運用ができるのが素晴らしい。炊事用には火力が弱すぎても、ランタンなら使い切ることができます。ヘッドランプ用としては弱くなってしまった単三電池をラジオ用に使い回すのと同じテクニックです。

ちなみに、くだんの酔いどれ先輩が何を思ったのか、上機嫌の酔眼でランタンの天辺にタバコの灰をトントンしたときには、先進派の先輩は固まって身動きができなくなったそうです。酔いどれ先輩は上級生で、高校時代にボート部で鍛え上げたスタン・ハンセンのような剛腕をひっさげて、現役時代には厳しいトレーナーとして君臨した御仁です。円陣を組んだときなど、その腕が肩に乗ると、どっしりとした重量感がありました。うっかりした口はきけず、息を詰めて、苦難が過ぎ去るのを待つしかありませんでした。

赤くて太い非常用ローソク

先輩のガスランタンを横目で見ながら、私個人はローソクを使い続けて、やがて「赤くて太い非常用ローソク」に乗り換えました。

太いローソクの良いところは、倒れにくいことはもちろんですが、外に滴り落ちて固まった蝋を指でこそぎとって、炎のまわりの蝋のプールに放り込んで再利用しやすい点です。悪いところは、買った直後は持て余し気味で、たった一泊でも丸ごと持っていかなくてはならない点です。そして、1本しかない芯の保全に気を遣う必要があります。芯が短くなって蝋のプールに溺れてしまうと使えなくなります。

ところで、あのローソクは何故赤かったのでしょうか。ろうそく本体が赤くても、炎が赤くなるわけではありません。一昔前は登山用品店の定番のひとつでしたが、とんと見かけなくなりました。

UCOランタンキャンドル

単独で雪山をよく登っていた頃、UCO(ユーコ) のミニランタン用のスペアキャンドルを裸で使いました。

本来はこの中にセットして、床に置くか、天井に吊るします。

裸とは言っても、テントの床に直に置くわけにはいかないので、アルミ製の浅い空き缶のなかに置きました。風で少々テントが揺れても、蝋が床にこぼれずにすみます。最軽量のランタンキャンドルシステムでした。

一泊につき一個。分量を計算しやすいのが好都合です。前出の「赤くて太い非常用ローソク」とちがって、ほぼ使い切りなので芯の保全に気を遣う必要がありません。ローソクの傾きによって、フチが決壊するトラブルも生じにくい。エマージェンシーキットのなかに1個忍ばせたりしました。

うっかり寝落ちしたあいだもチロチロと燃え続けて、ふと目を覚ました時にテント内を照らし続けているのを見るとほっとしました。子供が真っ暗な室内で眠れないのと同じ心理だったかもしれません。孤独な夜の精神安定剤として作用していたように思います。

登山ランタン「ガスの時代」

EPI「マイクロスーパランタンオート」

1989年に発売されたEPIのマイクロスーパランタンオートを購入し、しばし文化生活を楽しみました。

現行製品ではこれが近いです。現物は断捨離してしまいました。

イワタニプリムス「ジュニア ランタン」

北海道の岩場をクライミングツアーしたとき、入手しやすいカセットガスに合わせて購入しました(ジュニアコンパクトバーナーも同時購入)。登山用としては重い(280g)気がしますが、2245ランタン(200g)の1.4倍程度です。長年、定番となっていましたが、2019年現在、どうやら廃番となったようです。

今後はSOTOのランタンが定番となりそうです。

スノーピーク「天」

これを購入して、EPIのランタンを断捨離しました。自分は「地」を絶賛しましたが、「天」については改善の余地が大いにあると思います。

ランタンシェードは摺りガラスのほうが良い

読書のかたわらに灯したりすると、どうしても強い点状の光が目に飛び込んで気になります。やはり摺りガラスで拡散させてほしいです。

マントルの品質は今一つか

ガスランタンはマントルが命です。最近はどうかわかりませんが、以前販売されていた純正のマントルは今ひとつキレイな球形に整えにくかったです。

代わりにイワタニプリムスの2245ランタン用のマントルを流用していました。

登山ランタン「LEDの時代」

ヘッドランプオンリーへの回帰

本格的な登山に復帰して、昔と大いに変わったことの一つが、ランタン問題です。パーティー登山や、無雪期登山なら、気軽にガスランタンを持ち込みますが、単独で雪山となると、やはり装備から外してしまいます。

では、また「裸のランタンキャンドル」方式を採用しましょうか。いやいや、現代にはもっといいものがあります。

その名は「LEDライト」。

昔は、ライトと言えば球切れを起こしやすい豆電球が使われており、光量は今一つ、電池持ちも今一つ、球切れしやすい、と三拍子そろっていたので、点けっぱなしにすることを極力避けました。

