登山でサーモコンパスは役に立つのか

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雪山復帰の緒戦から戻り、荷物をひろげているとき、ジップオーゲージのコンパス部分が脱落していることに気づきました。別に激しい登攀で岩角にぶつかけたわけでもなく、普通の雪稜歩きだったのに。

定位置その1 ザックの雨蓋のファスナー

女子高生のカバンにぬいぐるみがぶら下がるように、ジップオーゲージはいつも雨蓋のファスナースライダーにぶら下がっていました。ザックを買い替えるたびに、はたまたザックを使い分けるたびに、こっちの雨蓋からあっちの雨蓋へと居場所を変えて、長年寄り添ってきました。30年以上前に買った品物ですが、アナログな油圧式のコンパスとアルコール式の温度計なので見た目には何の故障もありません。躯体との接着部分が経年劣化していたところに、急激な温度変化が加わり、嵌め込まれていたコンパス部分が脱落したのではないかと想像します。

定位置その2 ジャケットのファスナー

カシオの「プロトレック トリプルセンサーVer.1」(方位、気圧/高度、温度計対応)を買うまでは、ジップオーゲージはジャケットのファスナーが定位置でした。

そのきっかけとなったのは「ミニヤコンカ奇跡の生還」で知られる松田宏也さんの写真(「足よ手よ、僕はまた登る」の口絵写真)です。義肢で上高地を散策する松田さんはお仲間から借りた青いパーカとパンツ(モンベルのドロワットシリーズかドリューシリーズでしょうか)を着ています。わずか数年で人間がここまで恢復できるものなのかと驚くと同時に、両胸にナポレオンポケットを備え、要所を黒地に切り替えたパーカのモダンさに目を惹かれました。そして、フロントファスナーのスライダーにぶら下がっているジップオーゲージに目が留まりました。

なるほどジャケットのファスナーに付けておけば、わざわざポケットから出さなくても、こまめに方位を確認できます。風雪のなかではこの手軽さがありがたい。温度計も気候の変動を客観的に知るのに役立ちます。と言うか「こんな極寒の状況で俺は頑張ってるぜ」と自己満足にひたるのに役立ちます。

元祖ジップオーゲージには温度計しか付いていない

昔から漠然と「ジップオーゲージ」と呼び慣れてきたこのアイテム、いろんな会社から似た製品が発売されています。どこが元祖なのでしょうか。インターネットで「ジップオーゲージ」を検索すると、SUN社の「Zip-o-gage」がヒットします。パッケージにそのものズバリの名称が印刷されていますから、SUN社が元祖なのでしょう。

今回調べてみて、「ジップオーゲージ」(Zip-o-gage)には温度計しか付いていないと初めて知りました。温度計とコンパス付きは「サーモコンパス」(Therm-o-compass)、温度計とコンパスとルーペ付きは「トリプルゲージ」(TripleGage)となっています。いろいろなバリエーションがあるようです。

モンベルショップで、SUN社のOEMらしい「ルーマゲージ」を購入しました。蓄光タイプです。

コンパス(方位計)の精度を比較してみた

 

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エントリーしたのは、カシオの「プロトレック」、モンベルの「ルーマゲージ」、定番シルバ(SILVA)のコンパスです。

磁針が指す方向を並べて比較しました。「ルーマゲージ」には癖があると感じました。

  • 磁針が若干、西寄りを指す傾向がある
  • 躯体の傾きに影響を受けやすい。
  • 手にとってパッと見たとき、磁針が小さいので安定しにくい。嵐の海で小さな船は大きな船より波風に翻弄されやすいのと同じ理屈です。
  • 言うまでもなく小さいぶん見にくい。

あくまでも大まかに方位を確認する用途に限定されます。

温度計の精度を比較してみた

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エントリーしたのは、古いモンベルの「ルーマゲージ」、「サーモコンパス」、カシオの「プロトレック」(2007年頃購入PRW-1300)、温度計付きのデジタル式置時計です。

室温

新しい「ルーマゲージ」:18℃
古い「サーモコンパス」:19℃
プロトレック:19.5℃
置き時計:19.8℃

僅差でした。

冷蔵庫に10分入れたあと

新しい「ルーマゲージ」:10℃
古い「サーモコンパス」:11℃
プロトレック:14.8℃
置き時計:14.6℃

アナログ(アルコール)方式は低めの温度を示しました。「ルーマゲージ」が「サーモコンパス」より少し低い温度を示す傾向があります。

冷凍庫に10分入れたあと

新しい「ルーマゲージ」:-16℃
古い「サーモコンパス」:-14℃
プロトレック:1.1℃
置き時計:-0.7℃

アナログ(アルコール)方式はとんでもなく低い温度を示しました。「ルーマゲージ」が「サーモコンパス」より少し低い傾向は変わりません。

10分という時間が十分かどうかはわかりません。もっと長く放置してみたら、プロトレックは温度を表示しなくなりました。プロトレックは腕に巻いたままだと体温の影響を受けますし、極寒の環境に放置すると計測できなくなるため、雪山登山用の温度計としてはアテにできないといえます。(取扱説明書では計測精度=±2℃以内、精度保証温度範囲=-10℃~60℃となっています)

置き時計は-10.4℃まで示しました。

氷水に10分入れたあと

新しい「ルーマゲージ」:1℃
古い「サーモコンパス」:3℃

これはアナログ(アルコール)方式の2つだけ試しました。プロトレックは10気圧防水ですが当然のごとく棄権させました。

氷水の温度は零度なので、温度計の絶対的な精度を試すには好適です。氷の上に水を張り、そこに漬け込みました。氷の溶け方が不十分だったためか、0℃にはなりませんでしたが、まあまあいい線いっています。

結論

これまでサーモコンパスを雪山で使ってきた経験では、温度計は-10℃あたり示すことが多かったので、精度はなかなかのものだと思っていたのですが、今回の実験では首をかしげる結果となりました。もしかすると「急激に冷やすと、精度が落ちる」のかもしれません。コンパス機能は補助的に使うぶんには有効だと言えそうです。

今回は室内での実験でしたが、実際の登山でまた検証してみたいと思います。

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