LEDライトは明るく、電池の消費が少ない。暖房目的には使えませんが、ガスランタンのように取り扱いが繊細でないところが良い。

とは言っても、LEDライトを使ったランタンは今のところ導入していません。LEDヘッドランプを流用しています。

LEDヘッドランプをランタン化する

ヘッドランプの機種によってはヘッドランプをランタン化するオプションが提供されています。

モンベルのクラッシャブル ランタンシェード

LEDヘッドランプをランタンとして使う、となると、モンベルのクラッシャブル ランタンシェードが視野に入ってきます。私も当然のごとく購入しました。

詳細はこちらの記事をご覧ください。

超軽量、モンベル「クラッシャブル ランタンシェード」レビュー
テント泊登山の夜。一日の疲れを癒し、明日への英気を養い、仲間と語らう空間を照らす光。 ランタン。 あれば便利だけれど、荷物を軽量化するために省きがちな装備。 ランタン。 超軽量なランタンシェード、ここにあります。 ▼モンベルの「クラッシャブ...

ランタンシェードの代用品

単に光を拡散するだけならこんな方法があります。

白いレジ袋をかぶせる。

テントの天井ループなどに吊るしてもいいですね。

ペーパータオルをくしゃくしゃにしてかぶせる。

テーブルランタン?専用です。

テントのベンチレータ

私が愛用するゴアライトテントには天井ループの類が一切ないため、ランタンを吊るすことができません。そこで思いついたのが、ベンチレータを内側に垂らして、そこにヘッドランプを置く方法です。モスキートネット(メッシュ)がランタンシェードのようにある程度光を拡散してくれます。この方法を発見したときには世紀の発見くらいに自慢したくなりました。

登山ランタン「小型軽量ランタン最新事情」

就寝中にヘッドランプを頭に巻いたままでも気にならない(ヘッドランプが行方不明になることがない)ので、今のところヘッドランプオンリーですが、気になるモデルがいくつかあります。

ブラックダイヤモンド / ジップ

主要なスペック

重量 100g(電池込)
使用電池 単4アルカリ電池×4個

レビュー

ブラックダイヤモンドのランタンと言えば、ひと頃は「オービット」が定番でした。今後はこの「ジップ」が定番となることでしょう。

パナソニック / LEDランタン

主要なスペック

重量 約135g(電池含)
使用電池 単3形電池 3本

レビュー

信頼のパナソニック製で格安。エボルタ電池(単3電池×3個)が付属し、お得感が強いです。

BLACK WOLF / マルチLEDランタン

主要なスペック

重量 70g(電池含まず)
使用電池 単4電池×3個(約33g)

レビュー

とにかく実売価格が安い。登山用ヘッドランプでよく採用される「単4電池×3個」仕様と相性が良い。ヘッドランプには常に新品の電池を入れて、このランタンには使いかけの電池を入れて使い切るという運用が可能です。

ランドポート / ソーラーパフ

主要なスペック

重量 75g
使用電池 太陽電池

レビュー

昼間の行動中にザックの外側に取り付けて充電し、夜間にランタンとして利用できます。軽量、折り畳み可能、防水(水に浮かぶ)、ランニングコスト不要という完成度が高い製品です。

ルミンエイド / パックライト マックス USB

主要なスペック

重量 120g
使用電池 太陽電池(2000mAhバッテリー内蔵)

レビュー

前出の「ソーラーパフ」のそっくりさん。USB経由で2時間、ソーラーパネルで12~14時間でフル充電できます。モバイル機器に給電(5V、2A)できます。内蔵バッテリーの容量は2000mAh。いざというとき電池切れしたスマホを起動して地図アプリを見たり電話をかけることができます。

Superway / LEDランタン

主要なスペック

重量 186g
使用電池 USB充電式の5,200mAhモバイルバッテリー内蔵

レビュー

LEDランタンとモバイルバッテリーを兼ねることができます。

参考リンク

テントの天井ループにランタンやヘッドランプを吊り下げると、炊事の熱が集中してプラスチックが溶けるおそれがあります。また、炊事中の鍋にポットンする心配も拭えないのでご注意ください。

伏兵、ライト付き自撮り棒

ライト付きの自撮り棒なら、テーブルランタンとして代用できます。高く伸ばせば、器に盛られた肉や野菜の彩りを目で楽しみながら食事できます。

目からウロコの自撮り棒P08-Selfie、軽量コンパクト登山におすすめ
軽量コンパクトな自撮り棒を購入しました。標準サイズの自撮り棒をすでに所有していますが、荷物が多い雪山テント泊などでは軽量化のために装備から外すことが多いです。「もう少し軽ければ……」と思っていたところ、良さげな製品を見つけました。
登山用品

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